しりあいや、ともだちや、
仕事仲間や、お世話になってる人や、
10年ぶりに見かける人など、
ロビーにいるといろんな人に会うコンサート。
お目にかかったみなさま、おひさしぶりでございました。
さて、コンサート。一部は「ヤノカミ」。
さとがえる=ピアノ・ソロ、
と思い込んでいたものだから
なんの説明もなくはじまったのでびっくり。
頭をリセットして、テクノの一音としての
あっこちゃんの声を聴く。
とてもよく合う。
レイ・ハラカミさん、おもしろいお人柄。
矢野さんのトークがややよそ行きで愉快。
休憩をはさんで二部。こんどこそピアノ・ソロ。
いつもの半分の時間で、「ザッツ矢野顕子」な選曲。
超ベストみたいな感じ。
同行者、泣く泣く。
ぼくもじゅうぶんに楽しんだのですが、
いつもの「おお、次はこれか!」というたのしみが、薄い。
どうも、矢野さんが今これを歌いたくて
選んでいるのかどうかが、
わかんないなあという選曲‥‥ではある。
つまりは歌う動機。
お客様に喜ばれるように、という
おもてなしの気持ちはとても感じるけど、
そういう矢野さんが聴きたくて来てるのかというと
いち客として、ちょっと、わかんなくなる。
個人的には、もっと乱暴でわがままで
凶暴で圧倒的ないつも新しい音楽家・矢野顕子、に、
年に一度会いたいものである、と。
つまり“あのとき”の「すばらしい日々」や
“あのころ”の「ニットキャップマン」、
“そのとき聴いた”「グリーンフィールズ」には、
どうしても、思いが、かなわないのです。
「てぃんさぐぬ花」も「Watcin'You」も
「いもむしごろごろ」も、すばらしい、
のだけれど、でも、やっぱり、
ベスト盤を聴いてるような感覚に。
あ、単純に「すげえ!」と思ったのは
「ローズ・ガーデン」のピアノと唄。
口をぽかんと開けちゃうくらいすごかったです。
そういうものが混じるので気が抜けないのですが、
これも、夏のBlue Noteで感じたことの、反復。
もっとも、“あのとき”“あのころ”
“そのとき聴いた”問題は、
矢野さん本人がいちばんわかっていたと思う。
無粋なファンが
「おねがいがあります!
わたし今日が結婚記念日なので
『スーパーフォークソング』を
やってください!」
と大声で叫んだのを
「CDでお聴きくださいね」
と軽くいなし、
「結婚記念日おめでとう。祝える人はいいわねー。
世の中には祝えない人、いっぱいいるからねー。
あはははは!」とたたきのめす。
客が思い出の1曲を聴きに来るコンサートは、
たぶん、矢野さん、本意じゃないでしょう。
そして最後のMCで「矢野顕子は変わる宣言」。
ソフトウエアアップデートなんてものじゃなく
OSそのものが変わるくらい、変わります、と。
いまそのCD(彼女は“レコード”と言いますが)を
つくってる最中で、
きょうも新曲をおきかせしたいけど、がまんする、
来年の矢野顕子をお楽しみに、と。
ああ、だから、今回はこの総決算な選曲だったのですね。
そういう意味で「聴きおさめかも?」と思いつつ
アンコールの「ひとつだけ」を聴きました。
来年を、楽しみに待つことにいたしましょう。