パリマラソンの日。
応援は30キロ過ぎのセーヌ川沿い、
Bir-Hakeim駅(エッフェル塔の最寄り駅)で待ち合わせなので
まずは方向音痴だという(ぼくもですが)野宮さんをピックアップすべく
うちのアパートから徒歩圏内の滞在先に。
通りのむこうにリヴォリ通りが見え、
スタート直後で疾走する先頭集団が見えた。
ぼくらは地下鉄で待ち合わせ場所に向かおう。
目的地到着。
駅を出てすぐのカフェで待ち合わせる。
先日お世話になったコーディネーターの田村さん
(とても明るくて楽しいマダム)も
西本さんを応援したいわ、と来てくださる。
野宮さんのお友達2名(日仏の夫婦)も合流。
6人で橋を渡ってセーヌを越える。
このあたりは「ラストタンゴ・イン・パリ」、
「地下鉄のザジ」なんかでロケ地に‥‥って古い?
最近では「インセプション」だと、ウィキペディアを見て知る。
えっ、見たよ。そうだっけ?
とまあ、つまりはひじょうに美しいその橋を渡って対岸へ。
もしかしたらここはいちばん苦しい区間の入り口なのか。
希望とともにちいさな絶望と
だんだん動かなくなってくる脚をかかえ、
もしかしたら愛する人のすがたを思い浮かべながら
ランナーたちは必死でやってくるのだろうか。
と、ちょっと文学的な光景を想像していたら、
ぜんぜんちがいました。
まあ、そういう(苦悩そのものの走り方をする)人もいるけど
なんか、みんなわりと楽しそうに走っている。
「ぴょんぴょん」という感じ。
それから、走法がばらばら。
体形も年齢も国籍もばらばら(白人が多いですが)。
それぞれにそれぞれのやり方があり
それはおそらく毎日の練習で編み出した
「おれはこの走り方がいいのだ」と決めたことなんだろう。
日本だとわりと(同じくらいのスピードの人は)
体系も走法も近い感じがするんだけど、どうも違うみたい。
うまく言えないんだけど「かろみ」があるのだ、
ランナーたちに。
さて、応援だ。
パリマラソン2015のiPhoneアプリはDL済み。
これでいまどこを走っているか一目瞭然‥‥ではなかった。
いっしょけんめい作られているのはわかるんだけど
肝心なことが抜けまくりのポンコツアプリであった。
いまどこにいるかがわからないし、
1時間前に通ったはずの地点のデータが
ぜんぜんアップデートされない。
もう30キロ地点なのだが、わかるのはスタート時間と
5キロ地点と10キロ地点の記録。
それをもとに30キロは何時間何分かをこちらで計算して
来るべき人を待ちました。
‥‥が、来ない。ぜんぜん来ない。
こちらはでっかい日本の旗を振り、カメラを構え、
ランナーふたりからのリクエストである
「気の抜けた常温のコーラ」(これが当分補給にいいらしい)を
なんと野宮真貴さんが手に持って待っているのだが、
ぜんぜん来ない。
ろくに瞬きをせず(そういう中島みゆきの歌があったな)、
来るランナーたちのなかから「応援すべき人」を探すが、
いっこうにみつからない。
予想時刻を過ぎても来ない。
もしやなにかあったのか?! ケガとか事故とか、
あるいは昨晩のぼくの飯がお腹に来てトイレに閉じこもってるとか?
けっきょく、その時刻に来るべき同僚
西本くんの姿は見つけられなかった。
だが予想より早い時刻に
野宮真貴さんのだんなさんの姿をキャッチ!
本人、とても元気で、バンザイしながら通過。
無事コーラも渡すことが出来ました。
その後、地下鉄でゴールに行ってみた。
アプリはあいかわらずポンコツでなにがなんだか、ではあるものの
西本くんは40キロ地点をいつものタイムで
通過していることがわかった。
そしてぼくらがいた30キロすぎの地点、
ちゃんとぼくらが応援をしていた横を
通り過ぎていたことがわかる。
‥‥見逃した?
