ボナネー(あけましておめでとう)!
大晦日から元旦になりました。
まず31日金曜日。
朝ご飯は、まだ暗いうちに買いに行ったクロワッサンに、
ハムとチーズを挟んでサンドイッチに。
そしてゆでておいたじゃがいもにバスクのとうがらし
ピモンデスペレットと塩をオリーブオイルをかけたものと
オレンジ、生のパプリカをサラダに。
全体的にずいぶん黄色〜茶色な朝食になってしまいました。
緑が足りない、緑が。
散歩。
残念ながらひどく曇っていて寒い。
ずっとマフラー要らずだったのだけれど
きょうはきゅっと締めて出かける。
息も白くて、ニットキャップをかぶった人もいるほど。
目的はなく、ひたすら散歩をする。
ラグビー場も川も霧に覆われている。
欄干につけた恋人たちの錠前も、
こういう朝に見ると、なんだか
「もうきっとみんな別れちゃったんだ」
とか思いたくなるが、そんなことはどうでもいいですね。
てくてく歩く。ひたすら歩く。
目に付いたものをかたっぱしから撮る。
‥‥楽しい。
カメラは旅のともだち。
ちなみに、今回はデジタルカメラ2台を持ってきております。
1台はOlympusのE-P1というちいさなミラーレス。
7-14mm(実質×2だから14-28mm相当)の
広角ズームをつけています。
レンズをつけかえるのは面倒なのでつけっぱなしにする用に
もうすこし画角の広い標準ズームも候補だったんだけれど、
ヨーロッパの大きさな建物をちゃんと収めるためと、
けっこう近づけるレンズなので
料理を撮るのにもいいだろうということで選びました。
オートフォーカスなので片手でも撮れるのがいい
(って今どき当たり前ですけど)。
もう1台はLEICA M8に、ズミクロンの35/2。
50ミリ相当の画角になるので、
これ1台でもよさそうなところなんだけど、
70センチ以内に寄れないという個性が
料理向きじゃないのでした。
料理だけを撮りたくても
「料理のある光景」が写っちゃう。
孤独まで写っちゃう。
この2台、いずれも古いカメラで、
M8は2006年に出たライカの初デジタル、
E-P1は2008年に出たデジタル化されたPENの初代モデル。
デジタルで古いものに意味があるのか? というと、
「なくはない」というところ。
そりゃ最新型のカメラは、うんと、いいはず。
ぼくの写真のスタイル(風景から料理まで)だと、
プロがすすめてくれるのはソニーのαシリーズに
適当なズームレンズをつけるという方法。
うんとお金があればLEICA Qや
LEICA X VARIOなんかも便利かもしれない。
でもそうそうポンポン買うわけにもいかない。
それにぼくのカメラも古いけど、ぜんぜんわるくない。
(さあここからちょっとマニアックになります。読み飛ばしてね!)
M8はコダック社がつくったCCD(CMOSじゃない)で
APS-Hサイズという、わりと大きめのセンサーが入っている。
1030万画素ながら、ここがコダック社の
(そしてそれを起用したライカ社の)すごいところで、
こってりとした、ぼく好みのいい色が出る。
そして古いレンズとも相性がいい。
カメラ本体がずっしり重たいので、
少々暗いところで、手持ちで30分の1くらいの
シャッタースピードでも、まずブレない。
そしてE-P1はCMOSでマイクロフォーサーズという
小さなセンサーなのだけれど、けっこう絵づくりがいい。
RAWで撮って毎日パソコンで現像をするのだけれど、
「おお、いい写り!」ということが多くて、
ちょっと面倒なはずのその作業も、あんがいたのしいのです。
解像度が低いというのは、悪いことばかりじゃなくて、
自分の目が見ているもの(極度の近視で乱視でローガンです)と
わりと近いところも気に入っております。
もちろん最近の超高解像度のカメラも面白いんだけれど、
ときどきおまえはアンドロイドか! というような
カリッカリの写りに仕上がっているのを見ると、
ちょっとくたびれちゃうんですよね。
そんななか、家で使っているシグマのSD-1は
好きな写りなので、でもこんどがんばって
持ってきてみようかなあ?
でも重たくってくたびれちゃうかなあ。
ここには国鉄のバイヨンヌ駅がある。
入ってみたけど、ちいさーい。
おまわりさん(男子)が集まって
ひょっとしてキナ臭い雰囲気?
かと思ったら、聞こえてきたのは
「ショコラ・ショー飲みたい」
というような会話でした。
寒いからね、飲んでください。
大バイヨンヌまで戻ってきたら、
お昼の時間になっていて、
すごくにぎやかだった。
町のあちこちに楽隊が!
