晴れた。
ずっと曇り時々雨、
いや逆か、雨時々曇り、
ときには一日中降りやまずに嵐、
というようなオークランドだったから、
晴れたことがことのほかうれしい。
「去年は晴れたんだけどねえ」という声、
「だいたいクリスマスはいつもこう」という声、
「最悪でしょ?」という声、いろいろあったが、
基本的には発言者はみな屈託がなくて、
「まあしょうがないよね〜」というムードである。
「〜」の部分はぼくのオークランドの人々に対するイメージです。
われわれも、雨なら家にいましょう、
のんびりしよう、昼寝しちゃえ!
という気分でいたわけなんだけれど、
最後になって最終日は晴れるという予報を知り、
にわかに浮き足立った。
早起きして、島に行かない?
と、ここで、それでもなおかつ
家にいるのならばそうとうスタイリッシュだが、
なかなかそういうわけにはいかない。
さくっと朝食をすませてUberでフェリーターミナルへ行き、
ワイヘケ島への往復券を買った。
ワイヘケ島はオークランドから17キロ、
船で30分ほど、92平方キロの島である。
訪問の目的はまず「晴れたらちょっと遠出がしたいね」
ということだったんだけれど、
ほかの島を調べると、なかなかタフなアウトドアの島ばかり。
このグウタラなわれわれに本格的なトレッキングは無理だし、
カヤックなんかも興味がない。
だから「ワイナリーがある」という情報と、
大家さんの「気軽でいいわよ」というおすすめもあって、
このワイヘケ島を選んだのでした。
乗船、居眠りしていたら到着。途中の記憶なし。
着岸すると、曇りではあったけれど、
淡いターコイズブルーの海と
緑ゆたかで、なだらかな稜線がひろがっていた。
島内の交通は乗り降り自由の観光バスを使えばラクらしいが、
これがやけに高額、島料金というやつだ。
あとはレンタカー、台数の少ないタクシー、
レンタサイクルやレンタバイクなんかもあるが、
調べると、最寄りのワイナリーなら歩けなくはない。
地図を見るとそこからちいさな町までも歩けそうだし、
丘を下るとそこはすぐビーチだ。
ということでフェリーターミナル→ワイナリー→街
→ビーチ→町→フェリーターミナルと、
徒歩で行くことに決定。
歩こう歩こう。ゆっくり歩こう。
じっさい、たいへんだったのはワイナリーまでの道くらいで、
というのも、丘の上にあるのでずっと登り!
それでも30分くらいかな、
もうちょっとかかったかな、
道に迷うことなく進んだ。
道路はきちんと舗装されていて歩道があり、
レンタカーやレンタサイクルにびゅんびゅん追い抜かれつつ、
ワイナリーをめざす。
時々見える、海に面したいい感じの戸建て。
別荘かなあ? 素敵だなあ。
天気はほどよく、曇りがちだが雨の気配はない。
汗をじんわりかいたところで、
11時のオープン前に、ワイナリーに着いた。
ここはCable Bay Vineyardsという。
レストランや宿泊施設もあって、けっこう人気らしい。
受付で予約をしていない旨を伝えると
「大丈夫よ、13時15分前までならどうぞ」ということで
見晴らしのいい席をもらい、着席。
すると、空が明るくなってきた!
さて飲むぞ食うぞ。
ここ、オークランドではじめての外食だ。
そして明日には帰国するからおそらく最後の外食だ。
おいしいといいなあ。
なにはともあれ、ここのワイナリーのワイン。
おねえさんのおすすめを聞き、
白はWAIHEKE ISLAND VIOGNIER、 WAIHEKE ISLAND CHARDONNAY、
赤はWAIHEKE ISLAND SYRAH 、
WAIHEKE ISLAND FIVE HILLS MALBECをグラスで選ぶ。
ああ、うまい。こりゃうまい。
なんじゃこりゃ。すごいじゃないか。
「我(が)がない」というかなんというか「小難しくない」。
けれど「あんがい深い」、しかも「明るい」!
人生がこんなふうだったらいいなあ、という、
いまのお天気みたいな気持ちのよさだ。
こんな人がともだちだったらいいのにな、
という個性を持ったワインだった。
そして料理。これまた上等。
「おいしいって、こういうことだろー? なっ!」
と、ちゃーんとわかってる人がつくってる味、盛りつけ、量。
前菜の盛り合わせは木のボードにたっぷりのフムス、
それを中心として生ハムやチョリソ、タプナードやオリーブ、
野菜のスパイス&ビネガー炒めにローストハニーナッツ、
(たぶん山羊の)フレッシュチーズ、自家製のパン、などなど。
そりゃ生ハムはヨーロッパのラテンの国にはおよばない。
でもね、ちゃーんと、美味しいのです。無理してない。
それにチーズはびっくりした、ここでこんなに新鮮な
つくりたてが食べられるなんて。
さらにアスパラガスの炭火焼き。
ワインビネガーと塩を効かせて調味し、
フェタチーズとナッツをどっさりかけてある。
この組み合わせがワインに合うじゃないか。
フレンチフライもびっくり。
まぶしたハーブソルトの具合がよく、
さめてもカリッとしていた。
メインディッシュはとても入りそうにないのでパスして、
〆にピッツァ・マルゲリータ。
「ちょっと多いかな?」なんて言いながら
ぱくぱく食べちゃいました。
食べて飲んでしゃべっていたら
いつのまにか12時45分。ちょうどぴったり。
すごいんじゃない?
