広尾三丁目(の交差点のすぐそば、住所は渋谷区東)にある
ギャラリー介ではじまった
江戸染物作家である小倉充子さんの個展
『野暮天の型と縞』。
さっそく行ってきました。
去年『ざる蕎麦』を買ったのだけれど、
そもそも浴衣を着る機会がなくって、
合わせて買った下駄ともども、しまったままなんです。
小倉さんごめんなさい。一生ものだから、いいですよね。
ちなみに一回は試着しました。
とっても似合いました。
といいつつ、新作と聞いては見に行かないとね。
着物って掛かっているときと
羽織ったときとでまったく印象が変わるのが面白くて
(洋服の比じゃない。なにしろ面積が大きいうえ、
体形によってまったく表情がことなるので。)
いろいろためさせてもらったりしてきました。
最初、こちらの『蝙蝠横行』がかっこいいなあと
思ったんだけど、これがぜんぜん似合わない。
上と下がまったく色味がことなるのが敗因。
上のほうはけっこう似合ったと思う。
けど下がどうにもならなかった。
ところがギャラリーにいらした、背の高い、
たいへん美しい女性がこれを羽織ったとたん、
「うわあああ」と感嘆の声がギャラリーに響き、
拍手まで起きる! それくらい、映えて、
しかも、色っぽく、うつくしかったのです。
「武井さんよりずっと似合うわね」。そりゃそうだ!
なるほどねえ、おもしろいものだなあ。
で、ぼくが似合うはずだとすすめてもらったのはこちらの
『目には青葉、山不如帰』。
鰹縞、と呼ばれる模様のうえに、橘右近さんによる
寄席文字が大胆に配置されている。
「初鰹」の地がないのは、そうです、鰹縞だからです。
粋。
ちょっとデジカメの色味がわるいんだけど
もっと鮮やかなブルーです。
‥‥これすっごい派手じゃないですか?
「たしかに地味ではありませんね。
でも、こういうのがいいんですよ」
と言われて羽織ったら、あらら、似合ってる確かに。
「これはいままで似合う人がいなかったのよ」
と、とっても(たぶん)褒めてもらう。
しかし、大胆さにおいて、『ざる蕎麦』に、似ている。
いや、似てないんだけど、パワーが同じというか。
ギャラリー介の井上さんも同意見のようだった。
ちなみにほかには、
一ヶ月文献を読み込んでデザインしたという
『魑魅魍魎』という、
足もとに妖怪がうようよしているものであるとか、
あ、ちょっとわかりにくいかな、
足もとを拡大するとこうです。
ろくろ首は、男女がからまっての道行きだそうで。
肩のあたりの雲の感じも、いいなあいいなあ。
それから『竹に虎に雀』であるとか
(これもけっこう似合った)、
『煙管』、
『居酒屋』(画像はてぬぐい)などなど。
しかし「もう一枚」というには迷うなあと思い、
さきほどの井上さんの言葉を思い出して
思い切って小倉さんに
「『夜の舟遊び』をもう一度つくってもらえませんか」
と言ってみる。
『夜の舟遊び』というのは、2年前につくった
『大川舟遊び』というのがあって、
(ギャラリー介さん、写真おかりします)
それをさらに藍染めしちゃう、という、
コム デ ギャルソンでいうところの製品染。
デジタルでやってみるとこういうことになります。
かっこいいでしょう、こんなのあったら。
(だからいつ着るんだい、という話はさておき!)
なので、実物を見た事がないのにもかかわらず、
写真に惚れて、これをつくってほしいなあという
リクエストをしてみた、ということなのでした。
「もちろんいいですよ」と小倉さん。
しかしだんだんその話が高じてきて、
この『夜の舟遊び』のトーン、つまり、江戸っぽい迷彩で、
もしかしたらオリジナルの柄を考えてもらう、
というような話に。
おそらく、いままでの版木を組み合わせて柄をつくり、
染めによって迷彩的なニュアンスを出すということだろうと思う。
あわわわわ、江戸迷彩。
つくってくれるですか。ありがとうございます。
「図案が出来たら見せますから、
そのあとで色を決めましょうね」
と、トントンと、そうなりました。
あわわわわ。もうしゃけない。
ということで、とんでもない買い物になりそうです。
たのしみです。
ちなみにもちろん下駄屋の娘の小倉さん、
たくさんの鼻緒&下駄もありました。
これ試着するときの女性たちって
ほんとにうれしそうですね。
偶然居合わせたものどうしながら、
袖擦り合うも、ということで一緒に選ばせてもらったり。
ぼくは、去年買ったから下駄はパス。
いくらでもほしくなっちゃうんだけどね。
(だから、いつ履くんだ?!)