‥‥ということで目が覚めました。
ここはパリ。空港だけどパリ。
しかしあまりに寒い。頭痛。
帰る日に頭痛! 痛恨。
なんとかせにゃ、というので
まずお湯をわかして葛根湯倍量。
そして熱い風呂。
さすが高級ホテル、湯船があるのです。
2週間ぶりだ〜。お風呂〜。
(シャワーは浴びてますよ!)
平たい浴槽にがんばって首まで浸かると、
肩から首、頭の血流がよくなっていくのを実感。
頭痛は拍動性ではないので、たぶん大丈夫。
湯冷めしないようにちゃんと着てからごはん。
きのうの朝つくったサンドイッチと、
きのう買っておいたコンビニ的サラダと
オレンジジュースと水。
つめたいけど身体があったかいうちに食べよう。
コンビニ的サラダは、コンビニ的というよりも
機内食的な味がしました。
バスクにいたときは、
その土地のものばっかり食べていたわけで、
サンドイッチひとつとっても
「いま焼いたパン」と「ここでできたハム」と
「ここでつくったチーズ」に「ここで固めたバター」で
できているわけです。
うまい、まずい、というよりも
「そういうもの」なのだと思う。
「人は三里四方のものを食べてるのがいい」というけど、
東京に住んでいると、そして現代は、
物流の発展と豊富な物量のおかげで
「三里四方を、そのまま持ってきました」
ということが可能。
日本各地はもとより海外の食材も入ってくる。
そのほうが安いからというも理由もあるし
「わざわざ取り寄せました」という価値もある。
ほんとうに都会ではいろんなものが手に入る。
探せばバスクのチーズだってあるはずだし
そういえばぼくは通販でフランス直送のバターを買ったこともある。
そんなズルができているのがぼくの日常だ。
大都会はそういうところがあるけれど
それでもヨーロッパの都会は他国と地続きなうえ
「わりと近くに農村や漁村がある」ので、
あんがい「三里四方」に近い暮らしもできている気がする。
そしてそれを選ぶのは、
田舎では当たり前のことであっても、
都会ではやっぱりお金がかかる生活だ。
安価でしかもラクなのは、大量生産品や冷凍食品。
まったくもってありがたいことだし、
現代の都市生活というのは
「そういうものだ」と思ういっぽうで、
せめて「三里四方的」というか、
隣村の田吾作さんじゃないけど、
どこのだれがつくったものかわかることが
大事になってきていて、
それがトレーサビリティというやつなんだろうなあ。
でもほんとうはバスクのちいさな町のように、
そこにあるものをそこにある分だけ食べるというのが
きっといいのだと思う。
バイヨンヌは野あり山あり、8キロほど先に海もありで、
まさしくそういう場所だったのだなあ。
ドノスティア/サンセバスティアンも
すぐそこが海だから、もっと、そう。
そしてそのことが、観光客を呼んでいるわけだ。
この2週間、ぼくはほんとうに健康でした。
パリに着いた途端にくしゃみ連発で、
しかも頭痛になったのには、
やっぱり訳があるんだろうと思う。
(暮れまで、大気汚染が深刻で、乗用車を使わないよう、
公共交通機関がしばらく無料になったようですね。)
それでもパリは大好きですけれど。
さてそのパリですが、
ランチで市内に出るくらいの時間はある。
チェックアウトして荷物を預けて出かける。
肉を食べましょうと、友人夫妻と、
さらにそのお友達の4人で約束をしていたのです。
彼女が予約してくれたのは、14区のLE SEVERO。
わーい!
