この季節に喪服は御免である。
ネクタイは暑過ぎるし
首が太くなってるからシャツが入りそうにないし
だいたいがスーツ着慣れてないうえに古くなっちゃったから
新しいの買わなきゃいけないじゃないか。
ほんとうに生きててよかった。
最高速にギアチェンジしたばかりの1600CCのバイクを
目の前によろよろっと急に車線変更で飛び出た車を
除けようとした瞬間転倒させ、
バイクは車の下敷きに、自分は放り出されて
ずずずずずずずずずずずっとスライディング、
肩から二の腕の皮がべろりとはがれて
肉がぐちゃぐちゃになっちゃった友人の見舞いに行ってきた。
両ひざも骨が見える寸前までめくれてたし
(包帯をかえるときに見せてもらった)、
あちこちが包帯と絆創膏で痛々しいったらない。
でもそう書くと満身創痍、息も絶え絶えみたいだけど
知らされた第一報が本人からの携帯メールだったのだから
(「事故ってワークアウトキャンセルしちゃった」って!)
大事には至らずに済んだということだ。
メール打つのもたいへんだと思うんだけど。
ヘルメットってすごいですね、顔にはかすり傷ひとつなかった。
不幸中の不幸は、真夏だからと
Tシャツと短パンだったということ。
たしかにいまバイク乗りの人を見てるとかなり軽装の人ばかりで
皮の上下を着てる人なんてまず見ない。
「まさか俺が事故なんて」という感じなんだろうなあ。
不幸中の幸いは、背負ったリュックとウエストポーチのおかげで
背中を強く打たずに済んだこと。
そして、国士舘柔道部から積年の脂肪蓄積生活を経て
最近トータルワークアウトに通い始めたばかりだったこと。
とっさの受け身と丈夫な骨と
残ってた脂肪と増え出した筋肉のおかげで
骨折やひどい打撲は免れたようだ。
ふつうの人なら肩と鎖骨とあばらくらい折ってるし
首だってやばいですよね。
ぼくだったら‥‥友人に喪服を着せていたかもしれない。
不幸中の幸いの最大は「死なずに済んだこと」だよなあ。
しかし入院しているのに明るい。
ま、病人じゃなくて怪我人だからな。
「肉がぐしゃぐしゃって?? うええええええ」と騒いだら
「こんなに鍛えてるのに案外まだ霜降りだった」
と言っていた。見たくない見たくない。
わんわん泣くほど痛かったそうだ。
そしてふつうそんな目に遭ったら
「もうバイクはやめるよ」と言いそうなものだけど
「もう半そでと短パンで乗るのはやめるよ」と言ってた。
枕元にバイク雑誌があった。タフなのかバカなのか。両方か。
風防が割れて事故の時間で止まってしまった愛用のexplorer、
保険でどうにかならないかと心配している場合ではない。
おれはあんたがしんぱいだ。
入院生活にひどく退屈していたので、
こんどゲームボーイアドバンスと
『MOTHER1+2』を持っていこうと思う。
最後までプレイしてわんわん泣くといい。
それにしてもこの季節に喪服は御免である。
ネクタイは暑過ぎるし
首が太くなってるからシャツが入りそうにないし
だいたいがスーツ着慣れてないうえに古くなっちゃったから
新しいの買わなきゃいけないじゃないか。
ほんとうに生きててよかった。