昨日10時間以上歩いてワインを飲んで寝たら
8時間も眠りこけてしまった。
自分的には大寝坊。
朝食はきのうのパン・オ・ショコラ、
コーヒーと牛乳、サラダ、
ヨーグルトを入れたスクランブルエッグ。
よごれた食器を食洗機にぶちこみ、
階段の踊り場にある共同の洗濯機で
2日ぶんとパジャマを洗う。
物干しはバスルーム。
中庭の猫に挨拶しながら12時すぎに部屋を出る。
ラマルクコーランクール駅まで歩く途中の五叉路に
カフェがいくつか並んでいる。
このあたりは観光地ではないので
地元の人たちがのんびりお茶や食事をしている。
日曜の昼過ぎ、ほんとうに呑気な印象。
軽く昼食にしておきましょうか、と、
赤い外観のカフェに寄る。
何を食べようかなあ。
きょうの夜はお肉を食べる予定だから、
まあ、軽めのほうがいいよなあ。
サラダかなあ。いや、そういえばまだ
tartare de boeufを食べてない!
「ありますか」と訊いたらあるというので
そこで頂くことにする。
結局肉食じゃないか。ふふふ。
tartare de boeufは、牛肉のタルタル。
日本では「タルタルステーキ」って言うけど
ステーキじゃなくて、生肉。
生の牛ひき肉に生卵黄が乗り、
オニオン、パセリ、ピクルスを刻んだものとケッパーが添えてある。
これを自分で混ぜて、ウスターソースで味をつけて食べる。
たっぷりのフレンチフライがつけあわせでついてくる。
ぐちゃぐちゃとかきまぜる感じはなんともワイルド。
生卵や生肉を食べるというのが
ぼくがフランスが好きな理由のひとつで、
もしかしたら腹を下すのかもしれないが
(分解酵素が足りないとか、耐性が低いとか?)
それでもいい。食う。
‥‥んまいよう。んまい。泣くほど、うまい。
ねっとりととろけるような肉は、
生臭くも獣臭くもなく、
ウスターソースがこんなに合うのかと驚く。
フレンチフライも、つやつやの黄金色ながら、
あぶらっこくなく、最高である。
たぶんここの揚げ油は、ピーナッツオイルだと思う。
塩もなんにもしてないから、
マスタードをちょっとつけて食べる。
昼だが赤ワインをグラスでもらって
たいへんご機嫌な昼食となりました。
もう水道水すらうまいっす。
さてこの日はたかしまさんのリクエストで
マレにあるピカソ美術館に行こうと考えていたのだが、
着いたら休館。しばらく改築中らしい。
すごく無念そうにしていたたかしまさんだったが、
いいじゃないですか、そうやって思いを残せばいいんです!
きっと、また来られますよ。
こんどはぼくのリクエストでヨーロッパ写真美術館へ。
ここは常設展はないので、来るたびに違う作品展示が見られる。
ちょうどやっていたFerrante Ferrantiがとてもよかった。
シチリア人の父とサルディニア人の母を持つ写真家で、
どうも古代ギリシアローマ彫刻のエロティシズムに
取り憑かれた時期があるらしく、
こんなに色っぽく彫像を撮るなんて‥‥と、
ほんとうに罰当たりぎりぎりの作品シリーズが、
とくによかったです。
外に出ると一気に青空が広がっていて、暑い。
この青空と雲は夏の名残。
もうすぐ実りの秋が来るとはいえ、
冬の淋しさを予感させる季節でもあるから、
こういう青空はやっぱりみんなが喜んでいる感じがする。
日曜なので閉まっている店が多いなかをぶらぶらと南下、
セーヌ河畔に向かう。
こっちの人ってなんで剥製がこんなに好きなんだろう。
関係ない店にもよく飾ってありますよね。
セーヌ川は、陽光に川面がキラキラと輝いていて
ほんとうにきれいだった。
水質はよくないらしいけど、匂いもなくて快適。
たかしまさんは河畔に降りてスケッチをしていた。
ひとつ橋を越えてシテ島に渡ると
ノートルダム大聖堂の威容が間近に見られる。
ガーゴイルはいるがせむし男はいない。
中に入ってみようと思ったが
どえらい長い行列だったので、表で見るだけにする。
やけに中国人観光客が多い。
みんな同じ服装で同じ髪形で同じ表情。
おじさんと子供が同じ表情。
パリの人はちゃんと日本人を見分けてくれるので、
よくわかるなあと感心していたんだけれど、
こりゃ‥‥わかるよなあ。たしかに違う。
日本人観光客はぽわんと消え入りそうで、
なんだか妖精みたいだもの。
そのあとサンジェルマン・デ・プレへ歩く。
このあたりは、たしかに濃密なパリっぽさがあるんだけれど、
なぜだかぼくはあまり好きじゃない。
なんででしょうね、よくわからない。
最初に泊まったSaint PaulからMarais、Bastille方面が好きだし、
今回部屋を借りたMontmartreもとてもいいんだけど。
歩き疲れたのでカフェでバドワを飲んでいたら、
とてもヘタな楽隊(二人組)が目の前で演奏を始めた。
クラリネットの旋律がへにゃへにゃとしていてあまりにもヘタである。
でもなんか聞き覚えがある曲だなあ。
あ、コム・ダビチュード Comme D'habitudeだ。
