さてまた日曜日。
このところ「ミクシイ」にちょこちょこ書いたものを
日曜にまとめてアップ、ってかんじになってるなー。
おかげで、長いんだな。
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月曜、朝から水炊きを食べて恵比寿へ直行。
ガーデンプレイス内の某E社に
角川のツツジュンさん、サカキさんと
本のプロモーションなのです。
女性向けの媒体ということで、
担当者の女性ふたりが対応してくださる。
彼女たち、よく雰囲気が似ている。
首筋をきちんと伸ばして
けしてこびることなく冷静に話すタイプ。
ちょい魚顔。 清潔な水に棲んでいる魚のよう。
E社の社風かな?
冷静に進む打合せ。
しばらく黙っていたサカキ氏が、
撒き餌をまくように、
「いい女とダメな男とレストラン」について
さらりと語ると、E社女性ふたりが
USJのジョーズのようにガブリッ!
と食いつく瞬間を見ました。すごい!
いきなりメモるメモる語る語る、
(たぶん)ボーイフレンドの教育に
思いを駆せる馳せる馳せる。
ああ、この本(&コンテンツ)の需要は、
強烈に、ある! と確信、うれしかった。
ビビッドな反応を見るのは、
やっぱり励みになります。
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火曜、大木戸矢部、うちのすぐ近所、徒歩圏内。
角川さんの、前任者から後任者へ、
「うまくひきつぐことができた、
いいものができましたね、ありがとう」
の会でご相伴に与りました。
私はあいかわらず得な立場かもしれない。
目玉じゃんけん、勝利。うまかった。
このところすばらしい同業者に
(そこのきみ、きみのことだよ!)
ありえない確率で立て続けに出会っている。
そうでないひとも、いるけど、
(きみのことじゃないよ!)
同業者の何気ないひとことで、
自分のやったことに誇りを持てる瞬間が
何度もあって、
そのたびに、じつは、泣きそうになっているのだった。
ありがとう。
そんな話をしたら、そのなかの一人に
(彼女もすばらしいひとりです)
「それは、年をとったってことですよ。
年をとるのは素敵なことですよ。
年をとれてよかったですよ。ね?」
と言ってもらった。
また泣きそうになった。
なんだか、よくわからないことを書いておりますが、
そんな夜もあるってことで。
サンキュー。
それにしても焼酎の「農家のガソリン」という
キャッチコピーはどうかと思う。
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水曜。
「米のめしがいちばん好きだ!」
というボス式のダイエットは
「米のめしを、ごちそう、と位置づける」
というもので。
ぼくもしょっぱいおかずで
白いぴかぴかのごはん(おひつのごはんも好き)を
わっさわっさとかっこむのがなにより幸せなんだけど
それを「一等賞のごちそう」と
位置づけることにしました。
オーグードジュールに行くよりも
ピアット・スズキに行くよりも
CHEF'Sに行くよりも
ごちそうだ、と。
だからぼくに
「たらこと佃煮とたくあんで、
永田米のごはん食べませんか」
って誘われたら、それは口説き文句と同じです。
覚悟してください。
で、じっさいはスズキに行きましょう。
まあともかく、そんな方式にしているので
朝からごちそうは食べないぞ、と。
でもちゃんとつくるぞ、と。
けさは、あぶらの少ない豚ヒレを酒蒸しして
同じく蒸した永田のなすとにんじんにのせ、
ちょっとだけ甘みをつけた味噌だれで。
あと、水炊きの残りのスープで
にんじんをごろごろ炊いたのを具だけ。
「足りなかったらごはん半膳食べてよし」
という気持ちで、結局おかずで満足できた。
成功。
デザートにいちごをつまんだけどねー。
さ、きょうも働きましょう。
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水曜、夜9時過ぎ、
ワークアウトをしたら重いものがすいすい上がる。
汗が、「だらだら」ではなく、
ぷつぷつと玉のようにはじけて出る。
あれれ、しかも、疲れてない?!?!
次行こう次。
なーんだ、この体調のよさは!!!
終わってトリートメントを受けに行ったら、
担当の黒岩さんという、
ええと、ライオンズだったかな、
どっかの球団のトリートメントをやってた
凄腕の人がいるんだけど、
「武井さん、きょうは、すごいですね!
筋肉を、ものすごくよく使えています。
こんなに体調のよい日は
年に一回あるかないかですよ」
ひゃー。そんな日があるのか!
「だからプロはたいへんなんですよ。
いつもこんなふうに力が出せるように、
ほんとはそうじゃないときでも出せるように、
一生懸命トレーニングをするんですから」
なるほどねー。じゃ、オリンピックなんて、
4年に1回のチャンスだから、
その日に最高の体調にもっていくなんて
並大抵のことじゃないんだ!
「そうですよ、ほんとうに、すさまじい世界です」
舞台の役者、それもダンス系なんかも、
体調が悪いなんて言ってられないだろうし、
ほんとに体を使う表現というのはたいへんなんだろうな。
‥‥しかしだ。そんなふうに筋肉が最高の状態でも
その最高の器は、このぼくなわけである。
なにかの新記録を出すチャンスもなければ、
舞台でくるくる回る予定もない。
ええと、フィジカルにっていうと‥‥
なにか色っぽいことがあるわけでもなし!!
