ラオスの少数山岳民族であるレンテン族の古布のパッチワーク。
使わなくなった民族衣装(日常着)を、
縫い目をほどいてこんなふうにしているのだけれど、
そもそもその布からして、
綿を育てるところから紡いで糸にすること、
藍を育てての染料づくり、染め、そして織り、
衣装にするときの縫製まで、
すべてひとつの家族が手仕事で行うのだそうだ。
織りひとつにしても、1センチに18本もののたて糸を入れるのに、
手縒り、つまりかなり「甘縒り」のやわらかく弱い糸を、
ここまでこまかく織るのはたいへんな技術。
ほかの民族ではできないらしい。
そして家族が一生身に付ける用につくるので、
じょうぶでやわらかく、あたたかくて、すずしい。
使わなくなった服は(それは人の死も意味するんだと思うけれど)、
ほどいて、別のものにつくりかえる。
たとえば赤ん坊の産着は、うんとやわらかくなった古布を使う。
もしかしたらそれは
「ひいおばあちゃんの着ていたもの」
だったりも、するのかもしれないなあ。
このパッチワークも、敷物として使われるらしいのだけれど、
そんな古布ばかりが使われている。
経年変化できれいに色落ちした藍。
かつて縫い目だったところは自然の鹿の子絞りのようになり、
裏地だった部分が濃いまま残されていたりもする。
民族衣装のボタンホールなども残っている。
ところどころに刺繍があるのは、
完成後、ちょっと汚れが目立つ場所をそれで飾ったのだという。
そもそもピースの大きさもばらばらで、
完成予想図がないままにつくっているはずなのに、
全体にひとつのトーンがある。
トーンというのは文字通り、音色であり、抑揚であり、
色調であり、口調でもあり、格調でもある。
まるで最初からこうだったかのように、
ひとつひとつのピースが、あるべき場所にぴしりとおさまっている。
見ていると吸い込まれるような感覚は、まるで星空みたいだ。
惚れてしまいました。
これは1.5メートル×1.8メートルくらいかな。
さらに4倍くらいの大きさのものもあって
気の遠くなるような「時間」に打ちのめされながら
ああいつか買えるようになったら連絡をしますと言うと、
「大丈夫、これは、いつかきっと
武井さんのところに行きますから」と、
まるで巫女のような口調で谷さんが言った。
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谷由起子さんの「ラオスの布と手仕事展」は
11月3日(火・祝)までTOBICHI2で開催しています。