すっかり暗くなって
打ち合わせから直帰しようと時計を見たら
夕飯のおかずを買うのにぴったりの時間。
目の前には閉店間際の店。
ほくほくと入ったら、刺身の最後の3パックが
まとめて1000円だよと言われ、
もちろん買います買います。
ついでに鶏肉とトウモロコシと豆腐を買って帰ってきた。
夕飯はなるべく炭水化物を抜きたいので、
刺身と、のみかけの白ワインと、あとはモロヘイヤを茹でて、
それで済ますぞと、いちどは思った。いちどは。
しかし刺身。ごはんが食べたい。
なにしろ本まぐろも3切れだけだけど入ってる。
それにごはんは今朝炊いたのがある(焦げてるけど)。
結局刺身と大盛りごはんとモロヘイヤ、
そしてゆで立てのトウモロコシまで食べてしまった。
ああ。
そんなぼくだけど、
いまもったいないのでちびちびと味わっているものがある。
それは村上春樹さんの最新エッセイ『サラダ好きのライオン』です。
週刊誌連載(アンアン)を集めた本なので一篇がみじかくて、
内容はじつに軽くて(ほめてます)、
なによりもハルキさんの文章は高校生のときから読み慣れている。
地元の井戸水みたいにぐびぐび読めちゃって、
爪の先までしみわたるかんじがする。
‥‥が、それがもったいない。
1日1篇、というわけにはいかないけど、
夢中になってついつい読みすぎていると気付き
「いかんいかん」とページを閉じて、
「続きはまたのおたのしみ」と本を置く。
でもこれが「きょうはここまでにしときましょうか」と
クルボアジェにキャップをするみたいな紳士的で粋な行為というよりは、
食べかけのチュッパチャップスを
「ここまでにしようかな、続きは明日‥‥」と
口から出してラップに包んでおくみたいなコドモっぽい印象なんですよね。
だったら最後までいっちゃえよ、みたいな。
あ、いや、ハルキさんのエッセイを途中から読む行為は、
むしろブランデー的なんですけれどね。
中断するその感じがどうもね。
ともあれ本は閉じられる。
再び開けばそこに素敵な世界があることが確信できるというのは
じつに幸せなことではないか、と、言い聞かせつつ。
これが本じゃなくて
「箸」でもできればもうちょっと痩せるよなあ。
なかなかなあ。