3月25日。湿板写真という手法で、
ある音楽家たちの肖像写真を撮るという撮影に立ち合う。
で、その撮影風景を、スナップショット。
レンジファインダーカメラの面白さはスナップにあり!
‥‥と、言いきることもないんだけど、
今ぼくがカメラを持って歩いていて
いちばん面白いと思っているのがスナップなのです。
写真というのは光の反射をとらえているわけだけど、
物理的な光だけでなく、
撮る人の気持ちが撮られる人にいったん反射して
それがカメラにむかって飛んでくる‥‥
という感じじゃないかと思ってて。
そうすると、悪意をもって見たら、
その悪意をはねかえした光だとか、
悪意を吸って消沈した光だとかをとらえることになる。
スターの写真は、羨望や賞賛をぎらぎらと跳ね返している。
わかりやすいのはエロティシズムで、
いやらしい視線と、それを受け入れる反射が
うまくバランスがとれたら、
すごくいやらしい写真になるんじゃないか。
ぼくが撮る「ごはん」の写真をみんな褒めてくれるのは、
本気の食欲が反射しているからじゃないか。
すると、スナップショットが何を写すかというと、
その場面の人間関係の、
自然さみたいなものなんじゃないかと思うのです。
そこに、カメラを持ったぼくがいることが、
うんと自然でないといけなくて、
そして、被写体との間に、信頼関係がある。
そうすると、その一瞬をとらえたスナップは、
大事な時間を切り取った、自分にしか撮ることができない、
かけがえのないものになる‥‥はず。
──ということになりますな。
(で、仕上がりがそうなっているかというと、
そうなっていないのが、写真の面白いところだ!
と言っておこう)
さてそんな今日の買い物は、狂気を反射する女流写真家
ダイアン・アーバスの良質な展覧会カタログ
(音楽で言えば決定版のボックスセットみたいなもの)、
決定的瞬間をとらえるアンリ・カルティエ・ブレッソンが
パリをうつした廉価版の写真集
(音楽で言えば本人の監修しないベスト版ですね)、
そして、アレン・ギンスバーグが
あの時代を撮影した(してたんだね!)写真集
(これは何だろう? 引退後に出たライブ版?)。
On Sundaysで、「ここで選んで、アマゾンで買うかな」
などと不埒なことを考えながら立ち読みしていたら、
店員さんがとても積極的に話しかけてきてくれて、
そのアレン・ギンスバーグの写真集のすばらしさを
ごりごりと語りはじめちゃったんでした。
どうもぼくは店員との会話というのに
すごく弱いなあ。
っていうか好きなんだな、そういうのが。