フランク・シナトラが英語で歌い世界的ヒットとなった
「マイ・ウェイ」は、もともとフランスうまれ、
クロード・フランソワの名曲であるが、
なにしろ楽隊がへなちょこで音程が定まらないので
聞いていると酔いそうになる。
はやくあっち行ってくれ。
すると目の前ににゅっと手が出てきた。
物ごいがカップに小銭を入れろとかちゃかちゃ鳴らす。
すると猛烈な勢いで蜂がやってきて
ぼくの黄色いシャツにまとわりつく。
ぶんぶん、かちゃかちゃ、へなちょこマイ・ウェイ。
ひどい。やっぱりサンジェルマン・デ・プレは相性が悪い。
さて、夜は、きのうばったり会ったリコちゃんと
ひさしぶりにゴハンに行こうということで、
Robert et Louiseを予約してもらった。
いまやすっかり有名になり、日本人客もおおぜいの、
マレにある田舎ふうな肉のビストロ。
薪の炎で鉄板焼きにしてくれる牛肉がたいそうおいしくて、
しかも量がたっぷり。
パリに来るとこの肉が食べたくなる。
まず生ハム、そしてオンドゥイエット。
生ハムはほどよい乾燥具合と、やや厚めに切ってあるところが
噛みごたえがあっていい。
オンドゥイエットは‥‥これは‥‥これはもう‥‥
いままで食べた中で最高ですよ‥‥。
ソーセージの具がモツ、という、いわば腸詰め腸。
ああおいしい。また泣けてきた。
メインは2人前のビーフ。
2人前だが、ぼくらの感覚からすると4人前くらいある。
しかも歯ごたえが半端じゃない(つまり硬い)ので、
食べるのにたいへん苦労するのだが、
肉ってあまり噛んでると気分が悪くなるときがあるのに、
ここのはそんなことはない。
焼き加減はa point(ミディアム)でなくあくまでも
saignant(レア)である。
その先にbleu(青‥‥って?)というほとんど生、
というのがあるらしいが、さすがにそこまではね。
saignantでもじゅうぶんに、生っぽいですから。
ちなみにウェルダンはbien cuitだそうです。
使ったことないや。
ワインは1本目がラングドック、
2本目がローヌ渓谷のもの。
いずれも1本22ユーロ。
店ではいちばん安い部類であるのだが、
いやはやどうしてこうも安いワインがうまいのか!
とくにローヌ渓谷のほうは、
食事が終わったあとしばらく飲んでいたんだけど、
デザートと合わせても大丈夫なほどでした。
あ、デザートはTarte au citron(レモンタルト)、
Framboisier(フランボワーズのケーキ)、
Fromage blanc au miel(フロマージュブランのはちみつがけ)。
食った食った。
うしろの席にいた日本人女子のグループが
マンガメディア系編集女子、らしいのだけれど、
その会話がひどかったなあ。
「ポンピドーセンター行ったんですけど、
現代美術、何それって感じ?
さっぱりわからないっすよねー」
「白いだけのとか? アタシでも描けるっつうの!
キャハハハハ!!」
とか言ってるのが聞こえてきてしまい、
猛烈に腹を立てる。抗議しませんけど。
どうした編集女子、おまえらは知的な職業のはずだ。
現代美術の世界において
ポンピドーセンターがコレクションするということの
価値、意味を知らないのか。
知らなければ知らないでいい。
自分の不勉強や教養のなさを恥じいる心はないのか。
わからないことへの好奇心はどうした。
そもそも、芸術に対する尊敬はないのか。
‥‥と、そんなことを考えていると
ますます腹が立ち、このままでは
おいしいゴハンがだいなしになりそうなので
聞かないモードに切り替えました。
ちなみに、この日はたかしまてつをさんの描いた
ブタフィーヌさんの誕生日。
生ハム食べてることは彼女にはナイショだが、
お祝いお祝い。誕生日おめでとうブタフィーヌさん。
「ブタフィーヌさんたち、いまどうしてますか」
とたかしまさんに訊いてみたら、
「みんな、元気なようですよ。
こないだ、西瓜を食べすぎて
おなかこわしちゃったらしいんですけど」。
LIFE GOES ON、人生は続いている。
8時間も眠りこけてしまった。
自分的には大寝坊。
朝食はきのうのパン・オ・ショコラ、
コーヒーと牛乳、サラダ、
ヨーグルトを入れたスクランブルエッグ。
よごれた食器を食洗機にぶちこみ、
階段の踊り場にある共同の洗濯機で
2日ぶんとパジャマを洗う。
物干しはバスルーム。
中庭の猫に挨拶しながら12時すぎに部屋を出る。
ラマルクコーランクール駅まで歩く途中の五叉路に
カフェがいくつか並んでいる。
このあたりは観光地ではないので
地元の人たちがのんびりお茶や食事をしている。
日曜の昼過ぎ、ほんとうに呑気な印象。
軽く昼食にしておきましょうか、と、
赤い外観のカフェに寄る。
何を食べようかなあ。
きょうの夜はお肉を食べる予定だから、
まあ、軽めのほうがいいよなあ。
サラダかなあ。いや、そういえばまだ
tartare de boeufを食べてない!
