まえにつとめていた編集の会社の先輩Oさんと
まえもいまも同僚という不思議なご縁のRさんと
久しぶりに会ってごはんを食べましょうということに。
女性二人をお連れする食事‥‥どこにしよう? と考えて、
「霞町すゑとみ」を選びました。大奮発です。
霞町の交差点の、ホブソンズ側の広尾寄り裏手にある
雑居ビルの3階、つまり「分とく山」があった場所。
じつは「霞町すゑとみ」は、「分とく山」で10年修業した
末冨さんがお店をそのまま譲り受けて開いた店なのだそうです。
「分とく山」がそこにあったとき、
取材で2回、会食で1回、うかがったことがあって、
カウンターで野崎さんの、朴訥としているけれど
気配りとタイミングのすばらしいサービス、
そしてなにより、どの料理も「!」とびっくりしちゃう、
「スタンダードなのに、冒険している」というありように、
そして味に、ものすごく驚いたのを覚えています。
さいごに出てくる土鍋の炊き込みごはんのおいしいことといったら。
ぼくは料理のレシピ本ってあまり活用しないんだけど
(読み物として読んじゃうものだから)
野崎さんの『美味しい方程式』シリーズは
3冊とも買って、けっこうマネしてます。
でもあんなふうには、できないんだけど、もちろん。
結局無勝手流でやっちゃうんで‥‥。
で、「霞町すゑとみ」。分とく山がそっくりそのまま、
「野崎さんが末冨さんに変わった」状態で使われてました。
カウンターがいっぱいだったので個室になっちゃったんだけど
(カウンターのほうが人気があるのですね)
もうほんとにマメに若い女将さん(かな?)や
若手男子が気を遣ってくれて
ほったらかし感はゼロ。おせっかい感もゼロ。
ちょっと若くてぎこちない人もいたけど、
そりゃそういう人もいるよね、と、
店ぜんたいを覆う若やいだムードで、オッケー。
で、料理ですが、分とく山が「冒険」に寄っていた印象が
(ぼくには)あったのに比べて、
「スタンダード」寄りかもしれない‥‥と思ったけれど、
‥‥いや、それにしても「ほかにはない」ものだったなー。
冒険を冒険として演出しないことが美意識としてあるのかな。
でね、なんでもないけどうまいもの、ってあるでしょう。
お刺し身とか、焼き魚とか、煮物とか。
そういうものが、ほんとうにすごい。
白子のコノワタあえだとか、
ノドグロの焼き物だとか、
マグロやヒラメの刺身すら、
「ええっ!」と驚いちゃいました。おいしくて。
冒険系ももちろんあります。
よもぎどうふと雲丹に、つくしをのせて、
酢の煮こごり(って、はじめて食べた)かけたのとかも、
ちょっと、「こりゃないわ! ひどい!」です。
もちろん旨いの意味です。天の邪鬼な表現でした。
そして最後に、まさに旬の、さくらえびの炊き込みごはん。
‥‥花山椒を使っているんだけど、そのためなのか、
「食べ物なんだけど、身にまとってもいいくらいいい香り」。
潮の香とかそういうんじゃない、いい香り。ありゃー。
ちなみに、コースは桜で始まり桜で終わるという演出で、
そういう意味でも素敵でした。
(最初が桜の葉の塩漬けを使った、アイナメの炊き上げで、
デザートが、桜餅と蓮根餅)
11品、満腹になって3階からエレベータで降りると
3階のドアが閉まるときに挨拶してくれてた末冨さんが
1階のオモテで待っている、という
「階段ダッシュのお見送り」も、野崎さんの遺伝子。
おいしかったです、ごちそうさまでした。
おなか満腹、財布からっぽ!