「この仕事どうなっちゃうんだろう」
町内の革工房のご主人が不安そうに言う。
「このごろ、中国のかたやアメリカのかたが、
『現金を使うことは、ない』とおっしゃるんです。
日本に来てこんなにたくさんの現金を
久しぶりに見たよなんて言うかたもいます。
だからそのうち財布そのものが
要らなくなっちゃうんじゃないかと、
自分の仕事に不安をもっているんです」
革小物の店だけれど主力商品は財布だから、
そういう不安を感じるんだろうなあ。
このあいだのメルボルンの旅で
ほとんど現金を使う機会がなく、
デビットカード(銀行からすぐ引き落とされる)が
たいへん便利だった。
でも銀座の大きなデパートでは
「デビットカードは使えません」。
(問合せたら、VISAやMASTERCARDのマークがあれば
ほんとうは使えるそうです。
使えないのはJ-Debit。)
もとい、財布の話。
「金運のおまじない」的な要素もあることだし、
まだまだ日本では「財布」が使われるとは思う。
諸外国にいろんな意味で取り残されつつあるようだけど、
小銭を含めて現金を使うというところも残るんじゃないか。
「この時代に珍しいよな、
日本ではまだコインが使われているんだぜ!」
なんて言われる時代が来たりしてね。
ちなみにぼくが使っているのはこの店の折財布。
長方形をしていて、カードがたっぷり入るので
結果的にこんなふうに厚くなっちゃったけど、
これはこれで愛用している。
● ● ● ● ●
新宿に行ってメンズのファッションのお店で
顔なじみの店長に
どんな財布を使っているのか訊いてみたところ、
いつもポケットに入れているのは
うんとシンプルな平たいポーチ状のケースだった。
店を出入りするためのカードキーと、
交通系カード、最小限の現金が入っているそうだ。
昼は弁当だし、まず現金を使わないからそれでいいのだと。
店頭にいるときも、この財布をポケットに入れているそうだ。
仕事のある日は基本的にそうしているらしい。
ちなみに家には、カードとお札が入る長財布があり、
さらにポイントカードなどを仕舞うための
カードケースもあるという。
場合によって使い分けるという。
お店に来る人たちはどうかを訊ねてみたところ
いまは圧倒的に長財布の人が多いという。
「いまは男性も鞄を持ち歩くので、
昔スーツのジャケットの内ポケットに入れていたような
薄い細長い財布ではなく、
わりとしっかりしたタイプのかたも多いですよ」
そして、
「お札を折りたくない、
と思っていらっしゃるかたが多いような気がします。
長財布のほうが金運がよいとおっしゃるかたもいますよ」
なるほどなるほど。じゃあ小銭入れはそこについているのかな?
と訊くと、カード決済の多いお店なのであまり小銭のやりとりがなく、
一般的な傾向を分析できるだけのサンプルがないそうだ。
小銭入れつきの大ぶりな長財布なのかもしれないし
あるいは別に小銭入れだけを持っているのかもしれない。
これまでぼくが思っていた「ベストな財布」の条件は、
薄くてポケットに入る折財布であり、
札入れは2つスリットがあり(領収書などを分けたい)、
カードホルダーがしっかりしていることであり、
小銭入れの出し入れがしやすいことである。
でもそういう財布はあんまりない。
あってもすごく嵩張る。
それだけのものを入れたらそうなるに決まっている。
なのでちょっと考え方をかえて、
長財布を使ってみようかなと思いはじめた。
そしてふだんの「ちょっとした外出」に
それ専用の小さなものを使ってみようかなと。
ランチで2000円以上使うことはまずないのだし。
ちなみに古財布はどうしているかというと、
海外旅行用にしている。
出国時に「また来る気がする」国の通貨を
日本円に両替せずに持っていることにしているので
通貨ごとに財布がある。
たとえばZUCCAの長財布はヨーロッパ用。
チェココルナやユーロ、
パリのNaviGoという交通系カードやメトロのチケット、
プライオリティパスなんかが入っている。
別の財布には香港のオクトパスカードと香港ドル。
Mont Blancの折財布にはオーストラリアドルと
メルボルンの交通系カードを入れている。
アメリカにはしばらく行っていないので米ドル用はない。
● ● ● ● ●
あたらしい財布を買いたいと思いながら、
著名なスタイリストの女性と、
有名なライフスタイルマガジンの編集長に
お目にかかる機会があった。
ふたりの財布事情を訊いてみたところ、
びっくり、ふたりとも「うんと小さい」という。