「ありますか」と訊いたらあるというので
そこで頂くことにする。
結局肉食じゃないか。ふふふ。
tartare de boeufは、牛肉のタルタル。
日本では「タルタルステーキ」って言うけど
ステーキじゃなくて、生肉。
生の牛ひき肉に生卵黄が乗り、
オニオン、パセリ、ピクルスを刻んだものとケッパーが添えてある。
これを自分で混ぜて、ウスターソースで味をつけて食べる。
たっぷりのフレンチフライがつけあわせでついてくる。
ぐちゃぐちゃとかきまぜる感じはなんともワイルド。
生卵や生肉を食べるというのが
ぼくがフランスが好きな理由のひとつで、
もしかしたら腹を下すのかもしれないが
(分解酵素が足りないとか、耐性が低いとか?)
それでもいい。食う。
‥‥んまいよう。んまい。泣くほど、うまい。
ねっとりととろけるような肉は、
生臭くも獣臭くもなく、
ウスターソースがこんなに合うのかと驚く。
フレンチフライも、つやつやの黄金色ながら、
あぶらっこくなく、最高である。
たぶんここの揚げ油は、ピーナッツオイルだと思う。
塩もなんにもしてないから、
マスタードをちょっとつけて食べる。
昼だが赤ワインをグラスでもらって
たいへんご機嫌な昼食となりました。
もう水道水すらうまいっす。
さてこの日はたかしまさんのリクエストで
マレにあるピカソ美術館に行こうと考えていたのだが、
着いたら休館。しばらく改築中らしい。
すごく無念そうにしていたたかしまさんだったが、
いいじゃないですか、そうやって思いを残せばいいんです!
きっと、また来られますよ。
こんどはぼくのリクエストでヨーロッパ写真美術館へ。
ここは常設展はないので、来るたびに違う作品展示が見られる。
ちょうどやっていたFerrante Ferrantiがとてもよかった。
シチリア人の父とサルディニア人の母を持つ写真家で、
どうも古代ギリシアローマ彫刻のエロティシズムに
取り憑かれた時期があるらしく、
こんなに色っぽく彫像を撮るなんて‥‥と、
ほんとうに罰当たりぎりぎりの作品シリーズが、
とくによかったです。
外に出ると一気に青空が広がっていて、暑い。
この青空と雲は夏の名残。
もうすぐ実りの秋が来るとはいえ、
冬の淋しさを予感させる季節でもあるから、
こういう青空はやっぱりみんなが喜んでいる感じがする。
日曜なので閉まっている店が多いなかをぶらぶらと南下、
セーヌ河畔に向かう。
こっちの人ってなんで剥製がこんなに好きなんだろう。
関係ない店にもよく飾ってありますよね。
セーヌ川は、陽光に川面がキラキラと輝いていて
ほんとうにきれいだった。
水質はよくないらしいけど、匂いもなくて快適。
たかしまさんは河畔に降りてスケッチをしていた。
ひとつ橋を越えてシテ島に渡ると
ノートルダム大聖堂の威容が間近に見られる。
ガーゴイルはいるがせむし男はいない。
中に入ってみようと思ったが
どえらい長い行列だったので、表で見るだけにする。
やけに中国人観光客が多い。
みんな同じ服装で同じ髪形で同じ表情。
おじさんと子供が同じ表情。
パリの人はちゃんと日本人を見分けてくれるので、
よくわかるなあと感心していたんだけれど、
こりゃ‥‥わかるよなあ。たしかに違う。
日本人観光客はぽわんと消え入りそうで、
なんだか妖精みたいだもの。
そのあとサンジェルマン・デ・プレへ歩く。
このあたりは、たしかに濃密なパリっぽさがあるんだけれど、
なぜだかぼくはあまり好きじゃない。
なんででしょうね、よくわからない。
最初に泊まったSaint PaulからMarais、Bastille方面が好きだし、
今回部屋を借りたMontmartreもとてもいいんだけど。
歩き疲れたのでカフェでバドワを飲んでいたら、
とてもヘタな楽隊(二人組)が目の前で演奏を始めた。
クラリネットの旋律がへにゃへにゃとしていてあまりにもヘタである。
でもなんか聞き覚えがある曲だなあ。
あ、コム・ダビチュード Comme D'habitudeだ。
