こだわるは「拘る」と書く。
拘束の拘、拘泥の拘です。
拘引・拘禁・拘留・拘置・拘囚。
そう、このことばに
前向きで明るい意味なんてないと、
ぼくはそうとらえている。
『精選版 日本国語大辞典』によればこうある。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
こだわ・るこだはる
〘自ラ五(四)〙
①すらすらと行かないで、ひっかかったりつかえたりする。
*滑稽本・東海道中膝栗毛(1802−09)六
「脇指の鍔がよこっぱらへこだわっていてへのだ」
②気にしなくてもいいようなことが心にかかる。気持がとらわれる。拘泥する。
*当世少年気質(1892)〈巖谷小波〉六
「賤しい根性は自然此間にこだはって居た」
③故障をいいたてる。わずかのことに理屈をつけて文句をいう。なんくせをいう。こだわりをつける。
*浄瑠璃・娥歌かるた(1714頃)二
「達て御いとまを願ひ給へ共、郡司師高こだわって埒明けず」
④(②から転じて) ある物事に強く執着して、そのことだけは譲れないという気持を持つ。「本物の味にこだわる」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ふむふむ、①の例は、物理的なことを言ってるね。
もともどはそういうことだったのかもしれない。
いうまでもなく「こだわり」はこの連用形名詞化である。
④にあるように、このごろはポジティブな意味で
世の中では日常的に使われるようになったわけだが
(というか、そういう意味でしか耳に入らないくらいだが)、
まだ「執着」のニュアンスがある④の例よりも
今はもっとあっけらかんと「いい意味」で使われている。
でも自分は使うことができない。
ネガティブな意味が浮かんできちゃうから。
ぼくがこの言葉を使うときは、
あきらかに批判的な意味で、である。
「どうでもいいことにこだわってないで、
やめたほうがいいよ~」とか、
「この店、ちょっとこだわりすぎだよね。好きじゃないな」
とか、そういう時に。
ぼくは好みがはっきりしていて、
(聞かれたら)いちいちうるさいことを言い出すので、
「こだわってますね」と言われることがある。
逆に「こだわりは何ですか」と訊ねられることもある。
向こうはネガティブな意味を込めてはいないだろうが、
「そんなものありませんよ?」
「こだわってなんかいませんけれど?」
と突っかかってしまうこともあり、
ちょっと反省する。
そうか、そう見えちゃったのか、と思うくらいでいい。
「こだわり」と人が見るまで主張するのは控えたほうがいいのだろう。
もちろん言葉は変わるのである。
いつの間にか意味が変わった言葉を
それと知らず使っていることだってたくさんあるだろう。
平野啓一郎著『カッコいいとは何か』を読むと
『カッコいい」の変遷についてふれられていて面白いのだが、
そちらはネガ・ポジ反転みたいなことは起きていないから、
「こだわる」はけっこうな大転換をしているのかもしれない。
こういうことを書いていると言われるだろう。
「こだわってますね〜!」
‥‥ハイ、そのとおりです。
拘束の拘、拘泥の拘です。
拘引・拘禁・拘留・拘置・拘囚。
そう、このことばに
前向きで明るい意味なんてないと、
ぼくはそうとらえている。
『精選版 日本国語大辞典』によればこうある。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
こだわ・るこだはる
〘自ラ五(四)〙
①すらすらと行かないで、ひっかかったりつかえたりする。
*滑稽本・東海道中膝栗毛(1802−09)六
「脇指の鍔がよこっぱらへこだわっていてへのだ」
②気にしなくてもいいようなことが心にかかる。気持がとらわれる。拘泥する。
*当世少年気質(1892)〈巖谷小波〉六
「賤しい根性は自然此間にこだはって居た」
③故障をいいたてる。わずかのことに理屈をつけて文句をいう。なんくせをいう。こだわりをつける。
*浄瑠璃・娥歌かるた(1714頃)二
「達て御いとまを願ひ給へ共、郡司師高こだわって埒明けず」
④(②から転じて) ある物事に強く執着して、そのことだけは譲れないという気持を持つ。「本物の味にこだわる」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ふむふむ、①の例は、物理的なことを言ってるね。
もともどはそういうことだったのかもしれない。
いうまでもなく「こだわり」はこの連用形名詞化である。
④にあるように、このごろはポジティブな意味で
世の中では日常的に使われるようになったわけだが
(というか、そういう意味でしか耳に入らないくらいだが)、
まだ「執着」のニュアンスがある④の例よりも
今はもっとあっけらかんと「いい意味」で使われている。
でも自分は使うことができない。
ネガティブな意味が浮かんできちゃうから。
ぼくがこの言葉を使うときは、
あきらかに批判的な意味で、である。
「どうでもいいことにこだわってないで、
やめたほうがいいよ~」とか、
「この店、ちょっとこだわりすぎだよね。好きじゃないな」
とか、そういう時に。
ぼくは好みがはっきりしていて、
(聞かれたら)いちいちうるさいことを言い出すので、
「こだわってますね」と言われることがある。
逆に「こだわりは何ですか」と訊ねられることもある。
向こうはネガティブな意味を込めてはいないだろうが、
「そんなものありませんよ?」
「こだわってなんかいませんけれど?」
と突っかかってしまうこともあり、
ちょっと反省する。
そうか、そう見えちゃったのか、と思うくらいでいい。
「こだわり」と人が見るまで主張するのは控えたほうがいいのだろう。
もちろん言葉は変わるのである。
いつの間にか意味が変わった言葉を
それと知らず使っていることだってたくさんあるだろう。
平野啓一郎著『カッコいいとは何か』を読むと
『カッコいい」の変遷についてふれられていて面白いのだが、
そちらはネガ・ポジ反転みたいなことは起きていないから、
「こだわる」はけっこうな大転換をしているのかもしれない。
こういうことを書いていると言われるだろう。
「こだわってますね〜!」
‥‥ハイ、そのとおりです。