6時起床、朝食に、きのうひいた鶏の出汁に
細かく刻んだセロリ、にんじん、たまねぎ、トマトを入れて
ミネストローネをつくる。
スパゲッティは、ニンニクをカリカリに揚げて、
いったん取り出し、刻んだ生ハムとオイルで和えたもの。
バスクの粉とうがらし(辛くないです)と
粉にしたチーズをかけて。
あとは、出汁がらの鶏肉をほぐしてチキンサラダに。
たいへん上出来、おいしくできました。
あれ? 写真撮ってなかったよ。
きょうはビルバオで友人と合流して、
nerua(ネルア)というレストランで遅めのランチをとる。
昨晩、経由地のミュンヘンから
「無事にミュンヘンに到着ー。
ぐっすり寝て、もぐもぐ食べて、元気いっぱい。
ビルバオ便をまっております。」という嬉しい連絡。
待ってました、そうでなくっちゃ!
サンセバスティアン(ドノスティア)からビルバオは、
電車でも行けるけど、今回はバスを使うことに。
ヨーロッパの地方都市のバス網のすばらしさよ、
本数があり、切符が買いやすく、安くて、早くて、快適。
電車よりも好きかもしれない。
旅情という点では電車もいいものですけれど、
合理的なのはバスだと思うなあ。
往きはALSAというバス会社。
トイレもついていて安心。
窓ガラスはサングラス状態で、
カーテンなどの遮光なし。
きっと夏でもばっちりなんでしょうね。
鉄道と違って、より「地べた」感があるバスの移動。
バスクの、山あり海あり川ありの風景のなか、
けっこうなスピードを出してフリーウェイをゆく。
けっこう停車場の多い路線だったので、
いなかの鉄道駅前もあり、
ちょっとした住宅地あり、
観光では行かないようなベッドタウンあり、
冬ゆえにやや荒涼としたリゾート地ありで、なかなか楽しい。
バスが走る道の周辺はほとんど平地がないエリアで、
斜面では羊や牛を飼っていて、
急峻な丘の上にも家がぽつりぽつりとあったりする。
植生は日本とぜんぜん違うんだけれど、
「なんにもないところをゆく」のではなく、
「どこも何かに使われている」感じは、
わりと親しみがあります。
2時間ほどでビルバオのバスターミナルに到着。
以前来たことがあるので、土地勘はほんのすこしあるものの、
ほら、なにしろ方向音痴ですから、
グーグルマップのオフライン機能に頼りつつ歩く。
サンセバスティアンとは比べ物にならない大都会。
大‥‥でもないか。中都会。
待ち合わせ場所はグッゲンハイム美術館。
ビルバオが鉄工の街から芸術と観光の街に変貌した、
その起点となった美術館で、
このなかに目指すレストラン「nerua」があるのでした。
ぼくが外国でアパートを借りるのは
自炊がしたいからなんだけど、
最初は「ヨーロッパは外食が高いのをなんとかしたい」
というのがきっかけでした。
朝はホテルで決まったものを食べ、昼夜は外食、
部屋では買ってきた炭酸水やお茶程度。
せっかくのひとり旅、もうちょっと自由がほしかった。
朝は甘いパンだけじゃなく
好きなもの(しょっぱいもの)が食べたいし、
昼や夜も気兼ねなく食べたい。
レストランは好きだけれど、毎回だとつらい。
宿に、日本のように冷蔵庫だけでもあれば
ナイフを持っていってパンとチーズとハムを買いおき、
サンドイッチがつくれるのにな、と。
シンクがあればサラダもつくれる、
熱源があれば卵くらい焼ける、
と、そんな気分が高まって、伝手をたどったり
現地の不動産屋さんのサービスを使ったりして
キッチン付きホテルに泊まるようになったのでした。
いまはAirbnbがあるからすごく楽。
でもなにがなんでも自炊というわけじゃなく、
ほどほどに外食する自由もあるわけで、
今回のように、仲間の提案で、
知らなかった「ミシュラン星つき」で
「スペインのベストレストランに選ばれた」こともあるという