カードケースくらいで、入っているのはカードと数枚のお札。
そのお札も三つ折りにするそうだ。
「小銭入れも兼用ですか?」と訊くとまたびっくり、
スタイリストの女性は「小銭‥‥使わないんですよ」。
釣り銭はもちろん出るので、
それは財布に入れて持ち帰って
家に帰ったら出してまとめておき、
貯まったら銀行へ持って行くのだそうだ。
仕事には小銭の入っていない
スッキリした財布を持って出ると。
編集長は「その日に出た小銭は、
帰路、すべてSUICAにチャージします。
一円玉はどうしても残っちゃうけど」。
ああ、ああ。
つまり彼らはきっと「小銭問題」をいちど考えて、
小銭を持ち歩かない暮らしかたを編み出したのだなあ。
「小銭は持ち歩くもの」ということが前提ではないのだ。
● ● ● ● ●
そして翌日ぼくは伊勢丹新宿店に向かった。
10時50分からの打ち合わせがあったので
開店する10時30分に行けば買う時間がある。
ぼくも小さな財布生活を始めるのだ。
‥‥と思ったらこの日は珍しい休業日。
しかたがないので花園神社でお参りをして
財布の小銭を賽銭にすることにした。
といっても190円くらいしか小銭はなかったのだけれど
これできょうから小銭なし生活へ!
‥‥という意気込みでmかしわ手をぱん、ぱーんと打った。
それでも待ち合わせまでにまだ20分あったので、
すこし先の安いコーヒーショップに入ったら、
そこは電子マネーもクレジットカードも使えなかった。
すっかりおつりの小銭が増えてしまいました。
小銭からは逃れられない人生なのかちら。
翌日あらためて伊勢丹に行き、
小銭入れという名前の小さな財布を買った。
名刺入れを厚くしたようなサイズで
ジッパーで開け閉めする。
いままで使っていたコードバンの折財布と併用しつつ、
なるべく身軽に行動したいと考えている。
目指せ手ぶら通勤!
町内の革工房のご主人が不安そうに言う。
「このごろ、中国のかたやアメリカのかたが、
『現金を使うことは、ない』とおっしゃるんです。
日本に来てこんなにたくさんの現金を
久しぶりに見たよなんて言うかたもいます。
だからそのうち財布そのものが
要らなくなっちゃうんじゃないかと、
自分の仕事に不安をもっているんです」
革小物の店だけれど主力商品は財布だから、
そういう不安を感じるんだろうなあ。
このあいだのメルボルンの旅で
ほとんど現金を使う機会がなく、
デビットカード(銀行からすぐ引き落とされる)が
たいへん便利だった。
でも銀座の大きなデパートでは
「デビットカードは使えません」。
(問合せたら、VISAやMASTERCARDのマークがあれば
ほんとうは使えるそうです。
使えないのはJ-Debit。)
もとい、財布の話。
「金運のおまじない」的な要素もあることだし、
まだまだ日本では「財布」が使われるとは思う。
諸外国にいろんな意味で取り残されつつあるようだけど、
小銭を含めて現金を使うというところも残るんじゃないか。
「この時代に珍しいよな、
日本ではまだコインが使われているんだぜ!」
なんて言われる時代が来たりしてね。
ちなみにぼくが使っているのはこの店の折財布。
長方形をしていて、カードがたっぷり入るので
結果的にこんなふうに厚くなっちゃったけど、
これはこれで愛用している。
● ● ● ● ●
新宿に行ってメンズのファッションのお店で
顔なじみの店長に
どんな財布を使っているのか訊いてみたところ、
いつもポケットに入れているのは
うんとシンプルな平たいポーチ状のケースだった。
店を出入りするためのカードキーと、
交通系カード、最小限の現金が入っているそうだ。
昼は弁当だし、まず現金を使わないからそれでいいのだと。
店頭にいるときも、この財布をポケットに入れているそうだ。
仕事のある日は基本的にそうしているらしい。
ちなみに家には、カードとお札が入る長財布があり、
さらにポイントカードなどを仕舞うための
カードケースもあるという。
場合によって使い分けるという。
お店に来る人たちはどうかを訊ねてみたところ
いまは圧倒的に長財布の人が多いという。
「いまは男性も鞄を持ち歩くので、
昔スーツのジャケットの内ポケットに入れていたような
薄い細長い財布ではなく、
わりとしっかりしたタイプのかたも多いですよ」
そして、
「お札を折りたくない、
と思っていらっしゃるかたが多いような気がします。
長財布のほうが金運がよいとおっしゃるかたもいますよ」
なるほどなるほど。じゃあ小銭入れはそこについているのかな?
