『木村伊兵衛のパリ』という写真集が発売された。
1954年の作品で、たしかいちど写真集になったのが
絶版となり幻と言われていたのが
やっと世に出た、ということで
たのしみに書店に行った‥‥のだけれど。
ぼくは木村伊兵衛という人の写真が好きで、
戦後の日本をライカで撮ったスナップショットは
アラーキー曰く「ブレッソンの決定的瞬間の一歩手前」、
その写真が撮られた前後の時間を
想像したくなるものばかりだし、
文人たちのポートレートなんかも、
まるでカメラも写真家もそこに「ない」かのように
そこに入り込んだ表情を見ることができる。
すばらしいのです。
そんな木村伊兵衛が撮ったパリ、
さぞや‥‥と思って書店でまずは立ち読み。
高いので、アマゾンでワンクリックする勇気が
なかったのだけれど、
その勇気、なくてよかった‥‥。
よく、なかった、んである。
まるで盗み撮り‥‥というか、
それはつまり被写体となる人々が、
ちっとも気を許していないんです。
1950年代のパリの人々が、
この木村伊兵衛という人を、
かんぜんに「怪訝な目」で見ている。
「なに? このちんちくりん」というような目が
そこにあるもんだから、見ていて痛々しくて‥‥。
じっさいに睨んだりしてるし。
木村伊兵衛の「洒脱なムードで、気づかれずに撮る」手法は、
日本では通用しても、
パリジャン・パリジェンヌには通じなかったんだな。
でもたまに面白いものもあって、
競馬場で外れ馬券に嘆く貴族夫人、
みたいな瞬間は、カメラを構えているジャポネなんか
まったく気にしてないから、
それはとてもいい瞬間がのこされている。
でもなにぶんにもそういうものがとても少ない。
ちょい悲しい。
木村伊兵衛も、
「ならば、異邦人として撮ろうじゃないか」
というような開き直りにもならなかったようで、
「おれには撮れる!」という自信なのか、
それともまったく気づかないのか(ってことあるのかな?)
気づかないフリなのか、
ともかくおかまいなしにシャッターを押すので、
全体的に、「カメラを気にしながら」
「しらけた表情をするパリっ子たち」が
よそよそしく写っている‥‥
というものに、なっちゃっている。
転校生に向ける視線が写っている。
ちっともパリっぽくな〜い。
パリをいちばんパリらしく写すことができる写真家は、
と言われたら、ぼくはロベール・ドワノーだと思うけど、
あの人はパリジャンだからねえ。
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夜、やのさんのコンサート@勝どき。
仕事がらみで、突然お誘いいただいたのです。
井上陽水さんがゲストで、
やのさんのピアノで「荒城の月」「ウナセラディ東京」
「恋のバカンス」をうたうのを聞く。
ふたりのデュエットは、声の相性としては、
けっしてよいとは言えない気がするんだけど、
それはそれでおもしろいんでした。
やのさんは、人の曲をうたっても矢野顕子になるんだけど、
井上さんは、人の曲をうたうと、超うまいカラオケになるのねえ。
さて、あっこちゃんの「ROSE GARDEN」に感動。
ラストの「ごはんができたよ」そしてアンコールの
「清志郎の分まで歌うからね」と言いながらの
「ひとつだけ」に涙。すばらしかったです。
会場でなつかしい顔数名に会う。
なつかしくはないが珍しい人にも会う。
コム デ ギャルソンのショップのお兄さんとか。
そして隣の席が、これはなつかしい、
やのさんがEPIC SONYに所属してた時代の担当であり、
ぼくの友人でもあるホマン(女)。
久しぶりに洋服馬鹿一代な会話。
マルタン・マンジェラお似合いでした。
終演後、いっしょに楽屋にお邪魔する。
もうほんとにやっぱりかわいいやのさん。
んーと、50代ですよね。すごいよなあ。
吉野金次さんが脳出血で倒れ療養中、
ということを知る。
そういえば目黒のスタジオにお送りしたものが
宛先不明で戻ってきちゃってたっけ。
そういうことだったのか‥‥。