有名なレストランのランチを予約しておくこともあるのでした。
じつはもう1軒、予約しているところがあるんだけど
それはまたいずれ。
さて、nerua。とにかくシンプルな小皿料理だけらしい、
という程度の情報だけしかないままに行きましたが、
メニューを開いたら、こう。
コースは「7皿」「14皿」「21皿」から選ぶ。
アラカルトも少しあるけど、コースから選ぶほうが妥当みたい。
価格は110ユーロ、145ユーロ、175ユーロ。
小皿というから7じゃ足りなさそうだし
21じゃ多そうということで、
まんなかのコースにしました。
お酒は、カヴァの安いやつ。
上をみたらきりがなかったし、
ワインペアリング(料理に合わせてグラスで
おすすめを持ってきてくれるしくみ)もあったけど、
こちらのそういう仕組みだと、
ぼくにはトゥーマッチな量でべろべろになるので、
ここに泊まるならいいけれど、ここは旅先のさらに旅先、
2時間かけてバスで帰ることを考えてやめました。
地元だったら頼んでたなー。
あ、たった数日しかいないのに、
サンセバスティアンはホームで、
ビルバオはアウェイだと思っているみたい、自分。
さて料理の構成はこうでした。一気に行きます!
つまり‥‥「UMAMI」の世界です。
シンプルで少量ずつ、というところは、
最初「懐石料理かな」という印象があったんだけれど、
これでもかというUMAMIの連続、
さらに、心ならずも近づいてしまった
日本の屋台の味を思い出すにつれ
これは「うまい居酒屋」という印象に。
いや、価格は懐石なんですけれど。
うまいかどうかと訊かれたら、
うまいほうに傾きつつも、
「おもしろい」という感想のほうがいいかなあ。
こんなふうに出汁や旨味の文化が
西欧で評価されているということが面白い。
スパイスの役割を野菜の苦味で補ったりね。
それにしてもマグロの心臓は、
そのまんまぼくの故郷の味でした。
「かつおのへそ」(心臓)をしょうが、醤油、酒、砂糖で
甘辛く炊くのが祖母の十八番で、
その味を思い出しちゃった。おばあちゃーん!
2時から始めた遅いランチは、気がつけば5時。
そうそうに帰ることにする。
ビルバオでもうすこしのんびりしてもよかったんだけど、
2012年に長めに滞在したことがあるので、
「今回は、ま、いっか」というところ。
さよならビルバオ、さよならパピーちゃん。
街の中心でクリスマスのイベントがある気配だったけれど、
おそらくとっぷり暗くならないと始まらないだろう。
友人の泊まっていたHotel Carltonで
荷物をピックアップしてタクシーでバスターミナル。
PESAという、これも大手のバス会社運行に、
6時ちょうど発、1時間半でサンセバスティアンに着く
直行便があったのでその切符を買う。
バスターミナルで切符を買うのも、
英語の表示が出る自動券売機があるからかんたん。
チケットはレシートで、それを運転手さんに見せるだけ。
ネットで買うときは、わりとデザインされたQRコードつきの
デジタルチケットが届きます。
バスは6割ほどの乗車率。往きより混んでる。
クリスマス休暇を家族と過ごす帰省客かもしれない。
そんなことを考えながら暮れてゆく街道筋を見ていると
ほんのりと寂しくなる。
これ、これ! これですよ。
旅の途中で帰る場所は仮の宿。
仲間がいるからそんなに強い寂しさはないけど、
この旅、現地解散後の後半(バイヨンヌ)は独りなので、
またたっぷりこれが味わえるかもしれないです。
苦いコーヒーや強いお酒みたいな、そういう感じなのかな。
定刻どおりにサンセバスティアンに到着。
アパートの近くまでタクシーに乗り、
バルの多い通りを歩いて帰宅。
おなかがいっぱいだと言いながら、
ハムやサラミ、チーズ、セロリなどをつまんで赤ワイン。
そして、とめどなくおしゃべり。
23時頃就寝となりました。