アートフェスティバルをやっているシンガポールに、
木金土日月‥‥滞在は実質2日半の強行軍。
一泊目。
バリやジャカルタが案外遠いのと同じくらい
シンガポールって遠いんですね。
成田を夕方出て、夜中の3時くらいに着。
シャングリラ系の「トレーダーズ」というホテル、
なかなか快適。
しかしブロードバンド1日27シンガポールドル。うーむ。
二泊目、ホテルでたらふく朝飯をたべて、
まずは菅原さんの個展へ。
湿板写真で撮影した花、奄美の木漏れ日、
イタリアの古い柱、レイヨグラムのヌードなどが
インクジェットプリンタで巨大に印刷されて並んでいる。
作品そのものは、これまでもけっこう見ているんだけど、
今回は菅原さんのお母さん(画家を志したそうです)が
ご一緒、ということもあって、お母さんから
「就職したと思ったら辞めてパリに行っちゃって!」
なんていう話を明るくききながら、つまり、
「親子の歴史」の文脈で、この写真を見る。
お母さんは息子の作品への感想は言わない。
「食べられるようになったからいいけど」とぽつり。
親子の旅はまだ途中のよう。
午後、文明博物館へ。
併設のカフェで軽く麺類。
みなさんはフォー、ぼくはトムヤムヌードル。
フランス人の観光客がそばにいて
たいへん楽しそうにしている。
フランス人っていつもほんとに楽しそうなんだよなあ。
旅好きの老夫婦のすがたがとてもよかった。
文明博物館は、中継貿易港ならではの、
「自国の歴史」ではない、周辺の東南アジア諸国を
包括的に眺めるという展示。おもしろい。
企画展で「遊牧民展」をやっていたんだけど
謎のパネル(キャプションがないので、
どこのどなたかわかりかねますが)のじいさんが、
ものすごくかっこいい!
とくに、スニーカーをパッチワークで
ブーツにしているあたり、
この人遊牧民じゃなくて日本に生まれてたら
コム デ ギャルソンに入社したほうがいいくらい!
とか興奮。
全体的に、衣裳の展示に興奮する俺がいました。
やっぱ好きみたいです。
いったんホテルに戻り、ジャケットをはおって、
ロベール・ドワノー展のレセプションへ。
ブレッソンとは違う、
ジャーナリスティックな切り取りかたではない、
器用なパリっ子のスナップショット。
この明るさ、冗談好きな感じ、
まさしくぼくの思い描くパリジャンがそこに。
オリジナルプリントってやっぱいいねえ。
一枚ほしい。
夜、写真はありませんが、
というのは「アメリカンクラブ」という
米軍系?施設内の中華料理店に招いていただいたから
(撮影不可だそうです)。
たいへんおいしい中華料理でした。
三泊目、朝、植物園の「オーキッド・ガーデン」へ。
正直なところ、植物園というものの面白さが
やっぱりいまひとつわかっていないぼくでした。
それは、知性では理解できるけど、
肉体として「ううむ」という感じで。
いるだけできもちいい、という感じではない‥‥んだなあ。
野性に近い状態で蘭がいっぱい見れます、
というのより、ほんとうの野性でないならば、
造園とか、切り花の生け花とか、
そっちのほうが見ててすごいと思っちゃう。
あるいは荒俣宏さんの博物誌系の絵とか。
あ、園内ににょきにょき生えている巨木とかはよかった。
ともあれ、一生分の蘭を見ました。
あ、そうか、そもそも、蘭ってそんなに好きじゃなかったんだった!
これから好きになる機会がきたら面白いなあ。
午後はジムに行き、夕方からアンリ・カルティエ=ブレッソン展へ。
‥‥と、待合わせのカフェに行ったら、
スマトラ島ぽい民族衣裳をつけた女性たちが
ぞろぞろと歩いて行くのを見る。
「結婚式だそうよ」
と、『家庭画報インターナショナル』の特派員のタカコさんが言う。
「ついていってみましょう」とうことになり
謎に、結婚式の行列についていく。
昨日の文明博物館の地下ホールで、
結婚式をするのだそうだ。
なんでも「ババ・ニョニャン式」といい、
中華系とマレー系のミックスの文化らしく、
衣裳が、だから、中国のようなスマトラ島のような、
そんな感じだったんですね。
結婚式っていうのは、あれですかい、
派手にやらにゃあかんというのは、
「こんだけやっちゃったんだから、あんたたち、
別れんなよ」というようなことのための、
発明なんでしょうか。
で、ブレッソン展。
アートハウスという歴史的建造物の2F、
とても雰囲気のあるギャラリー。
残念なことに、ブレッソンの作品は、
まったくオリジナルプリントではなく、
インクジェットプリンタ(‥‥よく表現されたけど)。
前に、大阪でオリジナルを見ちゃっていたし、
前日のドワノーのプリントはすばらしかったので、
比べたら、ああ残念、という感じだったけど、
でも、さすがにブレッソンはブレッソンでした。
やっぱこの人の写真は好きです。
写真の教科書だと思います。
そのあと、ラッフルズホテルのティフィンルームへ。
カレーを食べるのです。
噂には聞いていたけど、さすがにおいしいカレーのバフェ。
つけあわせの「ガーリック・ピックル」にはまる。
ニンニクと唐辛子のみそ漬け、みたいなもの。
カレーとごはんとナンがすすむすすむすすむ‥‥と、
食べ続けて、気づいたら動けなくなっておりました。
脳みそもカレーになった気がする。
タクシーでシンガポール動物園附属のナイトサファリへ。
えっ! というくらい混んでいる。
でも日本語トラムツアーはちょっとすいてたので、
30分くらい待って乗り込む。
「よくできている。」
というのが感想。ほんとうによくできてる。
ディズニーランドに似た感激。
ここまでやってくれれば、文句ありません。
でもやっぱり、ジャングルに分け入って夜の動物を見る、
という真実の体験ではないんだよなあと、
複雑な気持ちになる。
疑似体験‥‥というのともちがうな。
動物園としては、これは真実の体験なので、
それを「野性の動物みたい」と思ってはいけない、
ということなんだろうなあ。
と、いまいち乗りきれないのは
カレーを食い過ぎていたからか?!
アフリカのサファリに行ったら、どう思うんだろうか。
というのが自分への目下の興味です。
シンガポール最終日は、たいしてすることもないので、
ジムで汗をながしてからチェックアウト、
荷物を預けてタクシーで
マンダリンホテルのチャターハウスというところで
シンガポール名物のチキンライスを食べました。
ありゃ、こりゃうまい!
蒸し鶏と、鶏ガラスープ、そしてそのスープで炊いたごはん。
すっぱ辛いチリソース、あまじょっぱいダークソース、
さわやかに辛い生姜ソースで食べます。
鶏はぷりぷりのしっとりだし、ごはんはさらさらだし、
けっこう高いんだけど、こりゃ満足ですわ。
これ日本にないのかなあ。受けると思うんだけど。
そしてナイトフライト。20時半に搭乗して、成田着が7時。
途中バンコクで降りるんだからそりゃ疲れます。
ナイトフライトは辛い。
翌日一日あったまが痺れたようになりました。