12時前に就寝、6時前に起床。
朝飯は、豚肉(骨付きリブロースの薄めのもの)を
オーブンでこんがりめに焼いてから、
パセリとエスペレットと塩と胡椒を混ぜた(自分で混ぜてます)
調味塩をかけて、メインに。
オムレツは、残っていたエメンタールを入れて、
牛乳もいれてふわっと‥‥したかったんだけど
結果的に硬めになっちゃいました。
サラダは、ビオの店で買ってきたレタスと、
なんだかわかんないけどつまみ菜的なものを中心に、
チコリとラディッシュを入れて、
くるみ油、塩、こしょう、ライムで和える。
バゲットはあるまじき「おとといの」なんだけど、
フレンチトーストにするまでもなく、まだ食えた。
小麦の香りもちゃんと立ってるし。
そこにオレンジジュースとコーヒー。
やっぱりこれってフランス的な朝食とはかけ離れてますよね。
むしろアメリカ人(移民)じゃないか。
フランスに身も心も染まりたいのに、胃袋と食欲脳が連携して反抗している。
パン・オ・ショコラとかパン・オ・レザンは
「おやつ」って感じなんだもの。
もちろんとってもおいしいんだけどね。
さて、きょうは9時にリコちゃん
(パリ在住の芸術家である友人)と待ち合わせ。
友達もまじえ4人でお昼を食べるので、
まずは買い出しに行くのである。
行き先はMarche Richard Lenoir。
バスチーユから北西にのびるリシャール・ルノワール通りは
暗渠の上が公園になっていて、そこに市が立つ。
2008年だったか、この通り沿いの
アパートホテルに泊まっていたので、
よくこのマルシェに買いに来た。
その頃はかなり初心者だったからか
びくびくしながら拙いフランス語で買い物をしたが、
拙さはまったく変化していないのに
図々しさだけが成長している現在は
まったくなにも動じずに買い物ができます。
順番を待って、ちゃんとコンニチワを言い、
欲しいものを全身でアピールすれば大丈夫。
そう、買い物のコツは挨拶と欲望。
しかし今回はフランス語のできるリコちゃんがいるので
けっこう頼りにしてしまいました。
何を買ったかというと、
●牛肉のかたまり
●エシャロット
●チコリ
●マーシュ
●マッシュルーム
●シャントレル(たぶん‥‥)
●ソシソン(いわゆるサラミ)
●緑のオリーブ
●フレッシュチーズ
●きのこのマリネ
●アーティショーのマリネ
●タラモ
●トリュフ入りフォアグラ
●オンドゥイエット
●牡蠣
●はちみつ
●ワイン
‥‥などなどです。
もちろんぜんぶ昼に食べるわけじゃなく、
滞在中の食材も含まれているんですってば。
これでもオマールとか丸鶏とか買わなかっただけいい。
生産者から直接買うというのもマルシェのたのしみ。
顔を見るとおいしいかどうかわかる気がするもんです。
思い込みでも、それでいいのだ。
そしてですね、マルシェのなかほどに出ていた、
「修理いたします」の露店に並んでいた、銅鍋。
ノーブランドながらとてもいい感じだ。
ひとつずつかなりの重さで、すごくしっかりしている。
売り物かサンプルかわからなかったのだけど、
6種類あるうち、2番目くらいの大きさのが
使いやすいだろうなあ、ほしいなあ、いくらかなあ、
そもそも売り物? とおじさんに訊いたら、
ぶっきらぼうに「6コ100ユーロ」って言うじゃないですか!
買う。ください。すぐください。ちょっとそこの人!
ぼくが買うからダメ!
「コンフィチュール用の特大のをいっしょにどう?」
それは要らないです。前に買ったから‥‥。
そして6コセットを受け取ったとき、
あまりの重さに衝撃を受ける。
日本に持って帰れるだろうか‥‥。
やっちまったなあ。なんとかするしかないが。
冬晴れの空の下をてくてくと、
重い荷物をかかえて帰路につき、
昼につくったのは、
●牛肉の揚げ焼き(くるみオイル)
エシャロットときのこのソースで
●ビオ野菜のサラダ
でした。
オリーブやマリネ類、チーズはそのまま食べられるので
ほんとうに、らくちんだった。
牛肉の揚げ焼きは、もともとの肉の質がたいへん好み。
和牛とはまったく違うプキプキとした歯ごたえで、
セニョン(レア)で食べるのにとても合ってるし、
揚げて硬くなった周りの部分も、ちょっとすじがあるもののおいしい。
繊維の1本1本が、太い感じ!
ゆえに、盛大に歯に挟まりましたが、それもまたよし。
ちなみに味付けは、パセリ、塩、黒胡椒、エスペレット。
ああ、おいしくできてよかった。
揚げ焼きはやっぱりフランス牛肉でやるのがうまいんだなあ。
和牛は柔らかすぎるんだと思う。
それはそれでとっても美味しいけど、
けものの肉を食べているという感じは
圧倒的にフランス牛肉のほうがあるなあ。
そしていっしょに飲んだクレモン(発泡ワイン)と赤、
いずれもブルゴーニュ、とってもおいしかったです。
たくさん食べて飲んで喋って、2時すぎに解散。
片づけたあとほろ酔いのまま、ぶらぶら散歩、
最終的にはポンピドーへ。
ポンピドーでは、きのうくたびれて見られなかった、
60年代以降の現代美術や、
小規模の企画展をいくつか見るためである。
面白かったのはPIERRE HUYGHEというアーティスト。
先に見た60年代以降の現代美術を見て感じたのが
「あの爆発的な影響力をもち、熱にうかされたように
時代とともにあったアヴァンギャルドが終焉したあと、
芸術は、長く混迷の時期に入っていったのだなあ」
ということだったから、
「じゃあ、今の作家ってどうなってるんだろう?」
ということが知りたかった。
カウンターカルチャーとしてのアートや、
強くメッセージ性のあるアート、
大衆を扇動していくようなアート、
そういうものがつくりづらいというか、
どんどん密室芸みたいになっていくなか、
どう突破していくんだろうな芸術家って、という、
その答えのひとつがPIERRE HUYGHEにあったと思う。
かんたんに言うと「へっちゃら」で「明るい」。
なんか、あんまりいろんなことを気にしてないように思える。
じゃんじゃん手を変え品を替え、人をおちょくっとんのか!
と思われそうなギリギリのことを、
ちっとも偉そうじゃなく楽しそうにやってる。
会場が巨大なインスタレーションのようで、
蜂は飛んでるわ雪は降るわ氷は張ってるわ雨はふるわ、
天井はゲーム画面になってるわ犬はうろうろしてるわ、
顔に照明をつけたお兄さんがゆらゆら歩いてるわ、
あちこちでさっぱりわけのわからない映像が流れてるわ、である。
けれどもお客さんはあきらかに楽しそうなんである。
自分も楽しかった。わけもわからず笑ってた。
意味なんてさっぱりわからないのだけれど、
こういうのは意味を問うてもせんないことで、
「あれ、楽しかったなあ」というのでいいのかもしれない。
こういう感覚は、もう十何年も前にロッテルダムで初めて見た
マシュー・バーニー以来かもしれないぞう。
ところでよく晴れた今日、
日没後のマジックアワーの美しかったこと!
周りの建物よりちょっとだけ高いポンピドーからの景色、
最高でした。
ずいぶん気温も下がって寒く感じたけど、
いつまでも眺めていたいような風景でした。
しかし腹が空かないな。
夕飯はパスして寝ちゃうと思います。