久しく会っていない友人からメール。
本題はフィンランドの本の感想だったのだけれど、
「今年の春頃に恋人ができまして」
という報告があって、もうとにかくそのことが
嬉しくて仕方がないという感じ。
なんだなんだ、まったくもう!(照れる)
でも、こういうのって嬉しいものですね。
来年はふたりでフィンランドの旅をしようかと
計画をしているそうで、
そんなふうにふたりの話題になったのだとしたら
こうして本のかたちにしてよかったなあと思います。
じつは彼に恋人ができたことは、
共通の友人からうわさで聞いていたのだけれど、
「本人談」はやっぱりパワーがちがう。
あふれ出る嬉しさはこちらの頬もゆるめる。
ほんとうによかったねえ。そう機上で思います。
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機上。そうなのです、いま(たぶん)ロシア上空。
JALに乗って(JAL好き)ヨーロッパに向かっています。
11、12月は土日がけっこうなくって(働いてて)、
その代休やらを充て、はやめの冬休みをもらいました。
行き先はシチリア。
ばらばらな日程と航路であつまって、
最終的にメンバーは4人になるという、
ちょっと変則的な旅です。
ぼくは旅程的には、
パリに寄ってちょこっとだけ泊まります。
往きは乗り継ぎの都合でCDGの空港ホテルに1泊、
帰りはパリ市内のアパートに3泊。
あとはシチリアのパレルモに1週間。
例の事件の影響なのかな、パリ便の機内はガラガラ、
ぼくの乗っている成田からの便は
1月から欠航になるらしい。
そのぶんなんだか気合いが入ってる感じ?
安定したサービスのJAL、快適。
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さて、旅のことはおいおい書くとして、
まずはこれを書かなくちゃ。
鈴木慶一さんのミュージシャン生活45周年記念ライヴ!
ぼくは17歳のときにムーンライダーズのステージを見て、
頭をガーンと殴られたような衝撃をうけ、
それ以来、えーっと、32年か、ずっとファンなのです。
作曲家であり作詞家であり編曲家であり
ヴォーカリストでありギタリストでありピアニストでもあり
プロデューサーでもある慶一さん、
音楽の志向というのが360度あるとしたら
ひとりで350度くらいはある、
いや、それだと平面だな、
それが立体になっているのが慶一さん。音楽の球体。
だから、ひとくちに45周年といっても、
「こういう音楽です」と、かんたんに説明できないし、
すべてを網羅することなんてとうてい無理です。
今回の3時間半におよぶコンサートは、
「いま」から「原点」へ時間軸を遡るかたちで展開し、
メンバーを換えながらすすみました。
ゴリゴリのロック(Contravercial Spark)で始まり、
鼓笛隊みたいな楽しい楽団()、
ユキヒロさんとのエッジィ(死語?)なユニット(THE BEATNIKS)、
休憩をはさんでムーンライダーズ、そして
はちみつぱいへと辿るわけです。
「あれがないじゃん」なんて野暮は言いっこなし。
だって無理だよ、3時間半じゃ!
