うちには20年ちかく使っている
エスプレッソマシンがある。
電動の調理器具でここまで使っているものはほかにない。
もちろんイタリア人じゃないから毎日ってわけじゃないけど
(緑茶も紅茶も好きなので)、
それでもけっこう使ってるほうだと思う。
コーヒーは、フレンチプレスが5割、
エスプレッソマシンが4割、
あとはパーコレーターを、たまに、という感じ。
エスプレッソは牛乳と合わせればカフェラテになるし、
氷でアイスコーヒーにもなるし、
アイスクリームにかけてもおいしいし、
薄めれば(アメリカーノですね)
ふつうのコーヒーみたいにもなって、
まあ、アメリカーノとフレンチプレス、
どっちが好きかと言われたら、
そりゃフレンチプレスではあるんだけれど、
便利でごみも少ないからちょくちょく淹れてた。
先日置き場所をちょっと変えてみたときに、
すこし変な音がして、お湯が漏れてきた。
お湯が漏れるということは、
コーヒーを抽出するほうに力が回ってないってことだから、
エスプレッソの味もおちる。
(圧力が大事なのです。)
このまま使えないことはないけど、
修理ができるものならぜひしたい。
感電でもしたら、コトだし。
購入先のチェリーテラスのHPを見てみると、
(だいぶ前に見たときすでにそうだったけど)
そのマシンの取り扱いはない。
そうだよな、なにせ20年近くも前なのだ。
イタリアのイリー社が
スペインのマジック社とつくった機械だというのが
当時の売りだったと記憶している。
調べてみるとマジック社はいまもひっそりと(でもないか)
同型のエスプレッソマシンを作りつづけていることが
こんなHPでわかったけれど、
どうやら日本にはもう輸入しているところはないみたいで、
やっぱりチェリーテラスに相談するのが
いちばんよさそうだった。
これを書いていて思い出したけど、
「エスプレッソマシンをいつか買うぞ!」
と思ったのはNYで、だった。
中華街からリトル・イタリーをぶらぶらしてたとき、
調理系のよろずやみたいな店に飾ってあった
家庭用のエスプレッソマシンがとてもかっこよくて、
いいなあいいなあ、ああいうのいいなあと
まさしく垂涎したのだった。
そのとき一緒だったのがブーツ(増田くん)で、
大学院に行くことが決まったので、
卒業旅行に誘ってくれたんだった。
ぼくは留年が決まってたので留年旅行だった。
建設現場のバイトをしてお金を貯めて行った貧乏旅行だったから
当然エスプレッソマシンなんて買えるわけがない。
前々から欲しかったわけでもなく、
衝動的な物欲ではあったのだけれど、
そのことはずっと覚えていて、
社会人になってすこししてから
「いいエスプレッソマシンがある!」と
ブーツが教えてくれたのが、
チェリーテラスの、この、マジック社のマシンだった。
たしかブーツが先に買って、
高いけどすごくいいって勧めてくれたんだった。
イリー社が開発したポッドが使えるし、
気圧がすごく高いから
きゅっとおいしいコーヒーが入るんだと言ってた。
ブーツは大腸癌を患って手術してから
コーヒー禁止になっちゃって、
でもとにかくくよくよしない人なので、
「飲めないんだよー」と明るく言っていた。
思えば手術することを報せに東京に来たとき、
話をしたのは、当時増え始めたスターバックスだった。
癌だって聞かされて、ぽろぽろ泣いてしまったのは僕だ。
「先に死ぬなよぉ」って泣いた。馬鹿だ。
でもブーツは明るく「泣いてくれてありがとう」と言った。
そして十数年後、晩年には、
「制限はないんだよ。なんでも大丈夫」
ということでコーヒーも飲んでいたなあ。
それがなにを意味するのか、すぐにわかったので、
ぼくはつらかった。おいしいけどつらかった。
最後に見舞いに行った時、療養中の自宅のベッドのそばで
奥さんが香り高いコーヒーを淹れてくれたっけ。
あのコーヒーはおいしかったなあ。
病床の匂いとまじったコーヒーの香りは、
ぼくには忘れようのない思い出だ。
まあそんなわけなので、このマシンは、
捨てるわけにはいかないものなんである。
壊れても捨てないと思うけど、
できれば現役で活躍していてほしい。
だから多少の出費は覚悟していた。
チェリーテラスがだめだったら
こういう専門業者にたのもうと、調べてもあった。
さてチェリーテラスのHPの問い合わせ先に
故障の具合を書いてメールを送信すると
すぐに電話がかかってきた。
落ち着いた、ていねいな声のおじいさん
(のように思えた)は、
おそらく修理可能だと思う、
まずは現物をお送りください、