若いブラスバンドあり、
おじさんばかりの(ちょっとへっぽこな)楽隊あり、
かなりまともな聖歌隊あり。
絵で見たバスクの人々とちがって
ずいぶん楽しそうでした。
マルシェもにぎやか。
ピモンデスペレットのAOC(Appellation d'Origine
Contrôlée=アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ、
原産地保証のラベルです)を見つけたのでまとめ買い。
これ日本だとすっごい高いんです。
お店にも売ってるけど、なんとなくこういうおじさんから
買うのもいいかなと思って。(安かったし!)
そして、おなか壊したらたいへんだからと
我慢してきた牡蠣なんだけど、
ついに辛抱できなくなり、買ってしまいました。
見た途端、「剥きたてを、レモンを絞って、
じゅるっと食べたら‥‥ああ、ああ」と想像し、
「牡蠣のスパゲッティもおいしいよなあ」とも考え、
妄想的官能にふるえながらじっとにらんでたら、
お姉さんが「‥‥いかが?」と声をかけてくれたのです。
すみませんかなり怪しい東洋人でしたね。
くださいください。1ダースください。
12 huîtres s'il vous plait!
もし当たって倒れてもいい! よくないけど!
じつは「使わないかもなあ」と思いつつ、
牡蠣剥き(専用のナイフ)を持ってきているのです。
そして、はち切れそうなくらい張った食い意地ゆえ、
牡蠣剥きは、時間こそかかれど、
ちゃんとできるようになっているのです。
むふふふふ。
一気に1ダース生で食べてもよかったんだけれど、
腹がぺこぺこで炭水化物が食べたかったので、
当初の妄想どおり、スパゲッティにもしました。
にんにくとバター、そしてサラダ用のつまみ菜を炒め、
剥いた牡蠣を両面さっと火を通して、
おろしたチーズもまぜてみた。
年越しスパゲッティ完成。
生牡蠣もとてもおいしかったですよん。
おなかもだいじょうぶでした。ほっ。
昼を済ませたら、急に晴れてきました。
ちょっとシードル飲んじゃったのでほろ酔いだったけど、
こりゃまた写真日和。再び散歩に出ました。
うひゃあ、晴れていると、景色がぜんぜんちがうよー。
帰路、チョコレートを買い、
さらに宿のすぐそばにあるビール専門店で
店主におすすめを訊いてローカルビールを3本買う。
夜飲むことにしよう。
ちょっと休憩して、夜の町はどんなものかと出かけてみると、
なんかみんな飲んでる。
圧倒的にスペインバスクと違うのは、ムード。
スペインのほうが「飲み付けている」というのか、
バルの前でたむろしていても、わりと行儀がいい。
ところがフランスは、わりとお行儀がわるい。
わるいっていうか、酔っぱらってはしゃぐ。
そういえばフランス人の年越しは
(パリで経験したけど)そりゃあひどい騒ぎ。
バイヨンヌでもそうなのかなぁ?
と思いつつ帰宅。
部屋でビデオを見ながらハムとビール。
うっしっし。
ビデオは、デンマークとスウェーデンの合作
『THE BRIDGE』です。
見始めたらはまっちゃって。
ところがである。
コネクションドアひとつで隔てられている隣室に
どかどか人が集まってくる音が。
ズンズンと響く重低音。
おそらく、部屋代が安いから(60〜70ユーロくらい)
借りて割り勘にしてパーティー会場にしているな?
ああ、フランス人ったら。
しかも若い子ばかりらしく、やったらげらげら笑っててうるさい。
でも、こういう習慣なら仕方がないですね、
文句を言うのも筋が違う。
さいわいこちらも酔っているのでさっさと寝ちゃったけど、
年が変わる瞬間のうるさかったこと。
ボナネー! ぎゃはははは。ボナネー。どわははは。
がちゃーん(何かの割れる音)、げらげらげら。
それでも寝ちゃえる自分は商店街育ちです。
酔っ払いの大声が子守歌みたいなもんでしたからね。
ということで元旦です。
朝は買っておいたバゲットに、
ハムとチーズと野菜を挟んでサンドイッチに。
部屋が東向きなので初日の出を拝む。ぱんぱん。
どうせきょうは町は静かだろうからと、
ビデオを見ることにする。『THE BRIDGE』の続き。
見ながら、時々止めつつ、
冷蔵庫の中でちょっと怪しい臭いになりかけている
牛肉をどうにかしようと、例によってラグーをつくる。
野菜をいっぱい刻んで、肉も切って、
別々に炒め、野菜のほうは残ったシードルで、
肉のほうは残った赤ワインで煮る。
ついでだから、スペインで買ったハムの切り落としも入れちゃう。
そして両方を合わせて圧力鍋に入れてちょっと煮て、
火を止めてほっとく。以上。かんたん。
そして見続けた『THE BRIDGE』はたいへん面白かったです。
とんでもなく面白かった。
興味のあるかたはアマゾンビデオでどうぞ。
昼前に見終わったので、元旦の散歩に出ることにする。
東京の正月みたいな青空。気温も上がって気持ちがいい。
たくさん写真を撮りました。
全貌はFlickrでどうぞ!