グ

きょうは音楽堂。

窓のむこうは新宿御苑のちいさな森。
もう小鳥たちはとっくに起きて出かけちゃったみたいで静か。
あと１ブロック、森に近い場所に部屋があったらいいのになあ。
目の前が森っていうのが理想。
前はよく「目の前が海が理想」なんて思ったけど
海辺の部屋に10年いたらいかにたいへんかわかった。
仕事しながら暮らすなら「都会の森」がいい。




さーて今日もわりと一日忙しい。
めし作って床屋行って、
ゆうがたから横浜で矢野顕子さんのコンサートなので
それまで、できる仕事をするつもり。
「音楽堂」のコンテンツは
本人に取材しないというかたちなのに、
とても読んでもらえた記事だったなー。
ひさしぶりに「音に浸る」ことができるのが
ほんとうに楽しみだ。
ここのところ「どっぷり音楽を」という機会が
じつに少ないものだから。

で、ジム。

久しぶりに「バックペダル」というのをジムで１時間。
巨大トレッドミルで、ハーネスつけて、
すっ転んでもぶら下がるようにゆるく吊るされ、
トレーナーの指示で坂道逆走ダッシュをするんですよ。
そのハーネスっていうのがなんともいやらしくて困る。
ま、22時の回だと誰も見てないからいいんだけど。

トレーナーによるとこのトレーニング、
「神経をつなぐ」というようなことらしいんだけど、
最初、見事に右手右足になっちゃうんだな。
江戸時代まで日本人はそうやって歩いてたんだから
しょ、しょ、しょうがないんだな。
頭で理解しようとしても体はうごかない。
体で理解すれば体はうごく。
そういうことなんだな。

何本か走り込むうちに、
かいたことのないような汗をかきつつ
なんとかできるようになったんだけど、
もっと前傾！　尻をつきあげて！
などと言われて情けない気分が充満。
それでも、けっこうできたなー、と満足しかけて
最後の１本、けっこうな早さの平坦な道というやつが、
見事にできなかった。
まるで立って走るスピッツのようにちょこまか。
スプリンターとはほど遠い。
かなり恥ずかしい。
終わりよければ、の逆。
くーっ。悔恨が残る。
トレーナーの若者よ、
おじさんに終りに花を持たせてくれよと思うけど、
ま、次に意欲を持てということだろう。

そして久しぶりにジム弁当を買った。
たんぱく質ばっかりというのは
ここのジム的にはいいわけだし、
初期のころに比べたら格段に旨くなっているんだが、
それでも食べているうちに悲しみ充満。
食の官能というものにほど遠い。
しかし「その我慢している自分」を褒めつつ完食。
きょうは仕事でいろいろおいしいもの食べたから、
痛み分けということで。

夏が来る。

月にいちど仕事ででかける先の窓から

ちいさな川と、並ぶ桜の木が見えるんだけど、

もうすっかり緑色になった葉で

向こう岸も隠れるほどだった。

妙な空き地はたぶん地域の管理する公園になって

幼稚園児らしいこどもたちが先生のつきそいのもと、かけっこしてた。

湿気の少ない風が吹いて木がざわざわと揺れる間から

五月にしては強すぎるくらいの日差しが部屋にも届く。

ああ夏が近づくんだろうなあと思うと、

2008年の夏の終りのことを思い出す。

いや、いつでも、たぶん欠かすことなく毎日、

そのことを思い出しているんだけれども、

夏が来ると、とりわけ

肉体感覚としてよみがえってくるものがあって、

泣きたいような、笑っちゃいたいような、

つまりはとてもせつない気持ちになる。

とんでもなく忘れっぽい自分を知っているので

神様おねがいだからこのことを忘れさせないでくださいと思う。

陳腐な表現しかできなくてごめんな。

でもほんとうにそう思う。

まあセンチメンタルついでに言いますが

こういうときは大貫妙子さんの名盤「NOTE」がいい。

とくに最初の３曲と、おわりの２曲。

ことしは墓参りに行きたいなあ。
そんときはキャンディーズの「夏が来た！」をiPodに入れてこう。

そんなことを考えつつ、ジムに行くのでした。

ベランダ。

２時に寝たのに４時半に目が覚める。
いくらなんでも早いので無理やり二度寝、
６時にもういちど起きて
ベランダに置きっぱなしの自転車を磨いた。
ぼくのはMONGOOSE PROっていうメーカーの
クロスバイクなんだけど、
しばらくほっといたわりにフレームは丈夫。
磨いたらかなりきれいになりました。
けど、チェーンまわりと、ホイール全体はどうもダメみたいだ。
たぶん取っ換えになると思う。
買った店の支店が青山にあるんで
11時になったら持ってってみよう。