そのうえで点検し見積りを出します、と言ってくれた。
翌日宅配便発送、翌々日にまた電話。
修理可能だという。そして、価格を聞いておどろいた。
びっくりするほど安かったのだ。
「あの、安すぎませんか」と聞いてしまった。
一桁違うんじゃないかと思ったのである。
でもそれで大丈夫だと言う。
そうして1週間後のきょう、
修理に出したエスプレッソマシンがもどってきた。
・給水側パッキン取り替え
・抽出調整用スプリング弁取り替え
・ボイラ用パッキン取り替え
・ボイラー内部清掃およびオーバーホール
・電気部センサー調整取りつけ
・電気部点検
・電源スイッチランプ補助取り付け
スイッチランプは、交換できる規格の電球がなかったということで、
あらたに穴を開けてとりつけてくれたほどだ。
(もちろん電話で事前に相談があった。)
いやはや、びっくりした。
こんなにていねいに、
ここまでやってもらえるなんて。
しかも、ぼくが磨いたよりもずっとていねいに
あちこちを掃除してくれたあとがあった。
さっそく電源を入れて、エスプレッソを淹れて、
アイスカフェラテにして飲んだ。
うまかった。
やっぱりこのマシンはすごい。
ポッドだから、ほぼ安定した味なんだけど、
ちょっとした加減で味が変わっちゃうところも好きだ。
調理というのはそういうものだから。
そういえばともだちにネスプレッソを勧められたとき、
まったく気乗りがしなかったのだけれど、
それは、あの機械があまりにも
均一化された味をつくる印象があるからだ。
ランニングコストの高さもどうかと思う。
(ネスプレッソ10カプセルで、
イリーのポッドは18個買える。
一杯あたり、ネスプレッソは80円、
イリーのポッドは45円である。
また、ポッドは各社から出ているので、
味の多彩さには負けてない。
そして面倒をいとわなければ、
自分で粉から淹れることもできるという
たのしみもついてくるし。)
それに、なんていうか、あれは儀式性に欠ける。
コーヒー淹れるのに儀式性が必要かと言われると困るが、
ぼくはわりとそういうことが好きである。
これはもう支持政党の違いみたいなもんだと思ってください。
安定した味を望み、時間短縮に価値を見いだすタイプは
ネスプレッソのほうがいいと思います。
エスプレッソマシンがある。
電動の調理器具でここまで使っているものはほかにない。
もちろんイタリア人じゃないから毎日ってわけじゃないけど
(緑茶も紅茶も好きなので)、
それでもけっこう使ってるほうだと思う。
コーヒーは、フレンチプレスが5割、
エスプレッソマシンが4割、
あとはパーコレーターを、たまに、という感じ。
エスプレッソは牛乳と合わせればカフェラテになるし、
氷でアイスコーヒーにもなるし、
アイスクリームにかけてもおいしいし、
薄めれば(アメリカーノですね)
ふつうのコーヒーみたいにもなって、
まあ、アメリカーノとフレンチプレス、
どっちが好きかと言われたら、
そりゃフレンチプレスではあるんだけれど、
便利でごみも少ないからちょくちょく淹れてた。
先日置き場所をちょっと変えてみたときに、
すこし変な音がして、お湯が漏れてきた。
お湯が漏れるということは、
コーヒーを抽出するほうに力が回ってないってことだから、
エスプレッソの味もおちる。
(圧力が大事なのです。)
このまま使えないことはないけど、
修理ができるものならぜひしたい。
感電でもしたら、コトだし。
購入先のチェリーテラスのHPを見てみると、
(だいぶ前に見たときすでにそうだったけど)
そのマシンの取り扱いはない。
そうだよな、なにせ20年近くも前なのだ。
イタリアのイリー社が
スペインのマジック社とつくった機械だというのが
当時の売りだったと記憶している。
調べてみるとマジック社はいまもひっそりと(でもないか)
同型のエスプレッソマシンを作りつづけていることが
こんなHPでわかったけれど、
どうやら日本にはもう輸入しているところはないみたいで、
やっぱりチェリーテラスに相談するのが
いちばんよさそうだった。
これを書いていて思い出したけど、
「エスプレッソマシンをいつか買うぞ!」
と思ったのはNYで、だった。
中華街からリトル・イタリーをぶらぶらしてたとき、
調理系のよろずやみたいな店に飾ってあった
家庭用のエスプレッソマシンがとてもかっこよくて、
いいなあいいなあ、ああいうのいいなあと
まさしく垂涎したのだった。
そのとき一緒だったのがブーツ(増田くん)で、
大学院に行くことが決まったので、
