早起きしてパッキング。
昨日ざっくりやっておいたとはいえ
バスルームにこまごましたものが出しっ放しだし、
薬とか電源や充電器、調理道具もそのまま。
まずは食材を片付けなくちゃと、
サラダをつくり、太麺でカルボナーラ。
これがとてつもなく美味しくできた。
卵は4つあるけどカルボナーラには2つ。
うっかり白身をひとつ分入れちゃったので
(黄身を崩してしまったので分けられなかったのです)、
もっとどろりとさせたかったのが
ややサラサラになったけど、
ここまでできれば、たいしたものじゃない?
ローマ的ではなくミラノ的。
つまりグアンチャーレじゃなくてパンチェッタ、
ペコリーノじゃなくてパルミジャーノっていう意味です。
卵の残りはゆで卵に。
最後は立ったまま桃にかぶりつく。
苦しい。食べ過ぎだけどしょーがない。
さて今日は、ぼくだけじゃなく海苔屋のAさんも、
ローマのOさんも今日ミラノを出る。
お土産を買いに
チェントロに出ませんかと誘ってくださったので、
早めにチェックアウトをして
荷物を彼らの宿で預かってもらうことにして、
ドタバタと荷物を作って退出。
汗だく(ミラノ、連日30度!)。
チェックアウトの手続きはなく、鍵を置いて出るだけ。
でも待ち合わせに15分遅刻。すみません。
残った食材を在住のYさんに届ける。
地下鉄でドゥオモ駅へ。
まずは歩いて老舗のお菓子屋さん、Giovanni Galli。
今の季節はマロングラッセが名物。
買わずにつきあうだけ‥‥のつもりが、
あまりにも美しいフルーツのゼリーを見ていたら
むくむくと購買意欲が湧いて、
「こ、こ、これはあのかたに見せなくちゃ」
という気分になりお土産購入。
自分用にマロングラッセも。
ところでぼくは基本的に海外旅行で
人にお土産を買わない。
経済的に無理して来てた時は
そんなことに金を使いたくなかった。
そもそもそういうのって
餞別くれた人への返礼じゃね?
と理屈をつけてね。
今でもそう思うけど、年齢を重ねて
多少余裕ができて、
あげたい人の顔が浮かべば買うことにしております。
義理はいいよ、義理は。
ついでに言うと、
旅するものに言ってはいけないのは
「どこそこに行って!」と
「お土産買ってきて!」です。
それは自由を奪う呪いなんだよ。
自戒を込めて、ね。
Aさんが家族にお土産を買うというので、
モンテナポレオーネ通りに向かう。
途中 COVA のバルで休憩。
立ち飲みです。
レモネードのつもりがレモン果汁を頼んでしまいましたが、
炭酸水で割って美味しくいただきました。
モンテナポレオーネ通りでは、PRADA と Loro Piana へ。
ぼくが一度も買ったことのないハイブランド。
Aさんが PRADA で財布を買うあいだ、店内(メンズ専門のお店です)を見ていたら、
超絶かわいいアルファベットのキーホルダーを
今まさに展示しているところで、
新作だというじゃないの。
YとTある? あるじゃない。ください。
‥‥しまった、ミイラ取りがミイラに!
Loro Piana に向かう道すがら、
このブランドのファンであるAさんが
「タケイさんも買っちゃいなよ、
ここ、いいシャツがありますよ」
と、築地で海苔を売るみたいに
いい声で囁くものだからいけない。
Aさんが伯父さんに買って帰るのに
ずらり並べてもらったシャツを
選んでいるのを見ているうちに、
だんだんその気になって、
旅によさそうなストレッチ素材のシャツを
1枚、買ってしまいました!
自分で言うのも何だけど
前にルイジ・ボレッリでシャツをつくり、
イタリアのシャツのよさはわかっているつもり。
しかもぼくは長年の筋トレで胸が厚く、
イタリアのシャツは体型的に着やすい。
ほんのちょっと袖が長いので
1時間で直してくれるというのだが
その1時間がない。
さすがだなと思ったのは日本の直営店に
連絡をしておくのでお出かけくださいと。
さっき機上Wi-Fiでメールを受信、
六本木店にお直しに行くことになりました。
Loro Piana っておじさんしか着ないんじゃないのと思うけど、
ぼくがもうそのおじさんなのだよなあ。
会計していたら店内やたら騒がしい。
静かに上品に騒がしい。
なにかときいたら
「LVMHグループの総裁がお見えになっていて」
と。
ここは傘下じゃないはずだが。
さては、買う気か?
