「きちんとしたジャケットやスーツには、
簡単に手を出せないという気持ちがあって」
と、2001-2002秋冬のパリ・メンズコレクションで
メンズウェア「JUNYA WATANABE MAN」を立ち上げ
シャツとパンツを中心とした展開で打って出た渡辺淳弥氏は
雑誌のインタビューでそう答えている。
そしてワークウエアやスポーツウエアなど
機能にすぐれた素材や縫製技術をもった
長い歴史のあるメーカーと組んで
たくさんのコラボレーションや、再構築を行い
(いま出ている春夏ものは、
ジャケットの最終的な仕上げを
テーラーに任せるという方法で
ものすごい値段がついている)、
それはいずれも、そのほうが、
質の高いものがつくれるからで、
コラボレーションによってブランド価値を高めようということは
たぶん、ほとんど考えていなかったのではないかと思う。
たぶんね。
もしかしたらブランド価値を下げることにもなりかねないし
高まっても低く見られても、結果論でしかない。
それよりも、すぐれた相手と組んで、
その技術や素材を自分のものにしたい、
という、モノづくりの視点が徹底しているのではないかと。
そして今回のパリ・2008-2009秋冬メンズコレクション。
全モデルがネクタイと革靴と帽子を着用、
さまざまなジャケットが登場して、
春夏に続いて、いよいよ男の労働服の新しい解釈に
本格的に向かった、という印象。
基本はワークウエアで、デニムやチノとあわせたり、
裾をロールアップしたり、
スタジアムジャンパーをジャケットに仕立てたり、
そういった遊びをしながら、
世界観としては巴里のアメリカ人というか、
カレッジやトラッドのインテリ風味と
土ぼこりや肉体労働のブルーカラー風味が
とてもいいバランスで入っていて、
‥‥つまりはぼく好み。
惜しむらくは、どうもシルエットが細みなんじゃないかということ。
「自分でも着られるもの」と
デビューのときに答えていたはずなんだけどなあ。
「自分で試着してますから大丈夫ですよ」
と、前にお話しする機会があったときおっしゃってたけど、
胸囲1メートルでも、着られるように、
よろしくおねがいします渡辺さん。