でも、若い人たちと並ぶ慶一さんは
まるでかつての水族館レーベルの一員のようだし、
はちみつぱいの中にいると、
大学のサークルで生まれたバンドのなかの
ひとりの青年になっちゃう。
そんな姿が見られてとてもうれしいです。
ぼくは当日のリハーサルから参加させてもらい、
楽屋とリハの写真をとらせてもらったんですが、
本人はもちろん、みんな、
終止なごやかで機嫌がいいんだなあ。
慶一さんはそもそもそういう人なので(笑顔がデフォルト)、
まわりの友人たちも、みんな、そう。
今更気付いたんだけど、主役のはずの慶一さんも、
楽屋は大部屋で(個室じゃないという意味)、
しかも「タバコ部屋」と「禁煙ルーム」が分かれている、
そのタバコ部屋のほうにおられました。
威張らず、屈せず、ただ、なじむ。
あの自然さはすごい。
さて舞台ですが、
後半のムーンライダーズでぼくは滂沱の涙。
だって、大病をした武川さんが復活し、
1年前に亡くなられたかしぶちさんの席には、
息子さんのタクマくんがドラムを叩いて、
「活動休止中」のはずのムーンライダーズが、
こうして揃ったんだから。
くじらさんの「スカーレットの誓い」のイントロ
(トランペット)で涙が止まらなくなり、
「BEATITUDE」のラストで良明さんと慶一さんが
ギターを弾きながら片足ステップする、
ライダーズファンにはおなじみの
あの光景が見られたとき、
ふたたび、号泣。
ムーンライダーズの音楽をきっかけに、
いっしょに歩いてきたぼくにも、
いろんなことがあったんだよなあ、
ということを、くっきりと思い出す。
音楽っていうのはきわめて個人的な記憶や体験に
結びついているわけで、そんなことは、
誰の身にもあることなんだろうけれど、
ぼくにも、やっぱり、あるのでした。
最初にムーンライダーズを一緒に聞いた地元の親友は、
もうこの世にいないんだよな、ってこととか、
慶一さんのソロライヴを一緒に聞いた東京のともだちも、
もうこの世にいないんだよな、ってこととかね。
ああ、愛するばかたれどもが!
それからずいぶん前のことだけど、
あのときのライヴのあとに、それがきっかけで、
恋人ができたんだよなぁ、とかさ。
そして今は──、と、
そんなことを考えていたらまた泣けた。
きょうのことも、きっと、時間が経ってから、
とんでもなくだいじな思い出になるんだろうなあ。
そのとき、ぼくはじんわりと、
幸福な気持ちで思い返せるだろうか。
そうあってくれ。なあ。
もとい。帰ってこい、オレ。
ほんとうにすごいなあと思ったのは、
本編のラストの曲、はちみつぱいの「ぼくの倖せ」を、
1番は慶一さんが歌ったものの、
締めをメンバーの渡辺勝さんに任せたことだ。
えっ? 最後だよ?!
じぶんの記念コンサートだよ?!
ともだちにゆずっちゃうって??!!
そしてアンコールその1はMOTHERの
「エイト・メロディーズ」。
ここでも慶一さんは主役ではなく、
この日共演したミュージシャンたちを前に立たせ、
いっしょに音楽を担当した田中宏和さんを高い舞台に上げ、
じぶんは指揮者のようにふるまって、
客席に歌をうながすとともに、
自分の現在のありようにたいして
強い感謝を示しているように見えた。
ひっこむとき、慶一さんより田中さんが取り残されて
ただひとり舞台に残るかたちになりそうになり、
あわてて早足になったのがおかしくておかしくて。
慶一さんはそんなのへっちゃら。
さらに、アンコールその2では、
復帰したばかりの武川雅寛さんを立てた。
片づけが始まるなか、舞台にどかっと座り、
ギターとバイオリンで歌う。
そしてまだ声がちゃんと出ない武川さんに
ほんとうにほんとうの締めを任せる。
そして、こう言うのだ。
「私はいつも
たくさんの友人の親切に
すがって生きてきました」
と。
だーかーらー、泣かせないでくださいって!!
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打ち上げの席まで参加させていただいたんだけれど、
やっぱり慶一さんは「音楽の、ひとりの仲間」として
ずっとふるまっていた。
主役、主役ですよ! でもそんな感じじゃない。
みんなもいたずらに慶一さんを崇めたりすることなく、
いつもの酔っ払いでありました。ぼくも、ですが。
そして帰路、冷たい冬の風をうけながら、
ぼくはあらためて感謝するのだ、
ここにいられた、ということに。
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当日のセットリストとちょっとだけ写真がこちらにあります。
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最近ブログをなまけていたので諸々記録しておこう。
矢野顕子さんの「さとがえるコンサート」(with TIN PAN)。
じつは矢野さんもまた、ぼくは16歳かな、
そんな頃からのファン。
ムーンライダーズと同じステージを見ているのだ。
ずっと負い続けて、どれもがすばらしいのは
言うまでもないんだけれど
ここまで自由でのびのびとした矢野さんは
見たことがなかったです。
「音楽ってすごいな、
そして、それを聞く、って、
やっぱりいいな」
とつよく思ったです。
あっこちゃーん!(叫)
客席からそう呼べるのはファンの特権さ。
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梅ちゃん(梅垣義明さん)の「青い復活祭」。
こういった(お笑いのかたちの)単独ライヴは
これを最後にしばらく休むということで、
来年のワハハ本舗全体公演で歌い納めだそう。
でも、思ったんだけれど、梅ちゃんの歌の上達ぶりは、
あきらかに本人の努力のたまもの。
だって「どんどん上手になっている」んだもの。
ということは、お笑いの歌ではなく、
お笑い抜きでも歌をということなんじゃないかなあ。
爆笑につぐ爆笑のあと、最後に歌った「人生の大根役者」は
どういうわけか感動までさせてしまう力があった。
いいぞー梅ちゃん、そっちだ!
