仕事仲間と、2年ぶりに、新宿御苑エリアにある
大好きな中国料理店へ。
前々から予約していたのでダイエットは休憩。
ここから独立した人が
ミシュランで★をとったそうで、
その、親分のお店です。
ここは上海の上流階級の
厨房でつくられていたものを再現したという、
たいへん品のいい中国料理。
料理長が幼い頃に食べていた味だそうで、
すべての料理が、上品で洗練されていて、
襟を正すような気品があり、
きっちりおいしくて、
しかも、とても個性的。
全体的にはあっさり系、と言えばいいのかなあ、
油や塩気は少なくて、素材の甘みが引き立つ感じ。
大好きというわりに2年も来なかったのは、
毎年1回上海蟹を食べようというときに思い出すので、
1回ミスると間があいちゃうんです。
ふだん積極的に中国料理店に入る人だったら
こういうことにはならないんだろうけど。
マダム、あいかわらず、りりしく、美しい。
年齢は存じ上げないけれど、
髪を引っ詰めにして、背筋をぴんと伸ばして、
ちょっとハスキーな声で、
とてもきれいなことばを話す。
いろいろあったんだろうなあと思わせる、
村上春樹さんが描きそうなキャラクター。
料理長はいっさい出てこずに
奥でもくもくと調理をしているみたい。
さてメニュー。
きょうは、皮蛋、辣白菜、春巻、海南鶏、
卵とトマトの炒め、
そして蒸した上海蟹を、雄雌二杯、分けて、
さらに上海蟹の炒飯、最後にねぎラーメン。
皮蛋、辣白菜、春巻、海南鶏、
前菜的なものですが、
いずれも、「えっ」と、
おしゃべりする口が止まる。
いままで食べたことのあるものと
姿は同じなのに、ちがうのです。
料理好きの仲間なので
「なんで? なんの香り?
どうすればこのやわらかさに?」と
追求しようとするんだけれど
いずれも推測の域を出ません。
ここんちでは、はじめて食べた海南鶏は、
シンガポールで最高とされているものよりも
ずっとおいしいじゃないか。
卵とトマトの炒めは、おそろしく強い火で
「窯」のような状態で加熱させて
独特の燻製香をつける調理法らしい。
字を忘れちゃったけど「ゴウ」というんだそうです。
上海の家庭料理とはいっても、
さすがに貴人の家の厨房から、だけに
こうした、マネできない調理法が多いみたい。
上海蟹。まってましたの上海蟹。
これがなくちゃの上海蟹。
いつも、一杯だけだったら
雄と雌、どちらにするかを考えると、答えがでません。
雌の、卵のあたりの魚卵系のおいしさと、
雄の、甲羅の裏のねっとりした味わいと、
どちらかひとつ選べと言われたら悶絶です。
いっそ、いらない! と言っちゃいそうですが
もちろんそんなことは言わず、半分ずつ、両方。
食べたあとでも、
「どっちをより好きと言うべきか」と
まだ悩んでたりするくらいおいしい。
どっちも好きなんだ。許してくれ。
両刀遣いの性豪のように
「どちらもじゃ」と言うしかないです。
上海蟹の炒飯。黄金色。
値段も黄金色なんですけど、
それはなかったことにして、
というか、食べはじめるとすっかり忘れて、
むはむはうまいうまいとたいらげる。
うまいとしか言えない。
はやりことばでいえば「ひどい」。
ちなみに今回は食べなかったけれど
上海蟹豆腐や上海蟹坦々麺もある。
さぞや、さぞや、‥‥さぞや。
デザートは、ライチのゼリー、杏仁ゼリー、
洋梨のコンポートをそれぞれ食べて、FIN。
ほんとうに、ごちそうさまでした。
料理長殿、マダム、どうもありがとうございました。
上海蟹の季節が終わると、鍋、そして、
「ほんとうのエビチリ」が始まるらしい。
「ほんとうのエビチリ」というのは
ケチャップとかを使わずに
エビの赤さで色付けするもので、
そのエビがなかなか手に入らないので
「入荷したらお知らせします」なのだそうだ。
ううむ、食べたいー! チャンスがめぐってきますように。