フランク・シナトラが英語で歌い世界的ヒットとなった
「マイ・ウェイ」は、もともとフランスうまれ、
クロード・フランソワの名曲であるが、
なにしろ楽隊がへなちょこで音程が定まらないので
聞いていると酔いそうになる。
はやくあっち行ってくれ。
すると目の前ににゅっと手が出てきた。
物ごいがカップに小銭を入れろとかちゃかちゃ鳴らす。
すると猛烈な勢いで蜂がやってきて
ぼくの黄色いシャツにまとわりつく。
ぶんぶん、かちゃかちゃ、へなちょこマイ・ウェイ。
ひどい。やっぱりサンジェルマン・デ・プレは相性が悪い。
さて、夜は、きのうばったり会ったリコちゃんと
ひさしぶりにゴハンに行こうということで、
Robert et Louiseを予約してもらった。
いまやすっかり有名になり、日本人客もおおぜいの、
マレにある田舎ふうな肉のビストロ。
薪の炎で鉄板焼きにしてくれる牛肉がたいそうおいしくて、
しかも量がたっぷり。
パリに来るとこの肉が食べたくなる。
まず生ハム、そしてオンドゥイエット。
生ハムはほどよい乾燥具合と、やや厚めに切ってあるところが
噛みごたえがあっていい。
オンドゥイエットは‥‥これは‥‥これはもう‥‥
いままで食べた中で最高ですよ‥‥。
ソーセージの具がモツ、という、いわば腸詰め腸。
ああおいしい。また泣けてきた。
メインは2人前のビーフ。
2人前だが、ぼくらの感覚からすると4人前くらいある。
しかも歯ごたえが半端じゃない(つまり硬い)ので、
食べるのにたいへん苦労するのだが、
肉ってあまり噛んでると気分が悪くなるときがあるのに、
ここのはそんなことはない。
焼き加減はa point(ミディアム)でなくあくまでも
saignant(レア)である。
その先にbleu(青‥‥って?)というほとんど生、
というのがあるらしいが、さすがにそこまではね。
saignantでもじゅうぶんに、生っぽいですから。
ちなみにウェルダンはbien cuitだそうです。
使ったことないや。
ワインは1本目がラングドック、
2本目がローヌ渓谷のもの。
いずれも1本22ユーロ。
店ではいちばん安い部類であるのだが、
いやはやどうしてこうも安いワインがうまいのか!
とくにローヌ渓谷のほうは、
食事が終わったあとしばらく飲んでいたんだけど、
デザートと合わせても大丈夫なほどでした。
あ、デザートはTarte au citron(レモンタルト)、
Framboisier(フランボワーズのケーキ)、
Fromage blanc au miel(フロマージュブランのはちみつがけ)。
食った食った。
うしろの席にいた日本人女子のグループが
マンガメディア系編集女子、らしいのだけれど、
その会話がひどかったなあ。
「ポンピドーセンター行ったんですけど、
現代美術、何それって感じ?
さっぱりわからないっすよねー」
「白いだけのとか? アタシでも描けるっつうの!
キャハハハハ!!」
とか言ってるのが聞こえてきてしまい、
猛烈に腹を立てる。抗議しませんけど。
どうした編集女子、おまえらは知的な職業のはずだ。
現代美術の世界において
ポンピドーセンターがコレクションするということの
価値、意味を知らないのか。
知らなければ知らないでいい。
自分の不勉強や教養のなさを恥じいる心はないのか。
わからないことへの好奇心はどうした。
そもそも、芸術に対する尊敬はないのか。
‥‥と、そんなことを考えていると
ますます腹が立ち、このままでは
おいしいゴハンがだいなしになりそうなので
聞かないモードに切り替えました。
ちなみに、この日はたかしまてつをさんの描いた
ブタフィーヌさんの誕生日。
生ハム食べてることは彼女にはナイショだが、
お祝いお祝い。誕生日おめでとうブタフィーヌさん。
「ブタフィーヌさんたち、いまどうしてますか」
とたかしまさんに訊いてみたら、
「みんな、元気なようですよ。
こないだ、西瓜を食べすぎて
おなかこわしちゃったらしいんですけど」。
LIFE GOES ON、人生は続いている。