久しぶりの友人に会うので、
これまたとっておきのビストロに。
きのう食べ過ぎた‥‥ので、きょうは昼を抜きましたよ。
そしたら夕方フラフラになっちゃって、
骨董通りを六本木方向に向かう8時前には
なんだか胃まできゅううううっと痛いような気になってきた。
食べれば治るんでいいんだけど。
バレンタインの夜のその店は
しゃらくさい恋人達でいっぱい‥‥かと思いきや、
普段通りに「がっつり食べるぞな肉食の人たち」のみ。
たいへん感じがよい。よいよい。
しかもそんなに混んでなかった。
ロマンチックな恋人達はこんなところに来ないのかもね。
望むところですよ。
相棒は酒を飲まないので、
そういうときは僕も飲まない。
自分で思ってることをちゃんと言葉にするのは
難しいんだけど、
ひとりで酔っぱらうことよりも、
楽しくごはんを食べるほうがずっと大事だと
たぶん思ってるんだろう。
で、まずはバドワ。
ビストロですからバドワ。
がぶがぶ飲むのでもちろん大瓶。
何も言わずに出てくる、クミンの効いたオリーブ。
前菜は田舎風パテと、マッシュルームのサラダを頼む。
あ、バゲットにつけたいので、エシレをお願いします。
ここの田舎風パテは、ぼくには東京一。
ほかはあまり知らないせいかもしれないけど、そうとう好き。
マッシュルームのサラダは、かなり酢が効いている。
ここの料理はなんでもハッキリしていて、そこがいい。
ねっとりしたパテと、きりっとしたマッシュルーム、
そしてやっぱりちゃんと酸っぱいピクルスに、
これまたはっきりした味付けの菜っ葉のサラダ。
この前菜2種は、珍しく最初から盛り合わせで出してくれた。
このビストロは、一皿をシェアしたいというと
いつもは「勝手にどうぞ」という感じでもう一枚皿をくれる。
こうして取り分けてくれるのは珍しい。
そういえばフランス人って取り分けない‥‥気がする。
味見くらいはさせるのかもしれないけど、
基本的にひとり一皿を食べてる気がする。
ぼくは「はんぶんこ」が好きなので
できれば最初から分けてもらいたいんだけど、
取り分け皿がなかったり、同時に2皿来たときは、
半分まで食べて皿を交換する。
もちろん相手によりますけど、
きょうの相棒とはほぼ100%そうである。
食べるスピードが同じなのでなにも困らない。
続いてメインを2品。
まずは豚の耳のパン粉焼き。
どんなものが出てくるのかと思ったら、
ほんとに片耳がぺろーんと、
パン粉をまぶして焼かれてきた。
どう見ても耳。皮をはいだ耳。
ナイフを入れるとさくっと切れるけど、
口にいれると「ねっとり」と、あごが張り付くような食感。
ちょっとだけ、鼻をくすぐる、爽やか系のスパイス。
なんだろう? ほんのすこしシナモンにも似たような。
‥‥んまい。ねとねとと食べる。
そして、リー・ド・ヴォーと砂肝を、
ガチョウの咽喉に詰めて焼いた「つめもの」。
ちょっとアンドゥイエットみたいな感じの料理。
ふうむ、バスクでは、こうですか。
一見したところ、田舎っぽいソーセージが、
きめのこまかい、雪のようなマッシュポテトの上に
でろん、と横たわっている。
ナイフを入れると、ほろほろっと崩れるので、
マッシュポテトをからめて食べる。
これまた初めての食感。ちょっとコンビーフのような
繊維っぽい肉のリー・ド・ヴォーと、こりっとした砂肝、
そしてガチョウの咽喉の皮のパリッとした感じを、
ポテトがねっとりとひとつにまとめる。
不思議。でも、んまい。
さあて、じゃ、メイン、もう一品いきますか、ということで、
「さっぱりと、米沢豚の骨付きグリエにします」
って、ちょっとなにかが間違っている気がする。
さっぱりって。
グリエは時間がかかるというので、
生野菜のマリネをつまんで待つことにする。
マリネはやっぱりすごく酸っぱい。
生カリフラワーがおいしかった。
くだらない話(基本的にすべて僕らの会話は
くだらないんだけど、
それは愛すべきくだらなさであるのですよ)をしつつ
おまちどおさまのグリエ。
「おお、脂がさっぱりしてる! 焼き魚みたい」
って、やっぱりちょっと間違ってる気がする。
はんぶんこして、あっという間に食べ終わる。
カスレやコンフィやテリーヌも食べたかったけど、
心は食べたいけど、胃袋はいっぱい。
これでおしまい。
でもデザート。これはやっぱりね、食べないと。
ぼくはマカデミアンナッツのアイスクリームに
ブラッドオレンジのシャーベット。
相棒はガトーバスク。そしてコーヒー。
うまかった。んでもって楽しかった。
次はどこへ行こう?
たまにしか会わないんだから、
そのたびごとにちゃんと贅沢をしよう。
じゃあイタリアまでピザとパスタを食べに行こうと
よくわからない約束をした。望むところですよ。