立ち上がり!
COMME des GARCONS HOMMEと
JUNYA WATANABE COMME des GARCONS MANの
2007SS(春夏)、つまりシーズン初日、
いわゆる「立ち上がり」。
もう、お店は春です。
じっさい、青山の
10 CORSO COMO COMME des GARCONSの店内は
レイアウトもかわって、ぱあっと花が咲いたような
明るい気分に満ちてました。
HOMMEの今期のテーマは「フォーマル」
というか、フォーマルのドレスダウン。
クラシックな男の背広を研究し解体し、
独自の解釈でよみがえらせるという、
技術と素材とアイデアのがっぷりよつ! なシリーズ。
(だと思う。)
立ち上がりは、とくにそのテーマ性が強い、
シーズンを引っ張っていく商品がならぶので、
見ているだけでもとっても楽しいです。
ウイングカラーのシャツ、
それをくしゃくしゃに加工したシャツ、
黒地に白の水玉で、前身ごろのプリーツが黒の
レーヨンのてろてろのシャツ、
チェッカーフラッグ模様の目がちかちかするシャツ、
ショールカラー(へちま襟)ながら縮絨加工のジャケット、
サテンのピークラベルのばしっとしたジャケット、
後染・斑(むら)染のコットンジャケット、
側章のついた、いろんな形のパンツ‥‥
見ているだけでとても楽しい。
見ているだけ‥‥ああ楽しいねえ‥‥
見ているだけ‥‥ああ楽しいよねえ‥‥
見て‥‥いるだけ? や、ちょっとだけ‥‥
袖、通すだけ……ダメ、ダメダメ、
だって旅行に行ったじゃないかオレ!
カードの兵士のマークが「NO!」って言うかもしれないぞ、
と、わかっちゃいるが、
「やっぱりちょっと着てみようかな」
とうっかり言ったのが運の尽き。
だってここの洋服は、着てみないと、わかりませんもの。
おなじサイズでも素材によって着心地はちがうし、
サイズ感もちがう。
中に肉が入ると、眠っていた布のかたまりが、
みるみるうちに生き返って、薫りだす。
その瞬間を感じるのが、大好きだし。
さて、黒い2つ釦の別珍のジャケット。
呼ぶな、私を呼ぶな。なぜ呼ぶのだ。
最初、「こういうのもありますよ」
という程度のものだったんだけど、
着てみたら、すごく、すごく、かわいい‥‥
ほかのどのジャケットよりも、肌に吸い付く。
あ、別珍というのは、木綿のビロードです。
ベルベットですね。
ああ、きれいだなあ、
しかも、この「くたり感」がいいなあ。
(たぶん、洗いをかけてある)
いいなあいいなあいいなあいいなあと
脱いだり着たりを繰り返しているうちに、
いつの間にか肉に張り付いて
脱ぐことができなくなってしまいました!
ちなみに、試着時、下は白のTシャツ。
ほんとうのフォーマルではないけど、
(そもそもフォーマル着て出るようなところには行かないし
パーティは嫌いです。できるかぎり出たくない)
カジュアルに着るわけなので、
下はTシャツでもいいわけです。
……Tシャツに別珍のジャケットなんて、オトナ!
しかも「カーディガンみたいに着ればいいよね」などと
まったくもって感じの悪い一言を吐いたりしつつ購入。
きっと、もっと、うんとお洒落に着る着方もあるんだろうな。
ちなみに、もっといかにもフォーマルなジャケットもあって、
それはそれでそれはそれは素敵だったんですけど、
試着したら、鏡の中には御坊茶魔(おぼっちゃまくん)が。
いや、貧保耐三(びんぼっちゃま)か?!
あるいは、どさ回りの司会者か?!
と、いうようなことになったので、やめました。
笑いはとれると思うんだけどね〜。
そこまでのフォーマルを、ドレスダウンして着る力は、
ぼくにはまだ、ないみたいだ。
なお、あわせて白のくしゃくしゃのドレスシャツ。
最初っからくしゃくしゃにしておいてくれれば、
こんなぼくでも着られます。
さてそれだけで、終るわけがなく、
JUNYA WATANABE COMME des GARCONS MAN(JWM)を
まだ見ておりません。
こちらはHOMMEと同じく、
渡辺淳弥さんのデザインなんだけれど、
パリ・コレクションで発表されるバリバリなライン。
今期のテーマはスポーツウエアの再構築。
ラコステや、チャンピオンといった、
スポーツウエアのメーカーと組んでの作品。といっても、
「そのメーカーにこのデザインをつくらせる」のではなく、
「スポーツウエアのメーカーを、素材卸として使う」という、
つまり、メーカーがつくった完成した商品を買ってきて、
糸をほどき、あるいはハサミで断って、
布として使っちゃう、という、おそろしいことをしている、らしい。
手間を考えただけで気が遠くなる‥‥。
(それだけでなく、リーバイスの工場で、
コム デ ギャルソンの布とデザインの
ブルゾンやパンツをつくってもらう、
というようなのもやってます。)
さてパリ・コレクションの画像を見るに、
今回、どうも細身な気がしてならなかったので、
きっと、ぼくには無理だろう。
これこそ、見るだけね‥‥と、
コルソコモの、地下から2階に移って明るくなった
JWMのフロアへすすむ。すると、
あらららら‥‥実物は、すごくかわいいじゃないですか!
画像からは、もっとシャープで、
ぴりっとした印象があったんだけれど、
実物は、明るくてたのしい。そして「カワイイ」。
とっても元気なのに、ちょっとシャイな男の子の印象。
そして、テーラードの技術がすごいのかな、
これだけ大胆なことをしているのに、クラシックな印象もある。
とてもしっかりつくってある、のが、わかる。
たいへんいい感じ。
帽子なんかの小物もけっこうあるし!
ということで、別珍のジャケット(さっそく着た)の上に
ハンチングをかぶってみました。
すると、怪訝な雰囲気が。
「あれ‥‥? ん? なんか変?」
鏡の中にいたのは「昭和の人さらい」でした。
しかも、ちょっとエロおやじのムードまで!
がびーん。やめます‥‥!
しかしよく考えてみると、
渡辺さんの男服のデザインには、ぼくはつねづね、
クラシックの匂い、それも、
昭和の色気のようなものを感じているわけなので、
大きくまちがってるわけではない、
むしろ、ぼくに、ぴったり? と思いたいところなんだが、
‥‥今回はやめときます。
(いや、パリコレのモデルが、このブランドの、
ファッション・イコンそのものではない、
とは知ってるけど。)
気を取り直してフロアをうろうろ。
チャンピオンのスエットパーカを解体して
仕立てなおしたという、
eYeレーベルから出ていた、
カーキのへちま襟のブルゾン(というかジャケットというか)
が、ものすごくかわいくて、目が合う。
フードを切っちゃって、それを襟にしたんだって。
試着したら、これまたやられちゃいました。
だって、ちょっといつの間に採寸したんだ!
っていうくらいのジャストサイズ!
ぼくの肉、あってこそ! のサイズ!
「ぼくの着れるサイズをつくってください! 細すぎ!」
と、懇願しつづけた甲斐があったよ‥‥
ありがとうありがとう。
え? そういうわけじゃない? 偶然?
ま、いいじゃないか。
脱いだり着たり、「もいちど着ていい?」とためつすがめつ、
だんだん肉と一体化してしまいました。
えーい、新作初日おめでとう!
ふう。お買い上げありがとうございました。
ってオレが言ってどうするのだ。
なのに、ありがとうございますと言いたい。言わせて。
ありがとう渡辺さん。