夕飯はパスして寝ちゃうと思います、
とか言いながらやっぱり夜中に腹が減り、
マルシェで買った牡蠣を食べることに。
前言撤回すんません。欲望には忠実に!
牡蠣はぜひ生でいただきたかったのだが、牡蠣剥きがない。
イケアの切れないぺなぺなのナイフで格闘するも歯が立たず、
諦めてオーブンで焼くことにしました。
ああ、持ってくれば良かったものリストに入れるべきは、
牡蠣剥き(2つもある)と和包丁だなあ。あとまな板。
しかしそれじゃ「包丁一本、さらしに巻いて」の世界だよなあ。
しかしながら。
オーブンで牡蠣を焼いたことがないので
調理時間も温度もよくわからない。
適当な時間、いい加減な温度に設定、
見てれば大丈夫だろうと睨みつけながら焼き、
ひとつ殻が開いたあと、ちょっと置いてから取り出した。
この「ちょっと置いてから」がいけなかった。
しかも殻の開いていない牡蠣たちは、
かなりの高温でちゃんと焼けているはずなのに、
まったく殻が開かない!
3種類買ったなか、比較的開けやすかったのは
ソバージュ(野生)の牡蠣のみ。
このヒトは凶器になりそうなほどの重量の殻を持っているが、
ナイフを差し込んだらあんがいぱかんと開いた。
そういう性格の友人がいるような気がする。
わりとぼくと相性のいいタイプ。
問題はいちばんでっかい丸い牡蠣だ。
ぜんぜん開かない。どうやっても開かない。
10分以上格闘して「むりやりこじあけた」のだけれど、
貝柱が大きく、強すぎて、剥がれない。
ギコギコと押したり引いたりしてようやく食べられる状態になった。
さあ食べましょう!
‥‥と、口に入れたら、‥‥うわーん。
硬いよう。焼き過ぎたー!!
日本の牡蠣は多少焼きすぎてもやわらかさが残るが、
こちらの牡蠣は火が通りすぎると、
部分的にゴム化しちゃうのね。
いちばん大きい牡蠣の貝柱は、
味はたいそううまいのだが、噛み切れないったらない。
するめのようにくちゃくちゃ噛んでから、ペッ。
ああなんだかもったいない。
しかも盛大に奥歯に挟まり、
そのあと糸ようじや歯間ブラシで格闘する羽目に。
ああ、失敗したー。くやしいー!
オーブンじゃなくレンジでちょっとチンして
殻に隙間をつくって
ナイフでこじあければ生で食えたかも!
と思うと、なおさら、くやしい!!
さて、そんな「ゴム牡蠣」ですが、それを肴に、
白ワインがないので赤ワインを飲みつつ、
フレッシュチーズや、昼の残りのアーティショーをつまみ、
それで夜食といたしました。
なんだかんだいつもより遅く寝たので起床は7時前。
朝食はオムレツとトースト。
ソースとして、きのう買ったシャンピニオンを、
エシャロット、バター、フレッシュチーズ、
牛乳、じゃがいもとともに
フライパンでじっくり火を通し、
パセリ、塩こしょうで味をととのえました。
エシャロット入れると急にフレンチの香りになるなあ。
腹もいっぱいになったところで、まずは散歩。
きょうは曇天で、空気がとても冷たいから、
散歩日和かもしれない。
厚手のコートを着て、ブーツを履いて歩き出す。
近くのÉtienne Marcel駅の周辺には、
初日に行ったG detouという食材店があり、
a.simonなどの厨房機器のお店も点在、
コックコート専門店などもあって、
料理好きには聖地のような場所。
その先をもっと行くとオリビエ・ロランジェの
スパイス屋さんがあるらしいのだが、
厨房機器なんかをためつすがめつしていたら
時間がなくなってきた。
それでもG detouでは買いたいものがある。
ジャンポール兄さんにすすめられていた
"pâte feuilletée"を買うのである。
パート・フィユテ。パイ生地ですね。
しかし塊、3キロって。どうするんだろうオレ?
という疑問はさておき、
いったん部屋に戻りとりあえず冷凍庫に入れて
こんどはマレ方向へ急ぐ。
じつは、きょうは
「たまたまパリにいるFさん」と会う日なのです。
Fさんは、フランス菓子の専門家(パティシエ)で、
日本で、とある特別な人たちに菓子をつくる仕事をしている日本人。
こちらにバカンスで滞在中ということで、
共通の友人を介して「ごはんでも食べましょう」
ということになったのです。
じつはFさんとは、初対面どころか、
存在を知ったのもこちらに来てから。
でもこういうものは、多生の縁というもので、乗るに限る。
(じっさい、よく笑いよく食べるすてきなかたでした!)
待ち合わせ場所は、マレのはずれ、
マレにしては静かなあたりにある古いビストロ。
考えてみたら5日目にして初の外食!
