ここ10年で自分が変化したなあと思うことのひとつに
野菜とのつきあい方がある。
もともと野菜は好きなんだけど、
いっぱい食べると言えるほどではなかった。
いまはいっぱい食べる。すごく食べる。
むしゃむしゃ食べる。がつがつ食べると言ってもいい。
食べ過ぎですと言われてもおかしくないくらい食べている。
むかしのエッセイで村上春樹さんが
「ぼくは毎朝、洗面器一杯ぶんの野菜サラダをむしゃむしゃ食べる」
というようなことを書いていたのをかっこいいなあと思い、
それも野菜をちゃんと食べることを意識するようになった要因のひとつだ。
(われながらミーハー!)
でもじっさいにやってみると洗面器一杯ぶんのサラダって
食べるのがすごくたいへんです。
ハルキさんほんとに食べてんのかな。食べてるんだろうなあ。
友人がかかわっている縁で「銀座マルシェ」の
オープニングレセプションに行ってきた。
「銀座マルシェ」というのは、
その単語じゃまだ検索してもちゃんと出てこないけど、
SONOKOがはじめた野菜のお店です。
一般には手に入らない、というか、
一部の志の高いレストランに卸すだけで完売しちゃう
「もんのすごくおいしい野菜」を揃えている。
バイヤーというか「その野菜の責任者」として
畝田(うねだ)謙太郎さんという、野菜の目利きが参加していて、
「えっ、畝田さんの野菜が買えるんですか?!」
というほど、すごいことなんだそうだ。
その「銀座マルシェ」はまだイベント的なもよおしで
「今月は○日に開催します」
というような感じではあるんだけれど、
いずれは定期的に、さらには常設の(かな?)お店にして
いつでもおいしい野菜が買えるようにと
SONOKOは考えているらしい。
で、SONOKOなんだけど、そう、あのSONOKO。
美白、美肌、ということばかりが印象にあるけど、
ここは「内外美容」の会社なんである。
白塗り、ではなく、内側からきれいに、ということを
すごく考えていて、
どれくらい考えているかというと、
健康な食材や調味料をつかった
食品のプロデュースを、長年、まじめに続けているんですね。
日本で「ノンオイル」をここまで打ち出した食品は
SONOKOが嚆矢だそうだし、
健康食という考えも、
鈴木その子さんがひどいアレルギーに苦しんだご子息のために
必死に考えてきたものが、ベースになっている。
そういうこと、ぜんぜん知らなかったけど、
あらためて知ると、「野菜マルシェ」をSONOKOがはじめるのも
なんら不思議なことじゃないんだなあと思う。
で、野菜。
最近はほんとうにおいしい野菜が増えて、
そしてその入手経路が(東京では、かもしれないが)
確実なものになって、
たとえば伊勢丹の野菜はきちんとおいしく健康だし、
永田農法の「りょくけん」も都内にいくつか店舗があるし
ネットで取り寄せることもできる。
ぼくは野菜は見て買いたいので、取り寄せず、
このごろは、青山の国連大学前で
週末に開催される「青山ファーマーズマーケット」で
基本、買っております。
ちょっとプロデュース臭が鼻に付くところはあるものの、
参加している生産者はまじめだし、かなりいいものが並び、
そして(ぼくにはこれが肝心)けっして高くはない。
ぼくがよく行く店(ブース)は、
ちょっと枯れた感じのおじさんの店なんだけど、
かなり安い上に野菜が元気で、1週間冷蔵庫においても
みごとにシャキシャキしたまま。
しおれてもそんなにまずくならない。
いきなりどろりと腐っちゃうスーパーの野菜とは違うのだ。
何度も通ううちに
納豆とトマトとバナナと柑橘類(このあたりは常備している)も
それぞれ買うブースが決まった。
いずれも安くてうまくて健康だと思う。
話がややそれちゃったけど、そんなぼくから見た
「銀座マルシェ」の野菜はどうだったかというと、
これがみごとにおいしかった。
試食の調理を担当したのは、これまたびっくり、
「L'AS」の兼子大輔シェフ。
「コート・ドール」で斉須政雄さんのもと学んだ人だ。
ぼくは「L'AS」には行ったことがなかったけれど
(なにしろ予約が取れないことでも有名)、
野菜使いのじょうずな調理人として知られている。
もちろん畝田さんの野菜にも慣れている。
メモも写真も撮らずにがつがつ食べてしまったのだけれど、
・ホワイトアスパラ
・香りしめじ
・インカのめざめのピュレ(トリュフのせ)
・宮崎トマト
・筍
・長芋+ラルド
・ズッキーニ
・タルティーボ
・青いトマト(なんとデザート!)
という感じ。
ほぼ素材。でも料理です。
「素材そのものが、すでに調理されたおいしさを持っている」
ということじゃないかと思う。
最小限の演出(調理)で、ちゃんと料理になっている。
野菜の味が濃いから、塩が軽くてもキレが出る。
これ、生活習慣病対策の減塩生活には最高だよねえ。
役者がいいのだなあ。
ダンスの公演はダンサーが踊る。
歌舞伎の公演は歌舞伎役者が演じる。
NODA MAPの公演には野田秀樹さんが認めた役者が並ぶ。
そういう感じだ。
そしてそういう公演はチケットが高い。
SONOKOの「銀座マルシェ」も、それなりの値段がする。
自分が買いつづける経済力がないのは残念だけど、
これだけのものを集めたってやっぱりすごいなあ。
東京の「食」、おもしろくなってきているよなあ。