シャルル・ド・ゴール空港に到着したのは夕方、
とはいえもうどっぷり暗くて、
シチリアへの移動は翌朝なので
ここで一泊しなければならない。
泊まるのは空港ホテルとはいえ徒歩では行けない。
タクシーももったいないからシャトルバスを探す。
CDGVALという構内電車で
JALの着く2EターミナルからROISSYPOLEというところまで行き、
そこで「GOLD LINE」というバスに乗れば、
目指す宿まで連れていってくれる。
とくにトラブルなく到着、
なんだか消毒臭い(でも部屋のゴミは捨ててない)
空港ホテルに入り、さっさとシャワーを浴びて就寝。
ベッドで時差のある東京とLINEでやりとり。
さあ眠るか‥‥といちおう床に着いたものの
2時半くらいに目が覚めてしまったので起きることにして、
24時間営業のラウンジでうだうだ過ごす。
朝は5時01分発の同じバスに乗って空港へ。
アリタリアはエールフランスの窓口で手続き。
エコノミーなので荷物はひとつと言われて
エクセスバゲージ料金を払う。70ユーロ。高い。
でも驚いたのは、エールフランスの窓口のスタッフが
全員がてきぱきとしていてとても感じがよかったこと!
ここ、シャルル・ド・ゴールだよねえ。
なんで?! 前回のパリが、シャルリー・エブド事件の
すぐあとで、今回は今回で、こんなタイミングだから、
みんな一致団結しているのかなあ。
さて搭乗。まずはローマ、フィウミチーノ空港へ。
満席の機内、1時間半くらいのフライトで、
朝ご飯にドリンクとちいさな甘いパンをもらい、
もそもそと食べる。
ローマでシチリアのパレルモ往きに乗り継ぐ。
荷物はパレルモまで行くのでピックアップはしない。
ちゃんと着くかなあ。
同じアリタリアだからきっと大丈夫だろう。
たぶん。おそらく。
バスターミナルなみに混んでいる国内線。
家族連れが多い。そしてなんだか高揚している。
そうか、クリスマス休暇つまり帰省休暇なのか。
半端に時間があるので
東京にlineで画像を送ってうらやましがらせたりしていたら
パケット代を心配される。そりゃそうだ! 控えよう。
はやくWi-Fiのつながるところに行きたい。
Wi-Fi大好き。Wi-Fi最高。
フランス人が「ウィッ・フィー」と言うのもかわいい。
「いた!」という声。
おお、Tさん。
羽田の夜便でフランクフルトからローマ経由で
同じ飛行機でシチリアに向かうことになっていた仲間。
「搭乗口前でね」というあいまいな約束だったけど、
無事集合できてよかった。
「見て! みんな倖せそうよ。
隣のマダム、映画に出てくるイタリア女性のように
上品で、息子さんもとってもハンサムだわ」
さすが見るところがちがう。
ぼくだと「下品なマダムが馬鹿な息子を連れている」ほうに
目が行くところだ(そんな人はいません)。
でもそんな彼女もほんのすこしだけ、
なんだか不安そうなのは、こういう理由から。
「羽田からパレルモまで
荷物を運んでくれることになったのだけれど、
アライアンス(航空会社連盟)が違うフライトだから、
はたしてちゃんと着くのか疑問なの。
なんだか私の荷物は載っていないような気がする‥‥」
そんなことないよ!
と言いたいが、ぼくもそんな気がします。
フランクフルトからローマには来る、かもだけど、
ローマのこの混雑ぶりを見ると、
ここでもみくちゃになって
よくわからないことになるんじゃないか。
いや、でも、まあ、無事届くといいですね。
「でも届かない予感がする。
だからとりあえず数日ぶんの着替えは持ってきたのよ」
なんと用意周到な!
でもそういう準備をするとますます届かないほうに
運勢が傾くのではないかと思うんですけど‥‥。
さて故郷シチリアに帰る人々の群れにまじってのフライトは
満席で、機内のまんなかの席(つらい)でした。
みんなばらばら、それぞれまんなかの席。仕方がない。
機内ではドリンクとクッキーが出た、と思ったら、
もう「着陸します」という慌ただしさ。
ローマからパレルモって近いんですね。
さて荷物はどうなったかというと、
やっぱり彼女の荷物は出てきませんでした。
この人はもともと持っている魅力と上品な所作で
まわりの男たちの親切をいやがおうにも引き出すのだが、
パレルモ空港職員も例外ではなく、
困っている彼女にまあ親切なこと。
もともとイタリア人の男は女性に親切ですけど、
それにしてもすごいね。
「じつは彼女はジャポネの893の奥様でしてね‥‥
われわれは護衛ですが、何か」
という冗談を思いつくほどに親切だ。
しかしそういう冗談は、
やはりマフィアの故郷シチリアでは
言わないほうが無難ですね。
親切な男たちの
「国際線乗り継ぎは別のほうから出てくるかも」
などという誤情報に右往左往しつつ、
最終的に「出てきませんね‥‥」ということで、
ロストバゲージの窓口に並ぶことに。
並ぶ‥‥そう、荷物が出てこないのは彼女だけではなく、
ざっと4、5組はいたんじゃないだろうか。
すごいなその確率。
それも「家族のなかでオレのだけがない」みたいな
お父さんもいたりして、なんだか気の毒。
でもまあ、たのしい休暇ですから、くよくよせずに行きましょう。
空港からはタクシー。
宿は街中だけど、やや入り組んだなかにあるらしく、
バスでもいいんだけど、
荷物をひきずってこういう街の石畳を歩くのは
ひじょうにたいへんだということを、リスボンで体験済み。
あれはつらかった。
よってタクシー。
しかしシチリアの空港タクシーってどうなんだろう?