こんにちは、はじめまして、
さあ食べましょう食べましょう。
部屋でつくれないものを注文すべしと、
そして昨晩のリベンジもかねて、
前菜は生牡蠣6コ。
メインは牛肉のタルタル。
ううむ、生・生ですね。
「はらをくだしたらどうしよう」
ということを、考えなくもない組み合わせ。
でも、食べたいのだから、いいのです。
いまのところとても健康。
もし腹を壊しても、だれもうらみません。
ところでこの話は前にも書いたような気がするけれど、
牡蠣というのは、漢字はとても「それらしい」と思う。
しかしながら「KAKI」という発音は
あの殻には合うけれど、
あの中身とはどうにもそぐわない気がするのだ。
フランス語だと単数は「ユウィットル」、
複数形は「レズウィットル」で、最後のルはr、つまり、
「ガ行」に近いような、咽喉を鳴らして発音する、
あのフランス語独特の音である。
牡蠣の中身の、あのぐちゃっとしたどろんとした怪しい感じは、
フランス語で発音したほうがそれっぽいですよね。
‥‥「ですよね」って言われても困るでしょうが、
なんとなくわりといつもそんなふうに思いながら
生牡蠣を口に運んでおります。
はたして牡蠣はきちんと美味。
しかもバターをつけて食べるというのは初。
(つけないほうが好みでありました。)
そしてタルタル。
包丁で刻んだもので、卵黄は使わないレシピらしい。
ついてきたピクルスなどを混ぜ込み、
ウスターソースで味を整えていただいたのだが、
とってもスタンダードな感じで、
くさみもなく、すっきりとしている。
卵黄がないせいか、塊になりづらいが、
この乾いた感じもわるくない。
個人的にはもうちょっとワイルドかつ
「ねと」としていてもいいんだけど、
こんなふうにさっぱりしたタルタルもおいしいですね。
なまにくだいすきー!(清水ミチコさんのユーミソの声で)
付け合わせのポムフリットはねっとり系で、
芋じたいに甘み(インカのめざめ、みたいな)があった。
どちらも大好物なのに今日まで食べずにいたのが不思議なくらい。
そしてデザートにタルトをいただき、コーヒーで〆。
そうそう、ちょっと面白いことがあったんだった。
ぼくはワインを、牡蠣に合わせて白をグラスで、
タルタルに併せて赤をグラスで飲んで、
ほかの2人がまったく飲んでないのにひとりごきげんに、
デザートになってからもちびちび飲んでいたら、
店員さんが通りすがりに「半分も入ってないデキャンタ」を
ぽんと、素知らぬ顔で置いていった。
何の会話もなくすっと席を離れていく店員さん。
ぼくのところには謎のデキャンタが残されている。
隣席の韓国女性2人は水道水を飲んでいたし、
逆側の隣席には誰もいないから、
わざわざ他の席から持ってきたということになる。
えーっと、これは、誰かの飲み残し?
‥‥くれるの? なんで?
さっぱり意味がわからないのだが、
こちらもほろ酔いで機嫌がいい。
これは「こっそりさしあげましょう」という意味だと解釈し、
ありがたくいただくことにしました。
グラスで飲んだのとは違うワインで、
たぶんデキャンタのほうがいいワイン。
たっぷり1杯以上あっておいしかった。
でも、なんでくれたんでしょうね。
そんなに呑み助に見えましたかね‥‥。
(このブログを書きながらも、赤を飲んでおりますが。)
Fさんはそのあと3時に約束があるということで店の前で別れ、
こちらはマレを散策しながら、Hôtel de Villeの駅へ向かう。
途中、フランスのレストラン800っていう特集の、
FOODINGという雑誌購入。
今後役に立つかどうかというよりも、
紙上旅行のたのしみとしてこういうガイドブックって最高だ。
妄想レストラン、ぼくのなかにはけっこういっぱいある。
そういえば『千と千尋の神隠し』の冒頭の店も、
妄想がこうじて「あそこの焼豚うまいよ!」と言ったことがあります。
地下鉄に乗っての行き先は、Sèvres - Babylone駅。
ボンマルシェ百貨店とLa Grande Epicerie de Parisを
ふたたび見学‥‥と思ったら、ものすごく混んでいる。
日曜日の伊勢丹なみ。
グランドエピスリーののうで、
買いたいものも、なくもなかったんだけれど、
レジの長蛇を見て萎える。
じつは冷たい雨もしょぼしょぼ降っていて、
それにちょっと濡れたりしたものだから、
「買うぞ!」という気分にあまりならなかったのかも。
店を出ると、雨がだいぶ止んでいたので、
疲れはあったものの、ちょっと歩いてSaint-Sulpice駅から
地下鉄に乗ってMouton-Duvernet駅へと向かう。
ダゲール通り商店街のワインカーヴ、
La Cave des Papillesでワインを買うのである。
これまたワインにたいへん詳しい
(ワイン屋なので当たり前だが)人から
「これを見つけたら買いですよ!」
と言われていたワインがあるのだ。
すごく高いわけじゃないらしいけど、たいそううまくて、
市場に出回る本数が少ないのでとにかく見つけたら買えと。
で、あるとしたらここだろうと狙って行ってみたのです。
‥‥ありました。
30ユーロ。
ふだん飲むワインの3倍の価格。
でも飲欲にかられて買うことにする。
「いんよく」ってちょっといやらしいですね。
「しょくよく」は素直に元気な感じがするのに。
「いんよくおうせいね! ふふふ‥‥」とか
言われたらちょっと照れちゃいますね。
まあともかくがんばって持って帰ろう。
そしてLoire方面の赤も1本。
これはパリ滞在中に消費するつもり。
帰路、ハムとパテをちょっとずつ購入。
元日とか、お店もやってないことだし、
ちびちびやるつもりです。