卒業旅行に誘ってくれたんだった。
ぼくは留年が決まってたので留年旅行だった。
建設現場のバイトをしてお金を貯めて行った貧乏旅行だったから
当然エスプレッソマシンなんて買えるわけがない。
前々から欲しかったわけでもなく、
衝動的な物欲ではあったのだけれど、
そのことはずっと覚えていて、
社会人になってすこししてから
「いいエスプレッソマシンがある!」と
ブーツが教えてくれたのが、
チェリーテラスの、この、マジック社のマシンだった。
たしかブーツが先に買って、
高いけどすごくいいって勧めてくれたんだった。
イリー社が開発したポッドが使えるし、
気圧がすごく高いから
きゅっとおいしいコーヒーが入るんだと言ってた。
ブーツは大腸癌を患って手術してから
コーヒー禁止になっちゃって、
でもとにかくくよくよしない人なので、
「飲めないんだよー」と明るく言っていた。
思えば手術することを報せに東京に来たとき、
話をしたのは、当時増え始めたスターバックスだった。
癌だって聞かされて、ぽろぽろ泣いてしまったのは僕だ。
「先に死ぬなよぉ」って泣いた。馬鹿だ。
でもブーツは明るく「泣いてくれてありがとう」と言った。
そして十数年後、晩年には、
「制限はないんだよ。なんでも大丈夫」
ということでコーヒーも飲んでいたなあ。
それがなにを意味するのか、すぐにわかったので、
ぼくはつらかった。おいしいけどつらかった。
最後に見舞いに行った時、療養中の自宅のベッドのそばで
奥さんが香り高いコーヒーを淹れてくれたっけ。
あのコーヒーはおいしかったなあ。
病床の匂いとまじったコーヒーの香りは、
ぼくには忘れようのない思い出だ。
まあそんなわけなので、このマシンは、
捨てるわけにはいかないものなんである。
壊れても捨てないと思うけど、
できれば現役で活躍していてほしい。
だから多少の出費は覚悟していた。
チェリーテラスがだめだったら
こういう専門業者にたのもうと、調べてもあった。
さてチェリーテラスのHPの問い合わせ先に
故障の具合を書いてメールを送信すると
すぐに電話がかかってきた。
落ち着いた、ていねいな声のおじいさん
(のように思えた)は、
おそらく修理可能だと思う、
まずは現物をお送りください、
そのうえで点検し見積りを出します、と言ってくれた。
翌日宅配便発送、翌々日にまた電話。
修理可能だという。そして、価格を聞いておどろいた。
びっくりするほど安かったのだ。
「あの、安すぎませんか」と聞いてしまった。
一桁違うんじゃないかと思ったのである。
でもそれで大丈夫だと言う。
そうして1週間後のきょう、
修理に出したエスプレッソマシンがもどってきた。
・給水側パッキン取り替え
・抽出調整用スプリング弁取り替え
・ボイラ用パッキン取り替え
・ボイラー内部清掃およびオーバーホール
・電気部センサー調整取りつけ
・電気部点検
・電源スイッチランプ補助取り付け
スイッチランプは、交換できる規格の電球がなかったということで、
あらたに穴を開けてとりつけてくれたほどだ。
(もちろん電話で事前に相談があった。)
いやはや、びっくりした。
こんなにていねいに、
ここまでやってもらえるなんて。
しかも、ぼくが磨いたよりもずっとていねいに
あちこちを掃除してくれたあとがあった。
さっそく電源を入れて、エスプレッソを淹れて、
アイスカフェラテにして飲んだ。
うまかった。
やっぱりこのマシンはすごい。
ポッドだから、ほぼ安定した味なんだけど、
ちょっとした加減で味が変わっちゃうところも好きだ。
調理というのはそういうものだから。
そういえばともだちにネスプレッソを勧められたとき、
まったく気乗りがしなかったのだけれど、
それは、あの機械があまりにも
均一化された味をつくる印象があるからだ。
ランニングコストの高さもどうかと思う。
(ネスプレッソ10カプセルで、
イリーのポッドは18個買える。
一杯あたり、ネスプレッソは80円、
イリーのポッドは45円である。
また、ポッドは各社から出ているので、
味の多彩さには負けてない。
そして面倒をいとわなければ、
自分で粉から淹れることもできるという
たのしみもついてくるし。)
それに、なんていうか、あれは儀式性に欠ける。
コーヒー淹れるのに儀式性が必要かと言われると困るが、
ぼくはわりとそういうことが好きである。
これはもう支持政党の違いみたいなもんだと思ってください。
安定した味を望み、時間短縮に価値を見いだすタイプは
ネスプレッソのほうがいいと思います。