雨。
ホテルの朝食をとるルーフテラスで子供が泣いていたので
あれはもしかしたら天候を支配する神のもとの天使で
彼が不機嫌な間は雨なのではないか‥‥と妄想。
でもまあ、傘がなくても歩けそうなくらいの雨。
小糠雨‥‥よりは強いかな。
なんていうんだろうね、こういう雨。
レインコート的なものや帽子もあるので大丈夫だろう。
バッフェの朝食はもう飽きた。すぐ飽きちゃう。
むこうも飽きさせないようにちょっと配置を替えたり、
内容を取り換えたりはしているんだけれど、
そうはいってもホテルの朝食ですね。
といいつつけっこう食べる。
明日は昼には出なければいけないので
きょうが事実上のローマ最終日。
といってもとくにやりたいこともないので
カメラを持って散歩に出る。
川を渡ったところにあるちいさな博物館に寄る。
さらにスペイン階段まで歩いてみたりする。
治安がよろしくないと悪評の高いあたりだけれど、
べつにあぶない雰囲気もない。
iPhoneを持っているとかっぱわれますよ、
という話もあったんだけど、
みんなiPhoneを片手に、
「自撮り棒」っていうのかな、
そんなものを使って遊んでいて、
かっぱらわれちゃうからあぶないですよ!
というようなムードでもないんだよなあ。
治安がよくなっているのか、たまたまなのか。
ぶらぶら歩いていたらだんだん雨が強くなってきた。
博物館でも行くかとテルミニ駅のほうに向かっていたら
メールが入って、お昼はホテルの近くでご一緒にという連絡。
20分後に集合というので、てくてく歩いて戻る。
方向音痴のはずなのだが、碁盤の目じゃないので大丈夫。
記憶を頼りに帰れます。
お昼はスパゲッティ。ぼくはミートボール。
ほんと、野菜不足になっちゃいますね。
おいしいけど。もぐもぐ。
仕事を終えた相沢さんが、
家族におみやげを買うというので、
ひやかしでついていくことにする。
またもやスペイン広場周辺。
ぼくはハイファッションは好きですが
ハイブランドにとんと詳しくないので、
こういう機会でもないとそういう店に入らないし、
そもそも目に入らないんだけれど、
そのつもりで歩くとこの周辺はほんとうにブランドの店がたくさんある。
ミラノでいうとスピガ通りみたいな。
しかし、ヨーロッパのハイブランドの世界はすごいですねえ。
「とんでもなくいいもの」であるのは間違いないのだが、
顧客が、先代、先々代、さらにその先、のような感じで
脈々と受け継がれているらしく、
つまりは「もとからお金のある人たちのもの」。
がんばって稼いで買うぞということはなさそうだ。
あまりにすごいからぼくも
「ついついほしくなる」ということもない。
安心して見ていられるうえ、ひとの買い物なので
「そりゃあこっちでしょう!」
とか勝手なアドバイスができたりして楽しい。
香水選び、楽しかったなあ。
ぼくは基本的に人へのおみやげを買わないんだけど、
(あれって餞別という習慣があったころのものじゃない?)
自分のおみやげはちょっと買う。
おみやげっていうか日常の続きとして
食材を買って帰ります。
ホテルの近所にあるコーラ・ディ・リエンツォ通りは
市民に愛されているショッピングストリートで、
ローマにもクリスマスムードが、というようなニュースでは
この通りのようすが映し出されるそう。
そんななかにあるふたつの食材店。
一件はローマで最高の食材店だそうで、
おいしそうなスパゲッティ、リングイネ、
オリーブオイルをみつくろう。
隣の肉とチーズの店では、ハードチーズを買う。
乳製品は持ち帰れますからね。
パルミジャーノ・レッジャーノ、
ペコリーノ・ロマーノ、
カチョカバッロ。
これでローマの味が再現できるぞ。
カチョカバッロは胡椒も大事なんだけど
「むかしのほうが美味しかった」と言うローマっ子もいるそうだ。
なぜかというと最近は北アフリカの香辛料ばかりが流通していて、
以前流通していた南アジア産に比べると、
辛いばかりで味わいに乏しいそう。
そうか! パリの安スーパーで買った黒胡椒が
やたらピリピリするばかりで、
いわゆる奥行きに乏しい感じがしたのは、そういうことだったのか、
と腑に落ちる。
さて夕飯。その前に、パンテオンを見たり、
ナヴォナ広場でアイスクリームを食べたりする。
広場からちょっと裏道にある
Casa Bleveという店に行く。
ここはカテゴリーで言うとエノテカ。
ワイン屋さんの食堂です。
以前は店の雰囲気もまさしくそんな感じだったらしいんだけれど
いまはきれいになって、リストランテ&エノテカ&ワインバー、
という表現をしているみたい。
とてもとても高い天井に、気持ちの良い間隔で席があって、
ファミリーで経営しているだけあって、もてなしが家庭的。
食べました食べました。
いずれもとてもていねいな料理ばかり。
繊細といっていい。
ズッキーニの花を生で食べたのは初めてです。
中にはリコッタとナッツが入ってました。
このお店、毎日、厨房のスタッフが
市場に買い付けに出かけているのだそうで、
(よくあるのは、契約しているところから届くスタイル)
そんなところからとても気を遣っているんだろうな。
地下にはワインカーブがあるというので、
せがんで、案内してもらった。
おそろしく古い壁がって
ちょうど地下1階のところが、古代ローマ時代の道路だそう。
ここをローマ人が歩いていたのかと思うと、
意識が急にドローンみたいになって、ぐいーっと俯瞰したかのように見えた。
大きな石の高さ分、前の文化を覆い、またそれを覆い、と、
幾段ぶんの年月で「いま」がある。それがちょうど1フロア分。
遺跡の上に街があるというけれど、
ここは巨大な墓地の上に
街があるといってもいいのかもしれないなあ。
以前は大理石の壁に閉ざされていたというこの古代の道と壁は、
大理石が略奪されたことであらわになったのだそう。
穿たれている穴は、あるものは大理石を固定するために
鉛をくさびのようにしていた穴。
その鉛も略奪されて穴だけが残った。
上のほうの穴は、石を運ぶための穴。
これ運んだんだよねえ。すごいなあ。
ヨーロッパに来て毎回感心するのが、
これだけの重たい材料で、あれほどの大建造物を組み立てた技術と、
おおぜいの名もなき人足たちのこと。
死者に敬意を表して献杯。
さて、このカーブ。
本数がすごいということではなく、
ワインの銀行のような機能があって、
どうやらかなり高貴なかたがたの
すさまじいワインを預かっているらしい。
それが誰かはわからないように、
「メディチ家のカーブ」とか
「ローマ人のカーブ」などと書かれている。
どんなワインがあるかまで聞きませんでしたが、
そうとうなものなんでしょうね。
ローマは「地下を使う」ことをあまりしないので、
この写真に写っている彼が来る前は、
そうとうぼろぼろだったんだって。
これはもったいない! と、ワインにひじょうに詳しい彼が、
4年ほどをかけてこつこつときれいにしたのが今。
これからここのカーブについての本を出す予定だそう。
プロセッコ、白、白、赤と、3人で4本を飲み干し、
したたかに酔っぱらったぼくは先にホテルへ。
ほかのふたりは2時半すぎまで飲んだそう。
タフ!
さて明日はもう出発。あっという間だなあ!