震災で高橋禎彦さんのグラスがずいぶん割れてしまった。
よく使う、気に入っているものを
食器棚のいちばん上の手前に並べていたのが災いした。
ドアが開いて最前列がぜんぶ飛び出しちゃって
床に放り出されて割れちゃったのです。
せんないことなんだけれど、
初めて買った高橋作品のコップも割れたし、
ワイン飲むのにいちばんよく使ってた万能型のグラスも割れちゃった。
いい陶磁器なら金継ぎもできようが、
ガラスは無理でございます。
引っ越してしばらく、片づけるとどこからか
ガラスの破片が出てきたりして、
あぶないあぶないと言いつつちょっとせつなかったなあ。
そんななか高橋さんに取材をする機会がやってきて、
思い切っていくつかまとめて入手することに。
割れちゃったグラスによく似た子たちとともに、
持っていなかったおおぶりの赤ワイングラスや、
シャンパングラスがわが家にきました。
うれしい。とてもうれしい。
ほんとうにこれで飲むと、ワインがうまいのです。
これからいらっしゃるのんべえの来客のみなさんは
「ほら、どうだ、うまいだろう、ちがうだろ。な、な?」
という私のうるさい台詞とともに
これで飲まされることになるはずです。
下戸のかたはガス水やアイスティーでも飲んでね。
氷のからんころんいう音も格別だよー。
ところで宙吹きのガラスは、見た目よりはずっと丈夫なんだけど、
やはり細い足、うすい口、扱いは慎重を期す。
形あるものはいつか壊れるとはいえ、
なるべく長くつきあいたいんで、
ルールはひとつ「飲んだら洗うな」です。
台所に洗い物がたまっている状態を許せないぼくですが
高橋作品だけは例外とします。