こうして(もう2時近いよ)会社にいたりするんだから
なにひとついいことなんてないじゃないか。
しかし考えてみたら今日の働きは、
なかなか自分でも気持ちのいいものでした。
よく働きました。
副産物として、メールを、
「かなり調子に乗って」大量に書いた気もします。
仕事のメールなんだか私信なんだか、
だいたいが区別がないような人間なんですが、
「なんで武井からこんなに調子に乗った
長いメールが来るんだ?」
と思ったかたも、おいででしょう。
すんません、そういうふうな日だったのですよ。
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木曜、昨日から予約を開始した
『カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)』が
Amazonで和書の1位をとっていることを知る。
まる一日、Amazonを見続けたけど、かなり長い時間、
ハルキさんに抜かれるまで、ミキティの写真集よりも上で
がんばっていた!!
すごいことだよ。
1位だよ!
山下さん、よかったねー。
本づくりのさいごのほうは
(ぼくは実務には関わってないので、
好きなことを言ってただけなんだけど)
ほんとうに「これが、とうちゃんの仕事だ!」
という迫力で(山下さんは一児の父)、
がんばってらしたのを知っているので、
ほんとうにうれしい。
出勤。
地下鉄だけど空を見上げたかったので
なんだか上を向いていたかったので
溜池山王駅で天井をぼーっと見ていたら
目線の途中にこんな看板。
6号車あたり、ホーム設置のドアの右上。
そうか、ここが区境だったんだね。
だからどうだってこたぁないけど、
ちょっとうれしかった。
そして仕事をしていたら、
とどいたーっ!!
Amazonで予約してあった本。
「カワイイ」を抜いた憎き‥‥でも、
待ってました、の本。
『ふしぎな図書館』。
村上春樹で図書館で佐々木マキですよ。
羊男ですよ。ドーナツですよ。82年初出ですよ。
がーっ!!!(興奮)
ぼくは当時たしか高校2年で
この連載を読むために『トレフル』を買ってました。
どんな雑誌だったのかすっかり忘れちゃったけどね。
高校時代、この人の小説に
どれだけ支えられて、死なずにすんだか。
あ、おおげさか。でも、
僕の視界の8割くらいを村上春樹が占めていて
聴覚の8割くらいをムーンライダーズが占めていた。
あのころ、出会わなかったら、
いまのぼくはちがうぼくのはずなんだもの。
小説というものがあってよかったし
音楽というものがあってよかった。
小説家がいてよかった、音楽家がいてよかった。
ありがとうございます。
そういうふうにして出会ったもので
いまのぼくはできているわけなんだな。
ドーナツ買ってこうかな?
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金曜、青山ブックセンターでよしもとばなな『なんくるない』と
安野モヨコ『監督不行届』購入。
急いでヒルズへ走って初「ハウル」。
観ながらずっとぐずぐず(というよりめそめそ)泣き、
泣きながらジムへ。さんざん重いものを持ち上げて、
そのあと打ち合わせ。人が帰った後、
仕事をしようと思って座ってたけど
なんだかむしょうに書きたいメールがあって
それを書いていたらこんどは
もう一回「ハウル」が観たくなってきて
ネットでチケットを買ってもう一回ヒルズ。
2回目はぐずぐず泣かずに冷静に観ました。
名作か駄作か? どうでもいいね。
ぼくは、好きです。ただそれだけです。
iPodで大貫さん「NOTE」を聞きながら帰宅。
夕飯食べ損ねたので深夜に肉を食う。
『監督不行届』をゲラゲラ笑いながら読む。
自分たち夫婦を主人公にするマンガって、
たっいへん難しいと思うんだけど、
これはおもしろかったーっ!
そのあとよしもとさんを読みはじめる。
こ、これはすごいかもしんない。
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この春、小学校にあがる息子をもつ、
ながくふるいともだちであり
仕事仲間でもある女性から
「今日はランドセルを買いに行きます」
というメール。
ランドセルを買いに行く日!!
なんてすてきなんだろう!
最近ぐんぐん「男の子」になってきた
彼をよく知っているだけに、
親戚のおじさん(訳あって独身)みたいな気分で
たいへん、うれしくなる。
そして夜、再びメール。
今日は忘れられない日になったと。
ヤツが、生まれて初めて自転車に乗れたのだと。
ひとりで漕ぎ出した瞬間のこと、
きっと忘れられないだろう、と。
「自転車の後輪を持つ手がすいーっと離れる瞬間に
子どもが輝きながら羽をつけて遠くに行ったような
そんな気がした」
ということだった。
そして、もうすでに得意気で、
よそ見などして乗っているそうだ。
くーっ、生意気に!!