地下に食肉庫をつくり、
ドライエイジングを自家でやっている
ステーキのお店です。ぼくは2度目。
じつはここの肉の焼き方をネットで研究してマネした結果、
ぼくの十八番みたいになった
「牛の赤身の揚げ焼き」ができたのでした。
空港からRERのB線に乗り
(10ユーロもするよ! 高いなあ)、
Denfert-Rochereau駅まで。
あいかわらず、寂しい印象の電車。
空港と市内を結ぶんだから、
もうちょっと華やかでワクワクする感じにすればいいのにね。
メトロの4号線に乗り換えて南へ1駅、
Mouton-Duvernetで降りてちょっと歩く。
このへんはうろうろしたことがあるので土地勘があります。
いいビオのワインの店La Cave des Papillesや
ユーゴさんの肉屋もある。
北に行けばモンパルナスで、
雰囲気は地味で庶民的だけど、
生活するにはいい場所だと思う。
時間とトランクに余裕があれば
ワインを何本か買いたいんだけど、
今回はあきらめます。
さて、LE SEVEROでは、
あたたかい前菜、そしていままで食べたなかで
ここのがいちばんだと思っているブーダン・ノワール
Boudin noir de Christian PARRA, salade verte、
それからアンドゥイエ(腸詰めの腸の冷製)。
Andouille de Guéménée、
メインにタルタルステーキ
Steak tartare, frites ou haricots vertsと、
ドライエイジングのステーキ
Côte de Bœuf 2 personnes Dry Aged, frites、
これをシェアしました。
やっぱりおいしい。とってもおいしい。
肉、食べたーっ! という感じがする。
感じじゃないよね、ほんとにそうだよね。
デザートの素朴さも、雰囲気に合っている。
たっぷり食べてすこし飲んで(赤ワインをカラフェで)、
まんぷくの腹をさすっていたら
店主のWilliam Bernetさんが
「日本にもうちの店ができたんだよ。知ってた?」と。
ええっ! ユーゴさんに続いて、LE SEVEROも?!
しかも自分たちで出したもよう。
William Bernetさんに学んだ日本人シェフの柳瀬さんというかたが
Le Severo Japonという会社を立ち上げて
店をつくったのだそうです。
おおお。そのうち行ってみたいなー。
友人たちと途中までメトロで移動、そして別れる。
なんだか気軽すぎて拍子抜けするくらい。
明日また会えそうなくらい、かろやかでした。
何度も行くうちに、パリと東京の距離感が
どんどんなくなっているように思います。
もっと気軽に来ようっと。
気軽には来れないけどさ。
小一時間、余裕があったので
ぼくはレ・アールLES HALLESで降りて、
あたらしくなった駅舎というか、
大ショッピングセンターをぶらぶら。
でも結局FNAC(フランスのヨドバシみたいな)に行き、
ここには本もたくさんあるので、料理本を見る。
ちょっと来ない間に(1年来てなかった)
好きなシェフの料理本がまた出てる。
ユーゴ・デノワイエとクリスティアン・エシュベストが
どちらも参加している「牛の本」って!!
買いかけたけどものすごく重いのと、
それを買うならこちらも‥‥と、
次々とほしい本が見つかったので、
呪文を唱える。呪文はふたつ。
「Amazonでも買える、Amazonでも買える」と、
「また来ればいい、また来ればいい」です。
ということでこの文章は機上で書いています。
24時間使えるWi-Fiが18.80ユーロと、
ほんとうにずいぶん安くなりました。
機上でまでつながっちゃったらたいへんじゃん、
という意見もあるけど、ぼくは賛成。
行きなら調べ事ができるし、
帰りにはブログが更新できます。
まあ、ロシア上空ではぶちぶち切れるから
使い物になるかというとまだ疑問ではあるけれど。
今回──、バスクのスペイン側とフランス側を歩いて、
どっちがおすすめかと訊かれたら、
やっぱり両方行ったらいいよと言うだろうなあ。
中長期滞在(アパートを借りて自炊)なら
スペイン側がいいと思います。
でも短期だったら両方ちょっとずつ、
ピンチョスのようにつまむのがいいと思う。
滞在はサンセバスティアンにして、
そこからバスであちこち行ってもいいし。
スペイン語も、このあたりの方言(なのかな?)は
とてもやわらかくて、爆裂音がないし、巻き舌も聞こえてこない。
フランス側も、いなかゆえかな、
わりとゆっくり喋るみたいだし、
英語を喋る若い人は多い。
市内のバスではおじさんもおばさんもちょっと若者も
「ありがとう、またね」と言って降りるのにびっくり。
「またね」はAu revoir(オー・ホヴォワ)を使ってた。
「さよなら」なんだけど
日本語の「さよなら」だと意味が強すぎる。
スペインにおける「Ciao」、
英語の「See you」に似た軽さがあるから
「またね」くらいかな。
ちなみにフランス語の別れの挨拶には
「サリュ」「アデュ」もありますね。
「サリュ」のほうが軽く友達っぽい感じ、
「アデュ」は強い「さようなら」。スペインでは「アディオス」。
ということで、Au revoir, Basque et Paris. Ciao!
またね。