その人のことを知ったとき僕はまだ16歳で
その人はたぶん30歳だったと思う。
世の中にはなんと面白いオトナがいるのだろうと
激しく嬉しくなったものだった。
ファッションのセンスはいいし
こびない、しかし威張らないその雰囲気が最高で
こういうオトナになるんだったら
歳をとるのは悪くないと思えたものだ。
そしてそのオトナはいい年のおじさんになり
少年もいちおうオトナになった。たぶん。
たぶん、16歳と30歳のまま、
38歳と53歳になっているのだと思う。
そのまんまで生きている部分があるように思う。
そして、それはなかなか悪くないんじゃないかと思う。
ぼくはいまだに彼らのことをかっこいいと思う。
そんな人たちと過ごせることをたいへん光栄に思う。
そんな人たちが主宰する恒例の伊豆の旅行も、
誘ってもらって3度目の夏。
彼らはこれを18年続けている。
つまり平均年齢は40代後半のはずなのである。
僕がいちばん若手ということになるくらいに
年齢層の高い集まりなんだけど、
なんだけど、
なんだけど、
‥‥、
なんでこんなにタフで間抜けで酔っ払いなのに
みなさんそこまで元気なんですか!!
別荘のベランダに蜂が巣をつくったから退治すると
掃除機のノズルを振り回してぶんぶん吸い込んでいたら
逆襲してきた蜂に頭刺されて病院とか。
颱風でごうごう荒れてる磯で膝まで浸かってフグ釣りとか。
サーフボードに乗ってみたのが(立ってはいない)嬉しくて
ブライアン・ウイルソンのマネして写真撮るとか。
ビンゴ、デモクラシー(という大人数でやるゲーム)、
ジェスチャー、それは私です(本物は誰だ)、
エロしりとりで、いつのまにか朝になっちゃうとか。
ワインとビールが半端じゃない本数、あくとか。
ジェスチャーの司会は
「土曜日の午後7時、毎度おなじみ
司会は高橋圭三でございます」から始まるとか。
空が白むまで飲んでたはずなのに
朝起きると「サーフィンしてきたよ」というのがいて
しかも、朝飯の前にラム酒飲んでるとか。
豪雨の中、山道を車で帰り恐怖で「おかーさーん」と叫んでしまうとか。
グレートザブーンのようになっているその豪雨のドライブで
不思議と安心し切って助手席で眠りこけてしまうとか。
年長の友人に対して言いにくいけど
愛すべき馬鹿どもであると、思っております。
この人たちのいいところのひとつに、
人に強制しない、というところがある。
愛すべき人なら、多少のことは許す、というところがある。
ちょっとくらい、困ったところがあっても、
いいじゃないか、お互いさまなんだから、
という寛容さがある。
帰りの車で「世間様、の世間には、なれないよねえ」
と誰かがつぶやいた。
「甘い生活の『甘』って、甘美って意味じゃなくて、
ダメ人間の意味だよねえ」
と誰かがつぶやいた。
「だいたい、この歳で、メンバーがほとんど独身って、
ほんと、もう、世の中的にはダメってことよね」
と、同行の女性がつぶやいた。
「だいたい、僕を除くほぼ全員が喫煙者って、
いまどきの世間では考えられない確率です」
と、ぼくもつぶやいた。
また来年もぜひ誘ってください。