雨がやむのを待って
広尾三丁目の「ギャラリー介」。
小倉充子さんの個展の初日。
小倉さんはプラハのシノさんから紹介してもらった型染の作家で、
つまりきもの・下駄・てぬぐいの布地をつくる人だ。
生まれも育ちも九段下、そもそもが下駄屋の娘、
蕎麦と落語と酒が大好き、という人なので、
そのデザインときたら江戸っぽいことこのうえない。
芸大大学院を出てから江戸型染の師匠について修業したという、
たぶんこの世界ではまだ若手、の、たいへん有望な作家。
去年はこの年に一回の個展が終わってから知り合ったので、
今年の開催を心待ちにしていたのです。
もちろん浴衣と下駄を買うつもりで。
共通の友人であるSさんはすでに特注をかけていて、
それは「こういうデザインで」という希望のもと
小倉さんが現実のものとする、という
たいへん贅沢なコラボ。こりゃオートクチュール以上だな。
デザイン画を見せてもらったけど、
あわわわ、こりゃすごいや。
××××が裾に、×××が胸元に、
そして帯は××の××××で、銀糸ときた。
これがものすんごいんだ。ありゃかっこいい。
きっとできあがったらどこかで見る機会があるだろうから
細かいデザインは伏せ字にしておきますが、
Sさんでないと着こなせないよあれは!
で、ぼくは、じつは去年の作品のなかに
とても気に入ったものがあって、
それがとてもほしかったんだけれど、
でも新作があるのならそれも見てから決めよう、
と思っていたのです。
今年は、江戸市中を影絵で表現したもの、
煙管、金魚、朝顔、などのほかに、
大胆なものでは、鯔背な「昇り龍」があった。
これ、もともとの反物もすごくって、
ちょっと魅かれたんだけど、
その場に居合わせたみなさんの意見で、
「これはちょっと、恐い人になる可能性が」
ということで却下。
その場に居合わせたみなさんというのは
もちろん小倉さんご本人と、ギャラリーのオーナーのご婦人、
そしてこういうことにめっぽう詳しい連れの3人です。
結局、去年の作品である、
つまり狙っていたまさにそのデザインである、
「ざる蕎麦」にしました。
すごいでしょうこれ???
蕎麦をたぐるところのクロースアップです。
現品がなく、これから染めてくださるそうなので
仕上がりは7月中旬になるそうです。
どんな藍の感じにするかだとか、
着丈は長めにしておこうだとか、
これまた細かく決めてもらいました。
あ、もちろん基本は自分で決めたけど、
細かいところは「もうおまかせいたします」状態。
たすかった。だって無知だと決められないもんね。
仕上がりがたのしみです。
なお下駄は、杉の下駄で、鼻緒は「月と蝙蝠」という柄に。
「蜘蛛の巣と蜘蛛」か「しゃれこうべ」か悩んだけど、
色合いの美しさで、それになりました。
って、これもみなさんに決めてもらったんですが。
夕飯に水茄子をいただく。
生のままなにもつけずにかじる、夏の走りの味。