という不安はあったけど、定額タクシーはないらしいし、
えいやっと待っている公認タクシーをつかまえる。
行き先をナビに登録し、高速をぶっぱなす若い運ちゃんは、
どうやら仕事熱心そうで安心。回り道もしなさそう。
やや乱暴すぎる運転にひやひやするが、
何度か道に迷ったのち(ものすごく複雑な上に、
旧市街は道路標示がかすれて見えなくなってる)、
地元の人々の親切で
(停まって尋ねると、すぐ道案内をしてくれる)
到着しました、です。ふう。
さて今回の宿。いままでになく広くて面白い。
1階の玄関はこの部屋専用。
2階に上がると広いリビングルームに、広いキッチン。
プロ仕様の理由は、この部屋のオーナーが料理人だからです。
日本で修業したこともあるダリオさんは
日本人がキッチンをとてもきれいにすることに感銘を受け、
パレルモにこのキッチンをつくり、料理を教えているのだ。
部屋は1人ずつ別々にあり、それぞれにトイレもシャワーもあって、
ダリオさんはキッチンの奥にもうひとつあるリビング&ベッドルームにいる。
「間借り」のようだとも言えるけど、
感覚としては「ダリオさんも含めたチョイ住み」ですね。
おおぜいで楽しい。
過去いくつかの都市で民泊やキッチン付きのホテルに泊まったけど、
ここが最高の設備であり、オーナーの親切さもマックスであろう。
まずとても美味しいエスプレッソを淹れてくれ、
1時間かけて丁寧に部屋のことと街のことを教えてくれた。
とてもとても神経質なのは言動を見ていればわかるが、
教えてくれた地図に書いてくれたポイントは
針の先のような「点」だけだったので、
あとでとても困ることになるわけだが、
でもまあいいです、親切だから。
われわれの滞在中は料理教室はないそうだからほぼ貸し切り。
キッチンも自由に使えます。
通常は朝ご飯をつくってくれるそうなんだけど、
今回は自分でつくりたいので、そこだけは遠慮しました。
さて、食材を買いに行かなくちゃ。
ということで街へ。
道はとてもくねくねとしていて、
方向音痴くんには、うーん、迷路?
じゃあ碁盤の目なら迷わないのかというと
やっぱり迷うので迷路のせいにしてはいけないんですが、
迷った原因はもうひとつ、
もらった地図が天が北じゃないこと!
グーグルマップとの比較がとっても難しく、
同行者のなかに方向感覚に自信のあるものもいるはずが、
それでも180度間違ったりしておりました。
街は、そうかヨーロッパの地方のクリスマスって
こんななんだー! という、いい感じのいなかっぽさ。
イルミネーションも素朴だし、
なにより人々がうれしそう。
帰路がたのしいんだろうなあ。
こういうのはちょっとせつなくっていいですね。
オーナーのダリオさんに
食材を買う場所を教えてもらっていたものの
どうもわかりづらいので一回戻って
Wi-Fiでグーグル先生にスーパーマーケットの場所を教えてもらう。
すると徒歩10分ほどのところに謎の小型スーパー、
15分くらいのところカルフール発見。
小型スーパーはたいへんひどいもので、
食材しなしな。肉とか買う気にならない。
カルフールはさすがの品揃えで、すごくいいもの、
ってわけじゃないけど基本的なものは揃う。
牛乳やパスタや少量の野菜を仕入れる。
帰路、商店街の総菜屋みたいなところで
パンチェッタとパルマの生ハムを買う。
ワインは、とりあえず1本は
ダリオさんのプレゼントがあるので
それを飲むことにしよう。
ということで夕食。こんなでした。
鶏肉のソテー、レモンバター風味です。
ほかにサラダと生ハム。ワインはスプマンテをもらい、
ちょっと足りないなーと思ったけれど、そのくらいでやめました。
疲れたな。でも洗濯はしないと。
手洗いでごしごしと2日分の衣類を洗って干し、
iPhoneを見ながら就寝しました。