ぼくも覚えてる、駿府公園(という故郷の公園)で
芝生の広場の、木の根っこがもりあがり、
そのために小さな小さな坂道になっているあたりで
たった2輪の、ぼくを乗せた自転車が、
ふわりと安定しながら走り出したときのことを。
自転車のひと漕ぎぶん、
どんどん遠くに行けるようになる気がして
つまり世界が広がる予感に満ちていた日だったことを。
その日がとてもよく晴れた、ちょっと寒い、
きのうみたいな日だったことを。
ランドセルと自転車おめでとう。
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土曜、例によっての鈴木さん(兄)宅での飲み会、年齢高め、
だってぼくが最年少ですよ!
あ、最高齢の矢吹さん、おひさしぶりです。
武井は3月で39でになります。
チェコからのサラミ、チーズ、ソーセージ、
スロバキアのスモークチーズ、
フランスとスペインのサラミ、
春巻、ハルシュカ(ザワークラウトとニョッキの煮込み)、
野菜オムレツにカジキマグロのソテー、
ペデュキムチにナムル、
チェコ風サワースープ、などなど、
もう、超エスニック。
久しぶりに脂たっぷり!!! そしてワイン!!!
(炭水化物控えめ、ね)
あー、食った飲んだ。酔っぱらいました。
さて鈴木さん(兄)の家は、家捜しすると、衣裳部屋に
もったいないお宝がざっくざく。
強盗団に変身。 お、みっけ。
「これください!!」
‥‥言ってみるものです、
フェルト帽と迷彩ブルゾン、いただき!
大事に着させていただきますとも。
ビデオをみつつだらだら話して、
スタジオでなにやらすばらしい音源を聞かせてもらい、
ちょい早め(といっても1時すぎ)に
失礼させていただいたんだけど、
あのねえ、平均年齢の高いみなさん、
元気ありすぎます。
いまごろはさらに盛り上がっていることでしょう‥‥
(あとで聞いたら、ぼくが帰ったのが開始6時間、
みなさんはぶっつづけ12時間飲んでたということです。
どうなの、中高年)
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そしてきょう。
酒をちょっと呑み過ぎると、
すっこーん、と眠ってしまい、
なぜだか早起きする。
ふだんほとんど呑まないから、
ちょっと量が多いとそうなる。
ゆうべは3時前くらいに寝て、
けさは6時くらいに起きて。
ちょっと二日酔いかなあ、
ちょっと腹がゆるいなあ。
うこん茶を1リットルくらい飲み、
だすものをさっさとだしてから、
さらに2時間寝たら、みごとにすっきりしてました。
さすがに夕べは脂をとったので、
体組成計は冷ややかな数値をつきつけてきたんだけど。
野菜のオムレツと納豆でかんたんに朝食、
すぐ伊勢丹へ。
一週間分の食材をどかどか買う。
いつも買う鳥肉屋さんで
例によって大量に鳥肉を買ったら
「お店をやってらっしゃるの?」
と聞かれる。んなこたない、
週に1度の仕入れじゃお店はできません!
伊勢丹で買ってたら割があいません!
「いえ、家で食べるんですよ‥‥」
「あら、そうなの! きっとなにか
おいしいものをつくる人じゃないかって
噂していたんです」
‥‥噂になってるのか!
うれしいんだかなんだかね。
戻ってきて、冷蔵庫にどかどかつめこみ、
ダウンジャケットを着たまま、
ニット帽をかぶったまま、
よしもとばなな『なんくるない』の続きを読む。
毎回、ばななさんの小説には、
胸をぎゅっとつかまれる思いがするのだけど、
今回のは、とんでもなかった。
ずっと心臓を、やさしく、握られている感じがした。
読み終わるまで身動きがとれなくなる感じ。
でも、そうだった、きょうは事務所に
出ようと思っていたのだった。
最後の一編は地下鉄を乗り継ぎながら
歩きながら読んだ。こんなのは久しぶりです。
そして南北線の車内で読了。
‥‥まいった。
ご本人があとがきで書かれているように
とくに表題作(あ、この本は中・短編集です)は
小説としては失敗作であるということなんだけど、
むしろ、筆のすすむままに、がんがん書いたかんじがして、
ものがたりにものすごくドライブ感がある。
ひとのきもちや、ひとびとのあいだにあるもの、
おこるべくしておこること、それをうけいれること、が、
すきとおった表現で、文字として、
かんぺきに、起こされている。
すごい‥‥。
そして、小説としての完成度は
たぶん表題作よりもずっと高いだろう
「ちんぬくじゅうしい」、家族のものがたり。
これは、つい最近観たばかりの「ハウル」と
ときどき、ぐわっ、と、重なる瞬間があって、
‥‥これってたぶんそうとう
個人的な感想だとは思うけど、
とてもよかったです。
さらに小説とエッセイの中間らしい、
思いをしぼりだすような、苦しみにみちた、
でもとどめておかなくちゃいけないことを
一文字一文字ちゃんと残しておこうという
気迫に満ちた「足てびち」。
短編ならではの面白さに満ちている
(書いてることが面白かったにちがいない!
という作家的興奮に満ちている)「リッスン」。
どれも、ぜんぶ、よかったです。
さて仕事すっかな。