と訊くと、カード決済の多いお店なのであまり小銭のやりとりがなく、
一般的な傾向を分析できるだけのサンプルがないそうだ。
小銭入れつきの大ぶりな長財布なのかもしれないし
あるいは別に小銭入れだけを持っているのかもしれない。
これまでぼくが思っていた「ベストな財布」の条件は、
薄くてポケットに入る折財布であり、
札入れは2つスリットがあり(領収書などを分けたい)、
カードホルダーがしっかりしていることであり、
小銭入れの出し入れがしやすいことである。
でもそういう財布はあんまりない。
あってもすごく嵩張る。
それだけのものを入れたらそうなるに決まっている。
なのでちょっと考え方をかえて、
長財布を使ってみようかなと思いはじめた。
そしてふだんの「ちょっとした外出」に
それ専用の小さなものを使ってみようかなと。
ランチで2000円以上使うことはまずないのだし。
ちなみに古財布はどうしているかというと、
海外旅行用にしている。
出国時に「また来る気がする」国の通貨を
日本円に両替せずに持っていることにしているので
通貨ごとに財布がある。
たとえばZUCCAの長財布はヨーロッパ用。
チェココルナやユーロ、
パリのNaviGoという交通系カードやメトロのチケット、
プライオリティパスなんかが入っている。
別の財布には香港のオクトパスカードと香港ドル。
Mont Blancの折財布にはオーストラリアドルと
メルボルンの交通系カードを入れている。
アメリカにはしばらく行っていないので米ドル用はない。
● ● ● ● ●
あたらしい財布を買いたいと思いながら、
著名なスタイリストの女性と、
有名なライフスタイルマガジンの編集長に
お目にかかる機会があった。
ふたりの財布事情を訊いてみたところ、
びっくり、ふたりとも「うんと小さい」という。
カードケースくらいで、入っているのはカードと数枚のお札。
そのお札も三つ折りにするそうだ。
「小銭入れも兼用ですか?」と訊くとまたびっくり、
スタイリストの女性は「小銭‥‥使わないんですよ」。
釣り銭はもちろん出るので、
それは財布に入れて持ち帰って
家に帰ったら出してまとめておき、
貯まったら銀行へ持って行くのだそうだ。
仕事には小銭の入っていない
スッキリした財布を持って出ると。
編集長は「その日に出た小銭は、
帰路、すべてSUICAにチャージします。
一円玉はどうしても残っちゃうけど」。
ああ、ああ。
つまり彼らはきっと「小銭問題」をいちど考えて、
小銭を持ち歩かない暮らしかたを編み出したのだなあ。
「小銭は持ち歩くもの」ということが前提ではないのだ。
● ● ● ● ●
そして翌日ぼくは伊勢丹新宿店に向かった。
10時50分からの打ち合わせがあったので
開店する10時30分に行けば買う時間がある。
ぼくも小さな財布生活を始めるのだ。
‥‥と思ったらこの日は珍しい休業日。
しかたがないので花園神社でお参りをして
財布の小銭を賽銭にすることにした。
といっても190円くらいしか小銭はなかったのだけれど
これできょうから小銭なし生活へ!
‥‥という意気込みでmかしわ手をぱん、ぱーんと打った。
それでも待ち合わせまでにまだ20分あったので、
すこし先の安いコーヒーショップに入ったら、
そこは電子マネーもクレジットカードも使えなかった。
すっかりおつりの小銭が増えてしまいました。
小銭からは逃れられない人生なのかちら。
翌日あらためて伊勢丹に行き、
小銭入れという名前の小さな財布を買った。
名刺入れを厚くしたようなサイズで
ジッパーで開け閉めする。
いままで使っていたコードバンの折財布と併用しつつ、
なるべく身軽に行動したいと考えている。
目指せ手ぶら通勤!