センチメンタル過ぎるかもしれないけど、
1年前を思い出して、食事に行く。
あのときの同行者はこの世になく、
でも、料理は、あのときと同じように、おいしい。
とても、とても、おいしい。
最初に「今日はどのくらいお召し上がりになりますか」
と訊かれ、「そんな、あんな、伝説は、もう」と答える。
この店での大食い記録保持者ではあるものの、
さすがにそんなに食べません、今日は。
去年の今日は、ちょっと異常でしたからね。
「え‥‥毎回伝説なんですけど」
そ、そうですか?
それは、ほんとに大事な日に行くので、
気合いが違うんですよ、常連さんとは!
でもその日のことは、くっきりと、
どういうわけか店のみんなも覚えているという。
いまは別の店を持った当時の副料理長もそう言うし、
スズキさんも、もうそんなに経つんですねと話す。
「こーんな(ゴリラのポーズ)体型でしたから、
もう、たっぷり出させていただきました」と。
そうですよ、「こーんな」やつでした。
いっぱい食べました。
人生でいちばん美味しい料理だったと言ってました。
人生でいちばん。
ほんとになっちゃったねぇ。
でももっといろんな「人生でいちばん」を
更新していきたかったねぇ。
そんなこと考えてもしょうがないじゃないか、
というようなことばかりを、考える。
考えながら、蛸、鯵、アワビ、ウズラ、フォアグラ、
穴子、ウニ、コチ、常陸牛と、たくさん食べる。
夏の終りの味がする。
もうすぐ命日。