渋谷から家に帰るバスが来そうにないので
本屋で『のだめ』19巻と、
ずっとちょっと読んでみたいと思っていた
よしながふみ『きのう何食べた?』1巻を買う。
で、家に着くまでにほぼぜんぶ読んじゃいました。
面白かったなあ。
『のだめ』は(もういまさら何を言うこともないけど)、
物語がとても練り込まれていて、
どうなるかの不安定感すら著者の手のひらの上、
というような力量にあらためて感服。
「で、次は?!?!」という、物語に乗る快感。
ちゃんと終わらせる力がある人なので
そこんところもとても楽しみにしながらの19巻読了です。
いまヨーロッパが舞台なんだけど、
ますます取材がたいへんしっかりしている凄みも。
『きのう何食べた?』は、
「家のごはん」すなわち「生活」、という、
ある意味流行の最先端なテーマを
弁護士と美容師の中年ゲイ(いちおうカップルだけど、
色気的な描写は皆無)の同居世帯に置いて、
しかも、そこ(ゲイであること)が重すぎないように、
いち弁護士としての仕事、
いち美容師としての仕事、
実家との関係、近所との関係、
軽く明かされていく過去、など、
だれもがもつような「生きていく人」としての出来事を
かるく、かるく、描いていく、
どうもまだ明かされていないエピソードも多そうだなという
期待をもたせつつの第1巻。
主人公を「ハンサム」で「スタイルよく」
しかも「どケチ」にしたところが、いいんだなー。
これ、ルックスにリアリティがありすぎたり、
弁護士でぜいたくな暮らしで料理が「趣味」で
器なんかにも凝る人だったら
こういうふうにはならないものね。
「ゲイ」にする必要はやっぱりあって、
女性だと‥‥ふつうって言われちゃいそうだものね。
いわゆる家計をひきしめつつの兼業主婦としては。
ところでハンサムって言葉今どき使うのかな?
とは思いつつ、内容はほんとうに
「いま」の漫画だと思いました。
こういうのがモーニングに連載って、
昭和にはありえなかっただろうなあ。
主人公が料理をする最中に
どんなことを考えているかという描写は
料理を毎日する身には「そうそう、その通り!」。
つまり、技術(経験)とアイデアと段取りとアドリブ、
新しい挑戦、ちいさな躊躇と諦め、
自己決定を交互に繰り返し、
時間とたたかいつつ、一気につくっていく‥‥という、
いわばライブや芝居みたいなことを
ちいさく毎日やってるわけで、
しかも「食べる人がいる」つまりお客さんがいるということ。
達成感とごほうび。
ぼくが「料理って面白いんだよ」と思っていることが
そのまま入ってました。
レストランの漫画じゃなくて、
それを描いた人って、はじめてじゃないの? と思う。
ああ、面白かった。料理をする人はぜひ!