クロード・フランソワの伝記映画
『CLOCLO』(英題『MY WAY』、邦題『最後のマイ・ウェイ』)
試写を見てきました。
クロード・フランソワって誰?
そもそもはまったく予備知識がなかったんですけど、
FBで佐藤剛さんのこんな文章を読んで
だんぜん見たくなっちゃって。
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誰にでもわかりやすくて面白いエンターテイメント映画ですが、
フランスの芸能界実録物語であり、しかも世界的な名曲
「MY WAY」が誕生した瞬間とその後の真実も伝えています。
ここ10年で見た新作の中では、断然に素晴らしい映画でした。
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ええっ、フランク・シナトラの「MY WAY」って
原曲はフランス人によるものなの?
調べてみたら原曲は「Comme d'habitude」というのだそう。
その作者クロード・フランソワは、
フランスではたいへんな人気だったシンガー&ソングライター。
けれども39歳で夭折している。
その伝記映画が、フランスでは動員1位を取るほどの
大ヒットになり、それがこの夏日本公開が決まった、と。
とはいうもののぼくはクロード・フランソワへの興味より
「ここ10年で見た新作の中では、断然に素晴らしい映画」
しかも佐藤さんは
「悔しいけれど逆立ちしたって今の日本では作れない傑作」
とまで書いていた。
そんな映画的興味で見たいと思ったのでした。
はたして。
おもしろかった!
たぶん、1960年代から70年代のポップス事情を
よく知っている(同時代的に経験したり、あとから追ったりした)人なら
細かいところで「あれは、誰」みたいな楽しみも
あるんだろうと思うけど、
そういうことを抜きにしても映画として面白かったです。
148分、飽きずに最後まで見られました。
クロード・フランソワは容姿にコンプレックスがあり、
厳格な父親との対立に悩み、
浪費家でギャンブル癖が抜けない母をかかえ、
また人並みはずれた嫉妬心と上昇志向は、
小さく繰り返す身の破滅と、
それと引き換えにしたような成功をもたらしていく。
そしてモラルのたがが外れたような好色ぶり。
さらに、(ぼくはわからないんだけれど、佐藤さんによると)
「あまりにも音楽業界の裏と表がリアルに描かれている」
そうで、
たぶんこれがアメリカ映画だったら
もうほんとやんなっちゃうくらいのドロドロさで
性的なシーンもこってり描きそうなところを、
そこがフランス映画、ヨーロッパの緩さで、
たいへん品がいい。
そう、品がいい!
彼の人生39年を2時間ちょっとで描くのに、
いっさいの説明的な台詞や演出はなく、
「見てればわかる」というあたりは
映画としてすばらしいことだと思う。
ちんちくりんで妙な声(だよねえ)で
性格の悪い(と見られることが平気になっていく、実は小心者の)
クロード・フランソワとかかわる女達が、
もういずれも魅力的でコケティッシュで。
なかでもフランス・ギャル(役、なんだけど、
クロード含め、まるで本人かのような印象)が
かわいいのなんの。
こいつにかかわると酷い目に遭うから近づかないほうがいいよ!
と本気で引き止めたくなっちゃいました。
アメリカ映画のような「両手をあげておもしろーい!」
というスカっと感はないんだけれど、
このもやもやしたゆるさは、ぼくはたいへん好み。
クロードは好きになれないけどね!
それにしても若くして急逝するタイプの、
ごり押し天才系(勘違いもそのまま通しちゃうタイプ)の
人物像って、好むと好まざるとにかかわらず、
魅かれちゃうものですね。落語の中の人みたいだ。
トレーラー貼っときます。
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その夜は、なんと、
シルヴィ・バルタンの、ビルボード東京でのライブへ。
往年のフランス音楽漬けの一日。
こちらも「レナウン娘の人?」ということと、
あとは大ヒット曲「あなたのとりこ」「アイドルを探せ!」
くらいしか知らないで行きましたが、これが楽しかったー。
日本の熟女が低年齢化しているなか、
これぞほんものの熟女! むんむん。怖いくらい。
ご一緒した年長の音楽家は
「とてもいいユーロなショウ。
このユーロ感って好きなんです。英米でない感じ。」
と評されておられました。
そうそう、やっぱりあのゆるさは、ヨーロッパならでは!
ということで「LA PLUS BELLE POUR ALLER DANSER」(「アイドルを探せ」)
そして「Irresistiblement」(「あなたのとりこ」)
終演後なぜかぼくまで「楽屋へどうぞ!」と誘ってもらったんだけど
あまりに畏れ多くて、固辞いたしました。