調理する心。

人生初の火吹き竹。
あんがい肺活量が要るんですね。


 
イタリアから来たばかりの人たちから聞いたんだけれど、
イタリアの若者はほんとうに料理をしなくなったそうだ。
パスタも茹でない、と。
でも自宅で食べないわけじゃなくて
スーパーマーケットの冷凍食品売り場は
たいへんなにぎわいだそうだ。

ぼくは料理をするほうだが、
その「しない」ほうに向かう気持ちや生活も
自分のなかにあることなので、とてもよくわかる。
ちょっといろいろあったとき、
食欲というか調理する意欲が失せ、
かの伊勢丹の地下に行ってみたのに、
まるで白黒みたいにフロアが見えた。
それでも生活はしないとならないので
食材は買ってきたけど、
家に戻ってもつくる気力もなく、
ほんとうにつらかった。
もうビタミン剤と水とプロテインでいいよ、
とすら思ったけど、
そっちに行っちゃいかんという
内なる声でなんとか乗り切りましたが。

夫や子供に食事をつくりつづけるのが
ほんとうにつらいという主婦の声があるのを、
それまで何言ってるんだろうと
意に介さなかった自分がいたんだけれど、
そうだよな、そういうことだってあるよな、
とすこしは理解できるようになった気がする。

●

伊賀から戻ると、だいたい頭痛がする。
パワースポットなのかなと聞いたら
「信長の大虐殺があった土地ですからね」と。
「おんなこどももすべて殺されました。
　わたしは、生き延びた忍者の末裔ですわ」
なんて笑う福森さん。
ひゃあ、と一瞬思ったけど、
でもまあそれ言ったらさ、
いまぼくらが暮らしている土地はどこもかしこも
不幸と幸福の記憶が層になってるわけだ。
今回の頭痛は、ワインの飲みすぎ、
疲労、新幹線の空調が体に合わなかっただけ。
さーてまた週末は松本へ一泊二日。