旅行から戻ってきたらドラム式の洗濯乾燥機が壊れていた。
洗濯はできるが、乾燥がまるでできないのだ。
年末なのに弱ったなあと思いつつ、
旅に持っていった衣類を洗って、部屋干しをした。
部屋干しをする作業も、部屋に洗濯物があることも
べつにかまわないんだけれど、
綿が「ごわごわ」になってしまうのがイヤだ。
買ったのが2010年だから、もう8年目になるが、
買い替えるよりも修理だろうと、
ウェブサイトから修理依頼をしてみたが、
最速で1月5日の訪問修理だと表示される。
そりゃそうだよな、年末年始だもの。
それでも仕方がない、と申し込みをしたら、
すぐに電話がかかってきた。
お困りでしょう、
31日に修理のあきがありますから、
お伺いしましょうか。
いやはやびっくりした。
パナソニック、ここまで気配りができるとは。
これはまさしく「親切にしていただいた」んですよね。
そして大晦日の夕方に修理完了。
送風ダクトの故障(部品交換)と、
フィルター清掃もしてもらった。
これで仕事納めですかとたずねると、
いえ、まだいくつかありますよ、と。
頭が下る。
快適な洗濯が戻ってきた。
1回のスイッチで洗濯から乾燥までを完璧に行う。
異状を報せるアラームも鳴らず、
ドアを開けると生乾きということもなく、
ふわっとかりっと仕上がる。
洗濯乾燥機なのだから当たり前なのだが、
本格的に壊れて修理をするまで、
しばらくの間(たぶん昨年1年間)ほとんどそんな調子だった。
そのストレスは、意識していなかったけれど、
そうとうなものだったと、まともに動くようになってわかる。
本格的に壊れるのを待たずに修理をお願いするべきだった。
でも「ほんとに壊れました」と、
洗濯乾燥機じしんがアラートするまで放っておいたのだった。
そういう機能がついているのは便利だとは思うが、
もっと早く気づくべきだったし、修理をすべきだった。
まるで人間の病気のようではないか。
この一件でパナソニックに対する信頼が上がったのだが、
もともとぼくはパナソニックというかナショナルが苦手であった。
なぜなら実家の町内(三軒隣)にあった
ナショナル特約店である電器屋の婆さんが、
いつもうちに上がり込んで昼飯を食っていたからである。
土曜日に学校から帰ると
「あら、よっちゃんおかえり」と
その婆さんに言われるのがたまらなくイヤだった。
父はその店のことを「ラジオ屋」と呼んでいて、
「ラジオ屋の婆さん、まだいるのか」
「まだいるよ」
「じゃあオレは(食卓に)行かない」
と言っていたので、やっぱりかなり迷惑だったんだと思う。
父や母に訊くと、どうやら土曜日だけのことではないらしい。
祖母の友人なので仕方がないのだが、それにしても入り浸りすぎだ。
そもそも貧乏な和菓子屋で
切り詰めなくてはならない家計において、
毎日にように昼飯を食われてはかなわない。
ぼくもせめて飯は遠慮しろと子供心に思っていたが、
商店街ではそんなふうに他人の家に上がり込むことは
わりと当たり前なのだったのかもしれない。
といってもほかの店のひとはそれなりに忙しく、
入り浸るなんてことはなかったのだが、
うちの祖母も、ラジオ屋の婆さんも、引退した身である。
ヒマだったのだろう。
どうにもならない壁のように
ぼくの人生に立ちふさがるその「大前提」が、
ああ、ほんとにイヤだった。
そのせいだ、ナショナル(パナソニック)が苦手になったのは。
「坊主憎けりゃ」の袈裟状態だが、子供の心にはけっこうすり込まれ、
一人暮らしをするようになって家電を買う必要があるときは
まずナショナルを外し、オーディオはパナソニックを選ばなかった。
ところがいま住んでいるこの部屋は、大家さんが電器まわりを
ナショナルで統一しているので(住宅もつくってますもんね)、
ナショナル/パナソニックだらけである。まあ仕方がないと思う。
でもなぜ自分の自由になる洗濯機がパナソニック製なのかというと、
単純に、前の部屋で買った時に
入るサイズがそれしかなかったからだ。
しかしながらこんなふうに修理のことで
ここまでよくしてもらうと、
嫌いにはなれない。
嫌っていたのはあの婆さんであり、
商店街の古い習慣である。
ナショナルにもパナソニックにも罪はない。
明るいナショナルみんなのナショナル、は、
好きな三木鶏郎さんの曲でもあることだし、
松下幸之助氏が立派な人だともわかってるし、
PHPはいい出版社だと思う。
正月を迎え、ぶらぶら街を歩き、
大型家電店に行ってみたのだが、
国内の家電メーカーで、デザインと企画でがんばっているのは
あきらかにパナソニックだった。
あたらしいドラム式洗濯乾燥機のデザインときたら!
乾燥容量が小さいのが玉に瑕だけどね。
洗濯10キロだったら、乾燥6キロはほしいところだけど、
ヒートポンプが入っていないというのは、
デザインとのかねあいが難しかったんでしょうね。
このデザインで容量が増えるといいな。
ますますがんばってください。
そういえば調理家電で
「ロティサリーグリル&スモーク」を出したのにも驚いた。
これはかなり欲しい。
すでにガスオーブンがあり、トースターもあり、
電気オーブンレンジもあるので、うちには不要なのだけれど、
肉をくるくる回すというところが、
アマチュア調理人の心をくすぐるじゃないですか。
ところで修理中、埃が出るだろうからと修理のかたに
ダイソンのコードレス掃除機を使ってもらったら、
その性能に驚いて、
「これすごいですね! うちもこういうのを出せばいいのになあ」
と、しみじみ言っていた。
ほんとうに自社と、家電が好きなんだろうなあ。