ベランダ、ついでに、枯れたまま放置していた
観葉植物４鉢を処分。
もうかりっかりに乾燥してたので
ばきばきひっこぬいて膝で割る。
なかなか気分がよろしい。

町人。

そもそも根が散漫なので、集中しているフリをしても

じつはほかのこと考えたりしてたりするし、

しょっちゅうコーヒー入れに席をたつし、

ヘッドホンして集中している人にどんどん話しかけるし、

迷惑行為が甚だしい。

それがなかった今日は気付いたらほぼ６時間

机に座ってたから、

「ほかに予定がない」というのは

やっぱり集中にほんのり加担するのかもね。

や、来週末に香港に行くので

この連休は自主的に仕事しているのです（間に合わない）。

途中、友人に会うことになり数時間出かける。

神保町から大手町界隈をうろつきつつよく話した。

それが非常に楽しかったので、

いいオンオフになったというか、

メリハリがついたのもよかったなあ。

数時間、日なたにいたら顔が焼けた。

ちなみにいまやってる仕事は

いやはや難しくて、でも面白い。

不思議なんだけど

江戸の町人の気持ちがよくわかる。

というか自分が町人であるということが

しみじみとよくわかる。

時代ものを観たり読んだり、落語を聞く時の背景、

いままで知識レベルだったのが、

なんていうんだろう、

肉体感覚としてよくわかった感じです。

Yoshihiko Takahashi meets Kaj Franck

土曜、小用あって高橋禎彦さんのアトリエに。

同行者たちにつきあっているうちにむらむらと物欲がわき
いくつか譲っていただくことになりました。
わが家のタカハシコレクション、さらに充実。

この、瓶の蓋になるちいさなオブジェたち。
ほんとは瓶とペアなんですが、
「はぐれちゃった」子たちをわが家に養子に迎えました。

で、ふと、カイ・フランクのキャンドルスタンドに置いてみたら
なんとまあ、ぴったり合うこと！
かわいいのでテレビ前に飾ることにしました。

 

そしてスピーカーの上は、なんだかわけのわからないことに。

ひよこは、フィンランドのイースターの飾りです。
水仙とひよこが、春のオーナメントです。
カバは、ムーミンの原形ではなくって、
フィンランドの銀行のキャラクターだそうですよ。

日曜、友人宅でちいさな花見の宴に参加。
いちごとシャンパンは合いますなぁ。

高橋禎彦展へ。

ギャラリーTAOではじまった
高橋禎彦さんの個展におじゃまする。
入れ違いでマダム井上がいらしてたときき、お会いできず残念。
ちょうどオープニングパーティだったので
高橋さんはすでにワインで真っ赤な顔をなさっていた。
工房の業火の前では赤くならないのに（熱で）、
お酒では赤くなるんですね。

今回の個展はオブジェ展。
思わず「こんなかわいいウ◎コは見たことない！」
と、たいへん失礼なことを思う。
いや、その、真っ白くてですね、
いま生まれましたというような有機的なかたちの、
そういうオブジェなんです。
「大福」とか「マシュマロ」とか
「ホイップクリーム」とか、ほかにも言い方はありそうだけど、
「かわいいウ◎コ」と、ふと思っちゃったんですよ。
そしたらもうその名前が頭を離れなくなりまして、
「かわいいなあ、かわいいウ◎コだなあ」と
そんなことばかり思っておりました。
いやはやほんとうに申し訳ないです。
これを読んで行ってみようと思われたかたは、
そんなふうなことを口にしないように。

で、そのかわいいウ◎コですが、
あまりにかわいいので、
「うちに来るか？　来るか？」と、思ったけれど、
５月までに２度の海外渡航があり緊縮財政の身としては
その願いはかないませんでした。
薄い財布は相談にすら乗ってくれなかった。

つぶやき学級。

ああ眠れない。というようなことを言うのは
ここじゃなくてtwitterのほうがいいんだろうか。
ブログとtwitter、あとmixi、
いまひとつ使い分けが決めらんないな。
ぜんぶtwitterでいいじゃん、という人の気持ちも
わからないでもないものの、
なんとなくあの散逸したムードのなかで
ひとつ芯のあるようなこと（と自分では思っていること）を言うのは
雑談でにぎわっている人の大勢いる広い会場で
ひとり演説を始めるような居心地の悪さがある。
twitterってその演説すらも呑み込む装置だとは思うけど。

