新宿タカシマヤが全館リニューアル。
地下の食料品売り場もファッションフロアも
「打倒・伊勢丹」の意気がはっきりとうかがえる、
「あっちがやらないことをこちらはやるのだ」という、
ものすごい気概を感じてしまいます。
上からぐるっと見て回る。
通路が広くて、ぶらぶら歩くのにちょうどいい。
伊勢丹の狭さは夜店市のような楽しさで
香港の女人街‥‥の、高級版だとするならば、
タカシマヤはのんびりした広い感じ。
もうちょっと昼間の街っぽい。
リゾートにある高級ショッピングモールのよう。
といっても以前のタカシマヤにあった
「おしろいくさすぎる感じ」も上手にぬぐえた感じだ。
伊勢丹は男女が別々の建物だけど
タカシマヤは同じ建物の右と左を分けていて
ゆるやかにつながっている。そんな違いも面白い。
ファッションフロアの途中にカフェがあったりするんだけど
前だったらすみっこにあったのが、
真ん中の意外な位置にあったりしていい。
歩いていてたのしいデパート。
新宿にまたいいデパートができました。
さて4Fにはコム デ ギャルソン・オムのあたらしい店
「2C」ができた。「にしー」と読むそうです。
ドゥ・エとかじゃ、ないんですね。
仏日英がまじったネーミング。
どうやらこれはコードネームのようなもので
「2C」は大人向けの商品を中心にしたショップで、
「3D」はデザイン性の強い商品をそろえたショップ。
ということらしい。
じゃあ従来のショップを「1B」と呼ぶのかというと
そういうわけでもないらしいんだけど。
さてオムは、同じ商品が伊勢丹の「CORNER」にあるわけだし
渋谷西武の「EDITED」にも丸の内の路面店にも、
そして青山のコルソコモにもあるわけです。
それでもつくる意味は、店がかわると、
そこに置かれる商品はまったく別の意味を持ち、
別の気分のお客が買うからだろうなあ。
ちゃんと「ちがう」ものに見えるように、
「ちがう」店をつくっている。
店がかわり、建物がかわり、人がかわり、街がかわり、
あらゆることが、同じ(ような)商品を
別のものに見せる装置として機能しているわけなのだから、
「ちがう」店をつくればいいのだ。
そこに置かれるのは同じ商品だけれど、
もはや同じ商品ではない。
そして買い手にしてみても、
どこで誰からどんなふうに買ったか、は、
忘れてしまうまでは、物語として、
ずっと、刻み込まれているのだと思う。
すくなくともぼくはそうだ。
古着だって「先代の物語」を、
(知る由はないままに)買うこととイコールだ。
だから、あなたの買ったそのTシャツは、
私の買ったこのTシャツとは、ちがうのだ。
‥‥同じだけどね。
ともあれ、コム デ ギャルソンのショップを見て回ることは
洋服ってなんなのだ、ということを考え続けている人の
試行錯誤と答えをダイレクトに生に味わう、
新鮮な快感がある。
さて「2C」は、木製の、2Mはあろうかという高さの
クロゼットのようなタンス状のディスプレイが、
背中合わせに4竿、平行に並んでいるお店。
なにしろ背が高くて見通しが悪いので
店員さんはその外側にいたりする。
そしてお客さんを、クロゼットに案内する、という感じ。
親密な感じが増しました。
前のオムは、白くて低い置き棚に、
極太パイプハンガーだったんだけれど、
もうぜんぜん違う店になっちゃったなあ。面白い。
商品は、たしかに大人向けに見える。
というか遠目にはコンサバの店に見えるくらい。
そして、クロゼットに格納されている商品は、
全貌がちゃんとわからない。
ジャケットやパンツ、コートは真横から見る。
(目線より、やや高い位置にあります。)
シャツやTシャツは畳まれた状態で手前から見る。
自分で表に出してみないと、
それがどういうデザインなのか、にわかにはわからないし、
持って鏡の前まで行ってみないことには、
それがどういうふうに見えるのかもわからない。
(マネキンは、ありません。)
ああ、家にある服を、
外出のために選ぶあの感じにそっくりだ。
面白い。
ブランドのロゴ入りTシャツを買う。
「胸に1つだけロゴ」というものではなくて、
ロゴをデザインとして使っているもの。
この、自社ブランドのロゴがそのまま
解体して再構築することでデザインの部品になるって、
‥‥考えてみたらすごいなあ。
自社ロゴを「解体してもいい」というところからしてすごい。
そういうデザイン性とともに、
好きなバンドのロゴ入りTシャツを着るのと
同じような気分も入り込む。
ファンだという気分を身に付け、
見せることができる、メディアとしてのTシャツ。
ファッションの新作を待つワクワクが
かつて新譜のレコードの発売日を待っていた
あの感じと同じだな、と、あらためて思う。