最終日である。
チェックアウトは11時。
それまでにいろいろ済ませなくてはならない。
まず朝食。
きのう買ったハラミをエシレで焼く。
冷蔵庫にあんまり使っていないマイユ(マスタード)の瓶。
これでソースを作ったら? というアイデアを取り入れて、
焼き終わったフライパンをそのまま使い、
たまねぎを赤ワインと胡椒で炒め、
マイユを溶かしてソースをつくる。
バターと肉汁も入っているわけなので、
こりゃまずいわけがないな。
サラダは残ったエンダイブに、
すももとブラッドオレンジを入れて、
オリーブオイルとバルサミコをまぜ、
パルジャミーノをすり下ろしてかけ、
最後に黒胡椒。これは友人の作。
とてもとてもきれいだ。
(チーズおろし、持ってきてよかった!)
そしてオムレツ。残りエシレをどかんと投入。
ここにも炒めたたまねぎを入れる。
そして同じフライパンに残った焦げたバターで
Blinis(ロシアのパンケーキ)をあたためる。
上出来。
今回あらためて、
フルーツを入れたサラダのおいしさに開眼しちゃった。
みずみずしい野菜だと思って使うとよいのです。
フルーツがすごく酸っぱければお酢がわりにもなるし、
なにより色がうつくしい。
これからも季節季節のフルーツでやってみよう。
食べ終わり、調理道具をパッキング、
キッチンまわりを片づけて、部屋の掃除。
それから使ったタオル類を洗濯して干す。
どのみちクリーニングが入るんだろうけれど、
日本人に貸してよかったなって思ってもらえたらうれしい。
部屋って面白いもので、短くても住んでいると
アパルトマンと住人が、ひとつのチームのようになる。
そしてこうして片づけを始めると、
だんだんと部屋は、ちょっとだけよそよそしく、
次の住人を迎えるための顔つきになる。
旅人は、来ては、滞在し、そして去ってゆく。
部屋は、ダンスパートナーを替えながら踊り続ける。
鍵をテーブルに置き、荷物を出して、ドアを閉める。
もう二度とこの部屋に入ることはできない。
Gare du Nord(北駅)までのタクシーを呼ぶのに、
話題のUBERを使ってみる。
スマートフォンのアプリを使って日本語で呼べる仕組みだ。
いま近くに何台の車がいるか地図上で表示されるし
車種(荷物が多いからヴァンだとか)も選べる。
いやはやびっくり、すごく使いやすい。
あらかじめクレジットカード情報を登録してあるので
下車時の支払いも不要。
もともとパリは迎車がかんたんではあるんだけれど
以前は電話のみだったのがネット時代になったものの、
フランス語ができないとね、というところがネックだったのが
これで一発解決されちゃった。
いろんな都市で同じように使えるサービスっていうのは
旅人にとってはとてもありがたいです。
部屋をとったAirBNBと同じ考え方だよね。
北駅のでっかいコインロッカーに荷物を預け、
あっ、しまった、iPhoneまで入れちゃった!
というマヌケをやらかしたものの、
まあ数時間の自由時間、なくても平気だろう。
ねんのためシャルル・ド・ゴール空港駅までの
切符を買っておく。
別に指定券とかではない。
この電車はふつうの都市ローカル線(RER B線)で、
トランクを持った旅行者と、地元の人(多くは黒人)が
ごちゃまぜになる路線。
トランクを乗せるスペースもないし、
すごく快適‥‥とは言いがたいので、
日本のガイドブックではあまりすすめておりません。
さて、時間までどこかぶらぶらしようと、
メトロのRichard-Lenoir駅で降り、
西に向かって歩いてMarais地区へ。
方向音痴ながら、なんとなく土地勘はある。
洋服を見たり本を買ったりお茶を飲んだりして、
なんてことない時間を過ごす。
そうだ、あそこに行こうと、
Miller et Bertauxへ。
フランス人の美意識をぎゅっと凝縮したようなブティック。
経営者のフランシスが店にいた!(パトリックは不在)
友人がオーデコロンを購入。
パトリックとフランシスがつくったこの香水、
ぼくも使っているんだけど、とてもいい香りです。
そしてぼくはぼくで、書店で写真集を購入。
ちょっと疲れたので(友人は軽い頭痛がするという)、
どこでもいいよねとスタバで水分補給をする。
パリでスタバなんて、という向きもあろうが
(最初の頃はそう思ってた)、
だんだんこちらも慣れてきていい加減になっている。
時間がなくなってきた。Hôtel de Ville駅から
Bastille乗り換えで、北駅へ。
荷物を出して、RER B線でシャルル・ド・ゴール。
やっぱりなんだかこの線は、
旅情というものに欠ける気がする。
ぼくの乗るANAの方が早いフライトなので、
JALを使う友人もいっしょにターミナル1で下車。
(JALはターミナル2なのです。)
ぼくの荷物預けと発券を済ませて、
構内のスタバで(またスタバかよ)
ドリップコーヒーを飲みながら精算。
そういえばドリップコーヒーって滞在中飲んでなかった。
あんがい、おいしい‥‥。
共同にしていた財布(カードですが)の精算をする。
大きな誤差なく、割り勘になっていたのでよかった。
それにしても今回は外食費が嵩んだ!
その意味でも、ちょっと特別な旅だったな。
今回を例外として、旅の続きは、
また自炊に戻るつもりだ。
出国手続きはスムーズ。行列もほとんどなかった。
搭乗口近くの売店でチーズを見つけ、衝動買い。
市内よりは高いけれど、日本よりはうんと安い。
しっかりビニール袋に入れてもらったはずなんだけど、
これが臭くてですね、機内でもちょっと‥‥。
(でも搭乗口で売ってるんだよ!)
さいわい、マイレージで広い席に乗ったので、
そんなに迷惑はかからなかったとは思うけど。
機内食、なかなか美味しい。
シートベルトをして、窓の外の雲を見ながら、
ぼくはぼんやり考える。
あの部屋を再び訪れることはあるのかな。
(ないだろうなあ‥‥。)
年末年始の旅は、どうしようか。
(そりゃ行くよね。)
旅先は? やっぱりパリなのかな?
(パリもいいよね。)
それとも、人がいないところに行くのもいいよね。
(フランスのいなかとか?
あるいは食材のおいしいヨーロッパのどこかとかね。)
東京に戻ったら、また相談しよう。