志の輔らくごin PARCO、
チケットを入手して行ってきました。
1か月にわたる、全24公演だというのに、
ほっんと手に入らないのです。
そりゃそうだ、一度行ったらまた行きたくなるんだものな。
志の輔さんの事務所「オフィスほたるいか」の自主公演に行ったら
アンケートに名前を書いておくと
どうやら先行予約用のDMがもらえるらしく、
ほとんどそれでいっぱいになっちゃうみたいで、
e+なんかに出るチケットはほんのわずか。
発売数秒で完売、みたいなことになるのです。
ぼくはその自主公演に行くチャンスがなかなかなくて
譲ってもらったチケットで行った時に
こんどはアンケート書きわすれたりして。
まぁとにかく、入手困難なわけで、
その理由はただひとつ「面白いから」です。
凄い、深い、上手い、演出がすごい、
いろんな意味で志の輔さんの落語は面白い。
ということで前置きが長くなりましたが志の輔らくごin PARCO、
今回は「身代りポン太」そして
「踊るファックス2010」という、
新作(志の輔さんのオリジナル)、
これは軽妙洒脱な現代もので、
どっかんどっかん笑いが起きる。
「身代りポン太」は地方政治の予算凍結問題をからめた
いちおう時事ものなんだけど、
皮肉たっぷりに頭のいい感じ、ではなくて、
細部の「どーしょーもない」エピソードを重ねていくことで
聴いてるこちらが「しょーがねぇなー」と、
その、なんだ、政治というものが行き詰まっている現状を
しみじみ感じて志の輔さんと共有するという、
そういう仕掛けになっているわけでございますね。
「踊るファックス2010」は
男に振られた女から、死んでやるというファクスが
年末、セールのチラシの文案で唸っている
薬屋の主人の家に間違って届くというところから始まる
どったんばったんのホームコメディ、商店街もの。
人情ものというにはずいぶんブラックなところもあって
密室だけのお楽しみという感じもあって痛快。
最後はなかなかすごい演出があって、そこで休憩に入る。
この2席でマクラをふくめ1時間半くらい。
例年は、新作ひとつに、古典の軽めのものひとつ、
そして古典の「大ネタ」を一席というパターンだったので
ことしの、現代もの2席というのはどういう意味だろう、
そうか、このあとさぞやすごい大ネタが!
来ました期待以上の「中村仲蔵」!
江戸時代、歌舞伎の家柄出身ではないのに
稲荷町→中通り→相中→名題とあった役者格付け
(落語の前座→二つ目→真打ち→大看板、のようなもの)で
その天才的な演技演出で名題にまでなった初代中村仲蔵の噺。
と、いまぼくが上に書いたような「基礎知識」を、
志の輔さんはていねいに、軽めに、でも丁寧に、上手に、
噺に織り交ぜてくれる。
「ガッテンしましたか」なんて言いながら聞かせてくれる。
熱心に聴きすぎてぼーっとしてくると「聴いてますかー」なんて
こっちに突っ込んでくれたりして、
非常にリラックスさせつつ、どんどん噺に引き込んでいく。
背中が座席から浮く。
笑わせながら深く感動させてくれ、
そして落語らしいサゲにもっていくのだけれど、
「えっ、もう終わっちゃうの? もっと聞かせて!」
という気分であとで時計を見たら
たっぷり1時間以上やっていたんですね。
時間、まったく感じなかった!
ああおもしろかった。
ところで熱演中の静かな劇場空間で
シャリシャリとアメの袋をあけて口に放り込み
それが歯に当たってかこーんと響かせるようなおばさんは
ぜひ次回は御遠慮いただきたい。
でもぼくの腹がなるのは勘弁してください。