ムーンライダーズというバンドは
たぶんずっとメディアでありつづけてきたので
ぼくはそこからいろんな情報を受け取れてきたんだと思う。
たとえば極端な例で言うとビートルズだって、
高校生になってから、
ムーンライダーズの特集がされていた音楽雑誌を読んで
ベストアルバム10みたいなのを
メンバーそれぞれが選んでいたなかに、
ビートルズのアルバムがけっこうはいっていたんで
聞きはじめてみたりしたんだった。
そりゃそうですよね、66年生まれの一人っ子には
ビートルズは自然に耳にははいらない。
ほかにも、フランク・ザッパもそうだし、
プログレ全般そうじゃないかな、
10ccもゴドレー&クレームも、
もちろんXTCだってそうだし。
映画音楽をそれ単体で音楽として聴くということだってそうだし、
ムーンライダーズの音楽の「インプット」がなんなのかに
とても興味があったので、
ムーンライダーズの音楽と、インタビュー記事は、
それだけで膨大な情報のつまった宝の地図だったんです。
海と船と地図がセットになってる素敵なパッケージ。
で、音楽だけじゃなくて、オシャレもそう。
「マニア・マニエラ」というCDの、初版のとき、
CDプレーヤーを誰も持っていないような時代、
CDだけ買って眺めていたんだけれど、
そのライナーに、ロングコートを着ている
メンバーのモノクロの集合写真があって。
その後、ロングコートというのは
ものすごくあたりまえのようにブームになったんだけど
その写真が撮られた当時や、発表された当時
(これらはちょっとラグがあるのです)ですら
街でふつうにロングコートなんて見なかった。
けど、その写真はほんとうにかっこよくて、
もう震えちゃうくらいかっこよくて、
ぼくは「ロングコートが似合うってことは、
なんてかっこいいんだろう!」と思った。
でも十代でロングコート着てもさまにならないんですよね。
マネしようと思ってもできないくやしさがありました。
それが大人ってもんだった。
そのCDの裏面は、ワークウエア‥‥ではないんだろうけど、
モップを持ってたたずむメンバーの写真で、
これまたものすごくかっこよかった。
今思うに、ぼくのオシャレのテイストも、
このあたりにものすごく強く影響されているんだよなあ。
それから、遊びかただったり、
極端ないいかたをすれば人生に対する姿勢のようなものも
たぶん、ぼくは、ずいぶん、吸い込んできたんだなあと思う。
ムーンライダーズはたくさん「部外活動」や
「仕事」をする音楽家の集団でもあるので、
そういう個々の活動を見ていくなかで、
大事なことをはっきりさせさえすれば、
個人として生きていくことと
チームとして生きていくことに
明確に境界線を引かないやりかたってできるんだ、
ということも、教えてもらったんだなあ。
今日ムーンライダーズのメンバーそれぞれが
別々にユニットで出演するライブがあって
それに行ってきたんだけど、
いやあ、あいかわらずかっこよかった。
ぼくが40歳なんだからあたりまえだけど、
もうみんな50代で、それがまたさらに先を行くかっこよさ。
そして、彼らがずいぶん前からやってきたことは
まったく古くなっていない。すごい。
ああ、ファンでよかったなあ。つくづく思いました。
来週はムーンライダーズのバンドとしてのライブもあるし
月末には日比谷野音で30周年記念コンサート。
いまからとてもたのしみです。
そもそもなんでムーンライダーズが好きになったんだっけ?
と思い返すと、高校生のとき、
あっこちゃんと教授とキヨシローとチャボが
一夜限りのバンドを結成! というイベントを見に行ったら
そこにムーンライダーズも出ていたんでした。
ほかにもいっぱい(井上陽水さんとかも)出てたんですけど、
目的のバンドよりもなによりも
ムーンライダーズにがこーんとやられてしまったんだった。
そういうふうに人生には
いくつかの抜け道(横道?)が用意されている。
大通りと、抜け道や横道、どっちも楽しく歩けるんだな。