(追記 ↑これはぼくの思い違い。六本木店で訊いたら、傘下だそうです。)
さてさて、買い物も終わってロレートに戻り、
荷物をピックアップしてリナーテ空港へタクシーで。
さっき買ったブランド品の免税手続きをせねばならない。
預け入れ荷物に入れたので、
それを伝えてチェックイン。
荷物はまだ預けない。
ボーディングパスを受け取ったら
荷物を持って税関でスタンプをもらう‥‥のだが
書類にはスタンプ欄があるものの
今は電子化されているので登録だけしてもらう。
税関のおばちゃんが
「アネダ(羽田)ってトーキョー?
ナリタもあるけど違うの?」
と言うから、リナーテみたいなのがアネダで、
ナリタはマルペンサみたいなもんですと言ったら、
税関の別のおじさんが
「オレはイロシマ(広島)にトモダチがいるぞ!」
と、フェイスブックの写真をいっぱい見せてくれた。
「カナザワってイロシマか?
違うのか? そうか! イロシマじゃないんだな」
なんて言うものだから
つられておばちゃんがパソコンに向かって
「行き先がイロシマなの? アネダ?
トーキョーにはイロシマがあるの?」
と言い出す。
ちがいます! ぼくはアネダに行くのです!
アネダがトーキョーです!
「んもー」
とおばさん。するとおじさんが突然笑い出し、
「実はな、あいつは、オレの女房なんだ!
わーっはっはっは!」
おばさんも、
「そーなのよー! 二人で税関勤めなの!」
‥‥君らペー&パー子か!
てかミラノ税関、なんでこの配属なの。
やっと手続きが終わったので
今度はお金をもらいに両替所へ。
今度は若いお姉さんとお兄さんだったのだが
「今ちょっと手が放せないの。10分待って!」
と、しばし待たされる。
なにやらお札を数えたり、登録したりしている。
でも割と正確に10分待ったら呼んでくれて、
手続きをしくれました。
まあ手続き中、遊びに来た友達とずっと喋ってましたが。
いっそ、いいわー、ラクだわこのノリ。
まあ困るだろうけどね、住んでたら。
はたしてお金は何も訊かれず米ドルで戻ってきた。
近々行くからちょうどいいけど。
帰路はロンドンで乗り継ぎ。
最近ラウンジが二極化していて、
ファーストクラスや航空会社の
上級会員向けラウンジがいわゆる「これぞラウンジ」、
かつて「ラウンジ使えるんだよ」と
威張ってた感じのものがそれ(入ったことないけど)。
ではビジネスクラスやプレミアムエコノミーや
中級会員が使えるラウンジはどうかというと、
なんだか古いオフィスのようなのです。
青い光で薄暗くて、トイレはあるけどシャワーはない。
ああ、シャワー浴びて着替えたかった。
もちろん電源があり無料でごはんが食べられて、
他より安全というのは利点。
仕事をしたいビジネスマンにはとてもいい場所のはず。
でもね、なんだか、旅の高揚感ゼロ。
とうぜん同じ時間に出発する人ばかりが集まるので、
ターミナル駅で行き交う雑多な人を見るような雑踏感がない。
‥‥なんて言ってもせんないことではある。
その後、免税店でコロンを買ったら
会計の黒人のお姉さんに
「ちょっと! メンズばっかりじゃない。
なんでよ。女の子には買わないの? ねえ」
と言われた。
ふうむ、そういうこと言っちゃダメでしょ。
まだまだじゃのう、イギリス。
何か気の利いたことを言い返そうかと思ったけど、
そこまで英語が達者じゃないし、
まあいいやと「自分用だからね」と言いました。
「ふうん」とお姉さんはつまらなそうに頷いた。
JALで帰国。非常口席で足元ひろびろ。
iPhoneでこの文章を書いてます。
車輪を出す音が聞こえた。
もうすぐアネダに着く。
イロシマじゃないよ。
ということでみじかいミラノ日記はおしまい。
じつはまたすぐ出かけるのです。
こんどは半分仕事です。