ポカスカジャンの省吾くんが参加している
「劇団HOBO」の旗揚げ公演の初日に行ってきました。
この劇団のメンバーは、
おかやまはじめさん(←演出も)、
林和義さん、本間剛さん、古川悦史さん、
省吾くん、有川マコトさん、そして高橋由美子さん。
派手ではありませんが、
それぞれに活躍する場を持つ、
きちんと仕事をしている達者な役者たちです。
飲みの席で旗揚げを決めたということなんですが、
「劇団を名乗るのはおこがましいので、
ほぼ劇団、というかたちをとろう」と
この名前をつけたのだそうです。
公演名は「喧嘩農家」。
チラシには、ダチョウの顔。
コピーには
「主業農家の真坂家に、入り婿がやって来た。
農業新人の入り婿が見た、
低迷する日本の農業の煽りを全面に受ける
真坂家の一年とは。」
む、むずかしい。
これに「行こう!」と決めるのは、
しょうじき、すごくむずかしいと思います。
ぼくも、省吾くんが誘ってくれなかったら行ってなかった。
しかし、これは行ってよかった。
「誘ってくれてありがとう!!」と強く思った舞台でした。
最近のものを例に挙げると、
宮沢りえちゃんが出演した
デヴィッド・ルヴォー演出の「人形の家」。
あれが、ものすごくよかったんだけれど、
それに近い印象を受けました。
同行の演劇中年山下氏の言を借りるなら、
「みんなが、同じ方向を向いている芝居というのは
観ていて、ほんとうに気持ちがいい」。
「人形の家」は、その向いている方向が
ルヴォーさんという天才演出家にあったんだと思うけど、
「喧嘩農家」は、「芝居をきちんとやりたいんだ」という
それぞれいい年をした役者たちが集まったその志と、
みんながほんとうに力量があるからできること、
つまり「こういうふうにしようよ」という演出意図をくみ取った芝居の、
「ピンポイントで狙ったら外さない気持ちよさ」。
キャラクターも練り上げられているし、
それぞれの役者にそれがほんとうにちゃんと入ってて、
ほんとに、とてもこれが旗揚げ公演の初日だなんて思えない。
「たしか、もう、再演に次ぐ再演ですよね」
と言われてもおかしくない。
そういうレベルでした。
妙な緊張感もないし、トチリもなければ言いよどみも抜けもない。
完全に入ってる。
稽古に稽古を重ねなければぜったいにできない
「息の合った芝居」。
褒めすぎでしょうか。褒めすぎじゃないと思う。
しかし、なぜか、伝え方が難しいんです。
そもそも、これ、ジャンル、なんなんだろう。
コメディの要素のある、ドラマ。
そういう感じかなあ。
ぼくとしてはたいへん好みなんですよ、
こういうのって。
この気分、何かに似ている。
何だろう、何だろうと、
観終わったあと新宿の蕎麦屋「吉遊」で
せいろ2枚をすすりながら山下氏と話しました。
短編小説、映画、うーん、なにかもっと‥‥と、
考えての結論は、落語でした。
どんでん返しみたいな落ちではない「サゲ」、
結末を楽しむというよりも、途中の機微を味わう感じ、
演者の達者さが重要で、そこに全面的にゆだねる感じ。
客席と、具体的なやりとりではなくとも、
おたがいが空気を共有して、時間がすすんでいく感じ。
うまい江戸っ子の噺家の、軽妙洒脱な噺、に似てます。
テーマも舞台も泥臭い、農村の話ではあるんですけど、
粋(いき)だと思いました。
この舞台の農家には、
江戸の長屋の話みたいな、
近いような、遠いような、
現代との付かず離れずの距離感がありました。
そして、ほんのちょっぴり入る「妖し」もよかったなぁ。
芝居の世界で、意図どおり(あるいはそれを上回る)
公演ができたことを「初日が出る」と言いますが、
この芝居は、旗揚げ公演初日にして「初日が出た」。
すごいことです。
ですが、初日はこの劇団の旗揚げを祝う
親しいひとびとで埋まった客席も、
あすからは、どうやら、空席があるようです。
興味をもたれたかた、木戸銭4000円でございます。
どうか行かれますよう。
身内ではありませんが、宣伝させていただきました。
☆追記
音楽もすばらしくよかったです。
誰だろうと思ってチラシを見たら
省吾くんが担当してたんですね。
ほんとによかった。
それと、柴田理恵さん、川平慈英さん(たぶん)の
「姿が見えない客演」。
こちらも、やられたなぁ。