さて、ここでワインを買わないわけにはいかない。
さっき飲んだWAIHEKE ISLAND VIOGNIER(白)と WAIHEKE ISLAND SYRAH (赤)を1本ずつ、
それから前菜でとてもおいしかった、
自家製のオリーブオイルも1本。
ずっしり重くなったリュックを背負って、
町とビーチに向かって出発。
ワイナリーから町まではあんがい近かった。
というかほろ酔いでゴキゲンだったのでそう感じたのかな?
町はとても小さくて、でも必要最小限のものは揃う。
肉屋もスーパーもワイン屋も不動産屋もある。
別荘地の町としてはとても便利だと思う。
このあたりの素敵な戸建てはいくらくらいするんだろう、
こんないなかだったら安いかも?
という予想はみごとに外れ、
都内一等地で100平米超のマンションや
ちょっとした戸建てを買うのとかわりませんでした。
ひゃあ。
急な坂道を降りてビーチへ出る。
帰りがきつそうな坂道。
こぢんまりとした海岸線はとても静かで、
まだすずしいので海に入る人はいなかったけれど、
幾人かがのんびりピクニックをしていた。
べんとう持って来たら楽しいだろうなあ。
砂浜をちょっと歩いて町に戻り、ジェラートを食べ、
ワイン屋をひやかして(もう買わない)、
そのままフェリーターミナルまでぶらぶら歩く。
こんどは基本的に下り坂なので
リュックは重いけどらくちん。
ワイヘケ島とオークランドは
30分後に往復便が出ているので、
そんなに待たずに乗船、
またもやぐっすり眠りこけているうちに
オークランドに戻りました。
この日は12月26日、ボクシングデイ、
つまりはバーゲンセールの初日である。
「明日は街が人でいっぱいだよぉ〜」と
Uberの運転手が言っていたような気がするが、
じっさいどうかというと、そんなに人はいない。
いや、いるんだけれど、なにせ人口より羊が多い国である。
都会のオークランドとはいえ、そうだな、
人気の店のレジにはちょっと行列ができてるな、程度の混雑で、
にぎわっていると言えばにぎわっているし、
トーキョーと比べたらのんびりしたものだと思う。
ルルレモン(ヨガ&ランウェアのお店)をひやかし、
なぜかCOMME des GARÇONSが
たくさん置いてあるセレクトショップを覗き
(バーゲンだったけど日本よりずっと高い。当たり前か)、
同行者が気になっていたという女子のカジュアルウェアのお店を
何軒か見たけれど、なにも買うものはなかったでございます。
楽しかったけど。
近くに駅があるので、鉄道で帰ってみようか?
と思ったのだけれど、料金を調べたら、
3人分のチケットよりもUberのほうが安いじゃないか。
今回、いったい何回Uberを使っているのかわからないが、
このサービスがなかった時代は不便だったなあ。
UberとAirbnbで、ぼくの旅はずいぶん変わった。
さて、家には直行せずに、
スーパーマーケットでちょっとだけ食料と、
じぶんのお土産を買おうということに。
それも、いつも行っていたCountdownという
ひじょうに大衆的なスーパーマーケットではなく、
大家さんが食材を買っていると思われる
成城石井というか明治屋というか紀ノ国屋というか、
わりと高級食材のあるFarroという
スーパーマーケットがあることがわかり、そこに向かう。
知っていたら最初からここに来てたよ!
という品揃え。野菜もフルーツも新鮮だし
お肉も魚も豊富、ハムやチーズのセレクションもいい。
もちろん乾物もいい。たとえばパスタにしても、
パッケージが見るからにちがうものばかり。
スパイス類も豊富だしコーヒーや紅茶もいいものがある。
オリーブオイルやジャム、お菓子なんかもいい。
お酒の売り場は、キラキラと輝いて見えるほどだった。
ああくやしい、最初からわかっていたら!!!
でもしょうがない、下調べ不足だったんだよね。
(いつもろくに調べませんが。)
お土産にワイン(また赤と白を1本ずつ)、
スナックやコーヒーを購入、
自炊用には卵とパプリカとネクタリン。
くったくたではあったが、
家に戻ったらいい時間。
きょうが最後のディナーである、
買っておいた骨付きの豚肉をローストし、
いっしょにじゃがいもをオーブンで焼いて、
家庭菜園の葉っぱとライムでサラダをつくり、
それを大きなお皿に一緒盛りにした。
この盛り方は、あきらかに昼の前菜盛り合わせの影響である。
われながらすぐにマネする。節操がない。
そしてやっぱり自画自賛をするのだが、
最高においしいものができた。
ちょっと肉に火が入りすぎたけど
(ひとんちのオーブンは難しいな)、
シェアするのにもちょうどいい量でした。
パンやパスタは食べずにすんだ。
夜は、ひきつづき、次の目的地談義。
急に晴れて思ったのは、
やっぱりあたたかいほうがいいし、
雨の多いところじゃないほうがいいねということ。
候補に上がったアイスランドのレイキャビークは、ないかなー。
マヨルカかマルタ、
あるいは「寒いけど」あえてのブルックリン?
結論は出ないまま、就寝しました。