というふうにまだよくわかっていないtwitterですが
友人たちのつぶやきはそれとしてまとめておくと
なじみのクラスに入ったみたいな気分になるし
知り合いの辣腕編集者たちの途方もない量の、
しかも情報戦のようなつぶやきの嵐は
それはそれで面白い。
しかし編集者になるタイプの人ってやっぱりそもそもが
「聞いて聞いて聞いて！」っていう性格なんですね。
「なんだようるせえな」
「ていうか聞いて聞いて？」みたいな。
「へえそうか」と言えば「そうなんだよ！」と叫び
すぐに「でさ、話変わるけどさ」と続くところが凄い。
ほっとくと画面全部が編集者のつぶやきになっている。
彼らのつぶやきはなにしろ情報が多いので
ちゃんと選ばないと情報の土石流みたいなことになるので弱る。
作家や音楽家になるとまた違って、
かなり内向的につぶやいておられて
それはそれで味わいぶかい。

さて、話題はかわりますが前回書いた美食かつ大食いの件、
１本まるごと焼いてくれた幼羊の後ろ脚を
ほとんどひとりで食べることになり、
そんなの入るわけがない、
視覚的にはぜったい無理、と思ってのに
なんだかんだ、たいらげちゃったわけですが、
そのすんなり受け入れた自分は食の淫乱だと思った。
というようなことはtwitterで書けばいいんだろうか。

うろうろ。

マンジャ・ペッシェの小沢シェフが
２月いっぱいで退任というので、あわてて席をとってもらう。
予約の時間まで数時間あったのでタワレコ新宿店をうろうろ。
ジャズ／ワールドのフロアで
かかってたＣＤがよかったので購入。
Ben Solle and Daniel Martin Mooreという
DEAR COMPANIONというアルバム。
ぜんぜん知らないけど、チェリストでボーカリストのベンさんと
シンガー＆ソングライターのダニエルさんのコンビらしい。
ワールドミュージックというよりカントリー。
ベンさんのサイトによれば彼は
"Kentucky-based, genre-bending cellist and vocalist"だそうです。なるほど。
いまこれ書きながら聴いてますが、とても好み。



それからJonny Cashの遺作AMERICAN VIが評判だというので、
その一個前のAMERICAN Vと合わせて購入。
IVしか持ってなかったんで（いいですよ、とても）。



そしてオッシュマンズで筋トレ用のグローブを。
いま使ってるのがすり減っちゃってつるつるだったんで。
という感じでちょっと散財。

さて、マンジャ・ペッシェ。
大イサキのカルパッチョ（半分は炙り）、
温製のホワイトアスパラポーチドエッグぞえ、
スパゲティ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ、
ラムの背肉のグリル、それからスフレ。
あわせて白ワイン２杯に赤ワイン１杯と、ハーブティ。
おいしかった。
小沢さんの退任をおしむ人たちが押しかけてて
なんだか謝恩会みたいになってました。
小沢さん、パスタの皿を直々に出してくれて
「ぼくが、ここでつくる、最後のペペロンチーノです」と。
ちょっと淋しい。
次の料理長は清水さんという若い人だそうです。
また行きますねー。小沢さんおつかれさまでした。

閉店。

その店は新宿にあって、
アップライト・ピアノがあって、アール・ヌーヴォーのランプが置かれ、
洋楽のかかる、大人っぽいバーだ。
最初は、友人が──いまはつきあいがない友人だけれど── 連れていってくれた。
そこで喰始さんに会い、
ぼくはWAHAHA本舗の仕事をすることになる。
当時勤めていた会社を辞める決意したのは
喰さんの「そうですか、忙しいから、面白そうだけど
ワハハの仕事はできないと言うんですね。
ということは武井くんという人は、
面白くないほうの人生を選ぶんですね」という言葉で、
それをぼくはその店のカウンターで聞いたのだった。
ぼくがポカスカジャンのライブを企画したのもその店。
そしてそれを観に来てくれた人たちと、
ぼくは、いまの仕事をしている。

しばらく足が遠のいていたのだけれど、
閉店することを知り、
最後の日になるという日曜の夜、
待ち合わせるともなく待ち合わせて、行ってきました。
閉店をおしむ人々でにぎわう店内で、
ポカスカジャンや喰さんと話す。
そして同じようにこの店が縁になった
Ｓさんたちもいらして、３時まで、
まるで明日も同じように営業しそうな雰囲気のなかで話す。
いかにも酒場の話題を話す。

思い出は、場所ではなく、ぼくの心に棲むわけだけど、
そしてそこで起きたことそのものに意味があると思うけれど、
……でも、もうちょっとボディに効くかんじで、
ぼくは、その店がなくなることをさびしく思っている。
こうして朝になっても、やっぱりしみじみそう思う。

「矢野顕子は生きているうちに聴きに来るように」
と、あっこちゃんは言う。
告別式にどれだけ人が訪れ悲しんでくれようとも、
生きているうちに聴いてもらうことのほうが、嬉しいと。
そういう意味で、なんだか告別式の客みたいだったぼくが、
さびしいなんて、じつに勝手な言い分だとは思うけれど。