こちらは総勢6人12コの瞳で探したのに。
一瞬だけランナーを見なかったのは
すぐ後ろを、コドモの「ガラガラ」みたいなおもちゃを
大量に引きずって散歩している奇妙なじいさんが通り、
そのあまりの巨大な音にふりかえった瞬間だけだ。
まさか、その瞬間に‥‥?
ゴールでへばって動けないという
西本くんを置き去りに(ひどい)解散、
ぼくは友人と凱旋門をあとに、
シャンゼリゼからコンコルド広場を抜けリヴォリ通りへ歩く。
途中、遅いお昼にカイザーでサンドイッチを食べて、
さらに歩いて歩いて歩いて帰宅。
時すでに3時。
4時にはみんなを早めの夕飯にしようというのだけれど
こちらも歩きすぎで疲れて脚が痛い。
脚というより足の裏。石畳って慣れないなあ。
シャワーをあびて自分で足をもんでなんとか復活。
サラダをどうしようかと思ったんだけれど
ゆで野菜をつくって冷やし、生でたべられるものはそのまま、
でも蕪だけは「実はゆでて葉は生」というちょっと工夫をしたりして
(誰も気付かなかったかも?)
きれいに8人分の皿にならべる。
ふだんは油で和えちゃうんだけど、
きれいなのでドレッシングをつくることに。
レモンを搾り、バルサミコ、オリーブオイル、塩、
そしてピモンデスペレット(バスクのトウガラシ)。
ピリ辛でなかなかいけました。
野宮さんたちがロゼのシャンパーニュ(!)と
イタリア総菜を差し入れしてくださったのが、
とてもよく合いました。
足が動かないという西本くんも、
ワインを持ってよちよち現れる。
聞くと、今回は気温が高く石畳だったこともあって
つらいレースだったそう。
むこうもこちらを見逃し(というかレースに集中)、
ぼくらも気配を消して走る西本くんを
発見できなかったらしい。
そういうものかあ。おもしろいなあ。
それでも記録は「いつものペース」だったようです。
完走おめでとう!
総勢8人で夕食、お疲れさまの会。
その様子はこんなでした。
つくったのは、前述のサラダに、
牛のハラミのステーキ、
フレンチフライ、わるいカルボナーラスパゲッティ。
途中でワインが足りないぞと、
日曜の夜だけど友人に買い出しにいってもらう。
前々から気になっていた、
妙に広くて、ちょっと博物館の展示室みたいなワイン屋さんが
エチエンヌマルセル通りにあるんだけれど、
そこがやっていたので買ってきたよ、と。
そこは、僕の観察によれば、白髪を長いソバージュにしたような
老婆がカウンターに座っていて
「いひひひひ」と接客しているようなムードなんだけど、
その老婆と思っていた人物は、
「あれは、おじいさんだったよ」と。驚愕!
バック・トゥ・ザ・フューチャーの
「ドク」みたいな感じだったそうです。
「重い赤をください、予算はやすめで」と言うと、
「これ、これか、これじゃな! いっひっひ」
と、あっという間にセレクトをしてくれたらしい。
まあ、あながち印象は間違ってなかった。
「じゃあこれをください」
「それはいいチョイスじゃよ!
でもこれはすぐに飲み終わるじゃろうな。
10時まで開けておるから、またおいでなさい‥‥。
いっひっひっひ‥‥」
はたしてその赤ワインは、ものすごくおいしかった。
なんと12ユーロだったというから、
値段のわりにものすごくおいしい。
40ユーロとか、へたすりゃ60ユーロとかしそうな味でした。
ああ、銘柄、メモをせずに瓶も捨てちゃったんだよなあ。
デザートは野宮さんがくださった、もなか、
そしてエスプレッソを淹れておひらきにしました。
たくさんしゃべって飲んで食べて楽しい夜だったな。