すぐに来年の全体公演のチケットを予約。
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中島みゆきさん関連ふたつ。
ひとつはご本人のコンサート「一会」、
もうひとつはリスペクトライブ「歌縁」。
ご本人のほうは、あえてのヒット曲を避けた構成で、
しかも「今、中島みゆきは何を歌うのだろうか」
「彼女は今、何を考えているのだろうか」という
世間の期待をみごとに裏切ったかたちの構成。
これは先に出たフルアルバムもそうで、
「フルアルバムってどういうものなのか」
「コンサートって、なんなのか」という、
たぶん原点にたちかえっているんじゃないかなあ。
とてもたのしいコンサートでしたよ。
リスペクトライブのほうは、いきなり、
満島ひかりさんの「ファイト!」が聞けたというのが
いちばんの収穫! と思いきや、
それに続く中村中さんの「玲子」もすさまじく、
坂本冬美さんの「地上の星」、KUMIKOさんの「世情」、
中島美嘉さんの「命の別名」研ナオコさんの「あばよ」、
などなど(1人2曲ずつでした)を堪能したのちに、
トリが大竹しのぶさんで「化粧」と「歌姫」。
いやあ、すさまじかった。あの女優の表現力。
うますぎて迷惑! というくらい、うまい。
中島みゆきさんの曲というのは、
1曲1曲が、ひとつのドラマなのだということを
あらためて思ったです。
しかし。
一緒に行ったともだち(同い年、わりと有名な編集者)が
そのあといっしょにスパゲッティを食べながら
「ねえねえ、あの舞台に出るとしたら、何を歌う?!」
と訊いてきたので呆れた。
出る、って。出ねえよ!
「出るとしたら、だよー。たった2曲だよ?」
えー、出ないけど‥‥ で、きみはどうすんの。
「化粧! ‥‥は、大竹しのぶさんが歌うからなあ」
え、本気で「あっち側」に行くんだ?
(これがこの人のすごいところです。)
でもまあ、いいんじゃない、かぶっても。
「じゃあ、やっぱり、化粧!
ごめんね大竹さん、
あとどうしよう? WITH? 二隻の舟?!」
どっちでもええわ。2曲といわず歌えばいいじゃないか。
「えー、でも、1人2曲だったからねー」
‥‥‥‥ちなみにこの人、べつに歌がうまいわけでも
演技力や表現力が突出しているわけでもないです。
(編集者としてすごいんだけど。)
この不毛な会話の結論としては、歌いたい欲がおさえきれず
「新年、カラオケにみんな(ぼくの同僚とか)を誘って
中島みゆきカラオケに行こう」
ということになりました。
じぶんはどうすっかな。
「永久欠番、を歌わなきゃ!」と言われだけど、
そりゃ好きな曲だけど、あれはなあ、つらすぎるよなあ。
思い出しすぎる。
どうせならラブソングがいいよな。
(結局、同じ穴のムジナ)
そうこうしているうちに会場の連絡がメールできました。
参加は7人の予定なのに
「20人入れる部屋をとりました」って、
どういうことだ。ステージか。
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そうこうしているうちにパリに着きます。
これを書いたり、
ずっと考え事(というかなんとうか)をしてたりしてたから
映画1本も見なかったよ。
つづきはつづきで。
(うわ、顔がぱんぱんだ。)