写真展終了。

ムーンライダーズを知ったのは１９８２年５月５日、
場所は品川プリンスホテルのゴールドホールだった。
そのイベントは糸井さんの主催するもので、
じつは目的は教授とあっこちゃんとキヨシローとチャボの
スペシャルバンドだったんだけれど
（い・け・な・い　ルージュマジックが流行ってたときだ）、
ぼくはヘンテコな格好をしてヘンテコな楽器を演奏する
ムーンライダーズにすっかりぶちのめされてしまい、
静岡に戻ってすぐに「すみや」に行って
そのとき出ていたいちばん新しいアルバムを買った。
ライブで聴いた音楽とはまったく違う音楽だったけど
それはそれでとても面白くて
（１枚ごとにコンセプトを変えるバンドだとは知らなかった）
すっかりファンとなった僕は、
それからどっぷりムーンライダーズを聴きつづけている。

イベントにつきあってくれたのは
中学のときの塾で知りあったともだちで、
増田直己くんという。
高校は違ったけど（僕が受験に失敗した）
大学も仕事先ももちろん別々だったけど
ぼくらはずっと付かず離れず仲良しだった。
ずっと、ずっと。
大学で美術史を専攻したのも、
カメラが趣味になったのも、
たぶん増田くんの影響だ。
３０歳をすぎて編集制作の会社を辞めて
フリーになったときに
「ほぼ日っていうのができたよ」
って教えてくれたのも増田くんだった。
なんだかずいぶん人生の方向指示器となり
ぼくを導いてくれたような気がする。
気がする、じゃないな。実際そうだった。
といっても、なんていうんだろうな、
にこにこ笑いながら「こういうのも、あるよ」とだけ、
ぼくの目の前にぽんと置いていく、というような感じだ。
それがまさにドンピシャで、
ぼくはそれをすかさずつかんでその方向に進んできた。
そんなことが、いくつもあった３０年だった。
きっといま思い出せないようなことも
とてもとてもいっぱいあったのだと思う。
ぼくから教えてあげられたのは、なんだろう、
ワハハ本舗くらいかな？

その増田くんがなくなったのがことしの５月７日のことだ。
そっかあ。
ちょうどあれから３０年だったんだね。

きょう、『ムーンライダーズ写真展』が終わった。
撤収に行って、写真が外されて、元通りになった壁を見ていたら、
うっかり泣きそうになった。

きみがいなかったら、これはなかった。

そのことが急にずしんと、
湿気を含んだ強風みたいにやってきて
ぼくはなんだか立っていられない感じになっちゃった。

見せたかったなあ。
けっこう写真うまくなったんだよー。
しかもムーンライダーズだよー？！
おーい。