ちょっと早いんだけれど、
身内だけで一周忌の法要をするからいらしてくださいね、
と、やさしい声のゴリちゃんママから連絡をいただき、
荻窪のゴリちゃんの実家をたずねてきました。
平服でいらしてね、それから、何もお持ちにならないでね。
はい、じゃあ、もう、オシャレして行きます。
ということでコム デ ギャルソンの夏らしいブルーの上下に
ジュンヤさんのデニムトートバッグ。
いちおう靴は黒。
‥‥結果、いちばん派手でした。
「もう、武井さん、浮いてますよ〜?」と、
本人に言われそうな気がしておかしい。
おうちの仏壇の前で、ゴリちゃん一族(パパ、ママ、
初対面だけどひとめでわかったお兄さんとお姉さん、
叔母上さまとだんなさまたち、いとこのみなさんたち)、
そして、「幼稚園からいっしょ」というような、
近所に住むおささなじみのめんめん。
‥‥ほんとに身内じゃないですか。
こんな場に、呼んでくださって、ほんとうにありがとうございます。
「ていうか、なんで武井さんがいるんすか!」と、
これまた本人に言われそうな気がしておかしい。
小一時間ほどで読経がおわり、荻窪駅前の東信閣という
りっぱな中華料理店へ。
地元を愛する人が暮らす古い町にはかならずある、
「親戚があつまるときには、
なにかっていうとこの店」みたいな、
ちゃんとしたお店。
愛されてきた年月を感じる。
そして、ていねいにつくられた、
昔ながらの中華料理。
ちょっと紅いチャーシューとか、
太くてぷりぷりのクラゲとか、
いろんな材料の入った海鮮炒めとか、
夏らしい冬瓜の甘酢やフカヒレスープ、
ぷりぷりに太ったエビチリ、
チャーハンもマンゴープリンも、
ぜんぶおいしかったです。
おささなじみの男子たちと、
ゴリちゃんのお兄さんに従兄弟のテーブル、
ゴリちゃんママと叔母上さまと
従姉妹たちとおさななじみ女子のテーブル、
ゴリちゃんのパパと、
もうひとりの叔母上さまとだんなさま、
ゴリちゃんのお姉さんと婿どののテーブルに、ぼく。
‥‥いいんですか、こんな場所に。しかも上手です。
「いいのよ、身内みたいなものじゃないですか」とお兄さん、
「武井さんは、ふしぎなひとだ!」と笑いながらお父さん。
たしかに、ここにいるのはふしぎなんだけど、
でも、ほんとうにありがとうございます。
この場にいられて、ほんとうに嬉しいです。
こうして書いていると涙が出ます。
それぞれのテーブルは、それぞれの思い出話で盛り上がっている。
きっとみんなの知ってるゴリちゃんが合わさっているんだと思う。
みんながどんどん、ゴリちゃんをもっと好きになっていくのがわかる。
照れつつもまんざらでもない顔をするにちがいない
本人がそこにいるような気がする。
円テーブルの向かいに座っていらした叔母さまは
もしかしたらゴリちゃんがよく話してた
「だいすきなみどりおばちゃん」じゃないですか?
(ゴリちゃん、おかあさんのふたりの妹である
“おばちゃん”たちがとても好きで
久しぶりに会うと、どんなに楽しかったか
よく話してくれてました)
きいてみたら、そうでした。
その「だいすきなみどりおばちゃん」、
ほんとうにたのしいかたで、話題がものすごく抱負、
反応が的確、そしてやさしくきびしくよく笑う。
ああ、そりゃ、ゴリちゃん、好きに決まってる。
ぼくも大好きになりました。
「ていうか、なーんでみどりおばちゃんと武井さんが
仲良くしゃべってんすか?!」
と本人に言われそうで、おかしくって、涙が出る。
隣がゴリちゃんパパ。
紹興酒で御機嫌になりながら、
ぽつり、ぽつりと、話す。
明るいけれど、この1年が、どれだけ辛かったか、
痛いほど、伝わってくる。
それは、ぼくには、想像しかできない辛さで、
きっと、想像できないほど、深いものなんだと思う。
別の道(仕事)を選んでいたら
この運命は避けられたのだろうか。
ふしぎな、大きな魅力のある子だったから、
生きてきたら、とんでもない活躍をするか、
どん底へ行くか、ふたつにひとつだったような気がする、
親が生きているうちはぜったいに守ろうと思っていた。
そんな話。
なにも言えない。ただ、頷くしかない。ぼくは。
でも、ぼくも、守ろうと思っていましたよ。
なーんか、あぶなっかしいところがあったから、
ゴリちゃんって。
でも、守りきれなかった。
そして、1年、経っちゃった。
これから先も、どうなんだろう、と考える。
自分は、誰かを守ることなんてできるのかなぁ。
ほんとに、わかんないけど、
せいいっぱい、まっすぐに、生きていこうと思う。
こうして文字にしちゃうと軽いけど。
武井さん、雲雀(ひばり)を知っていますか。
雲雀はね、太陽に向かってまっすぐ高く飛んでいってしまう。
帰ってくることを待つけれど、
帰ってこないときには、どこに行ったか、
わからないままなんです。
あいつは、雲雀なのかもしれないね。
そうゴリちゃんパパが、酔っぱらって、つぶやいた。
形式的には一周忌を済ませたら喪が明ける。
ゴリちゃんの命日は8月30日、
「もう喪が明けてるってことで!」と、
その日はひとりで静かに乾杯でもしようと思います。
いま、これを書きながらかかってる音楽は
Captain HATE and The Seasick Sailors。
すばらしくって泣ける。
そういえばゴリちゃんとライブ行ったなぁ。