友人が「家で飲む定番ワインが欲しい」というのだが、
その気持ち、わからないでもない。
つまり、安定した味、低価格、ぐいぐい家飲みできる、
そして安定供給されるもの、ということなんだと思うけど、
たしかに(何によらず)そういうものがあると
「これでこの分野はOK」となるので、安心といえば安心。
「頭痛薬はコレ」みたいなことですね。
そもそも日本で買うワインは高い。
フランスのものだと、
本国では9ユーロ程度で買えるものが
2500〜3000円くらいになってる。
9ユーロだったら多少の当たりハズレは目をつぶるけど
(というかまずハズレませんが)
3000円だとちょっと困る。ていうかかなり困る。
飲まないなら料理に使えばと言われても、
まあ日本のふつうの食生活なら、日本酒ならともかく、
ワインを料理に使う機会はそんなに多くない。
だから外したくない、と思うと、
いっそ「コレ!」と決めちゃいたい、
その気持ちはよくわかるのである。
今回の旅で「(ワインカーブで)
4〜8ユーロでもじゅうぶんうまい、
9〜13ユーロだとめっぽううまい、
14〜20ユーロは超ゴチソウ」というような
自分的なガイドラインができちゃった。
ちなみにそれ以上は未踏の大地である。手が出せない。
なおレストランだと30ユーロくらいから、になるので
また基準が変わりますけど。
さて、ワインにおける定番という考え方についてであるが、
たいしてワインを飲みつけていない身で
言うのも生意気なんだけど、これって「安定」からは
もっとも縁遠い存在なんじゃないか。
だって同じ味のワインって、まず、ない。
よく言われるように
生産地、生産者、土壌、年度、環境で変わるわけだし、
同じワインでも飲む日の気温、室温、湿度、体調、
あわせる料理で味は変化してしまう。
それを面白がるのがワインなんだ、と考えると、
やっぱり安定を求めるのは無理なんじゃないか。
ていうか決めちゃうのは勿体ないんじゃないか。
1コに決めちゃうと、飽きちゃうと思うんだよね。たぶん。
一生かかっても網羅することができない
広さと深さがワインの魅力なんだろうし。
そうはいっても安くおいしいワインが買える環境はうらやましい。
チェコのプラハに行った時、
地元の友人はカラ瓶を酒屋に持っていき、
樽から赤ワイン注いで買っていた。
1本分、数百円だったと思う。
もちろんそれはどこの何がどうのではなく、
けれどもひじょうにおいしくて、
ただただ満足なものでありました。
ハムもサラミもチーズも安くて美味しいしね。
そういう意味での安定は、東京に住んでいたら、
‥‥望むべくもないんだよな。
日本酒だと一升瓶で3000円くらいでも
けっこう美味しいのがあるから、
日本酒好きなほうが日本ではずっと
楽しめるはずだよなあ。当たり前だけど。